表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『スキル【空間魔法】で転移ライフを謳歌する』  作者: 愛月量


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/59

第48話 俺たちは動き始める

──孤影の騎士団。


この名を口にするのは、今この場にいる者たちだけだ。

表の世界には存在せず、裏の裏に潜む影の集団。

そして、俺が団長を務める組織。


だが皮肉な話だ。

俺が王立魔法学園への入学資格を得たということは、この組織を直接動かす時間が失われるということでもある。


学園。

それは表舞台だ。

裏を支配するには、目立ちすぎる。


だからこそ ──今だ。


「......始動は、現段階でこれが最初で最後になるかもしれない」


薄暗い空間。

影世界の中で、俺は団員たちを前に立っていた。


「だが、心配はいらない。俺がいなくても、後続は育っている」


視線を向ける先には、カムイがいる。

もう、最初に出会った頃の彼ではない。


俺は静かに告げる。


「孤影の騎士団。団長は俺、水谷悠真。副団長にカムイを任命する」


ざわり、と空気が揺れた。


「諜報、育成、潜入──元奴隷たちの管理と教育はアリスに一任する」


アリスは一瞬だけ目を伏せ、すぐに口角を上げた。


「その他、諜報及び暗殺任務はカムイを中心に、お前たちで執行しろ」


一拍置いて、俺はカムイを見る。


「カムイ。俺の代わりに、孤影の騎士団を動かし、発展させろ」


迷いはなかった。


「はい、師匠(マスター)


その声には、覚悟が宿っていた。

この瞬間、カムイは確かに“副団長”として一段階上へと進んだ。


──孤影の騎士団は、動き始めた。




通達とやらは、思いのほか早く届いた。


王城からの一斉通達。


『改めて祝おう!諸君の入学を歓迎する!』


『通達と言ったが、特に伝えるべきことは無い。だが、君たちだけでなく既存の者にも通じることとして、学園入学に際しクラス分けを行う』


......嫌な予感しかしない。


『才能を分別するという訳ではないが、軽い実力を知るには良い機会だろう』


軽い、ね。


『──おっと、大事なことを忘れていた。学園への入学は1週間後。場所は王城前の門だ。君たちを楽しみに待っている』


......楽しみとか言うな。


「クラス分けで実力確認?」


俺は頭を抱えた。


(絶対、皆の前でやるやつだろ......)


嫌な奴と同じクラスになったらどうする?

注目されたらどうする?

第一、俺は目立ちたくない。


だが──考え直す。


俺は弱者を演じたい。

だが、負けたくはない。


つまり。


「......引き分けだ」


勝たない。

負けない。


全ての勝負を引き分けに持ち込む。


そうすれば、俺は「強くも弱くもない」存在になる。

常に誰かと同等。

埋もれるには、これ以上ない立ち位置だ。


「我ながら、天才か?」


小さく笑う。


悠真は、確信していた。

自分の経験は誰にも劣らない。

創造性も、発想も、間違いなく一級品だ。


──だが、忘れてはならない。


水谷悠真は、基本属性の全てを使えるわけではない。

それらを当然のように操る者たちと比べ、俺は異端だ。

それでも、ここまで来た。




一週間は、驚くほど早く過ぎた。


早すぎる。

入学イベントというものは、いつだって胃に悪い。

俺は胸の鼓動を抑えながら、王城へと向かう。


王城前の門。

そこには、すでに大量の人影があった。

顔見知りが多い。

転移者たちだ。


久しぶりに再会した友人同士で盛り上がる者。

こちらを見て、ヒソヒソと話す者。


(......まぁ、そうなるよな)


俺の成績ランキングは193位。

底辺オブ底辺。

そんな奴が、ここに立っていること自体が異常だ。


「どれ、集まったようだな」


声のする方を見る。


──いた。


初日に出会った、あの初老の男。


(......今思うと、このジジィ、怪しすぎる)


「何度も言われているだろうが、改めて伝えよう」


男はゆっくりと告げる。


「おめでとう、非勇者たちよ」


その言葉に、空気が僅かに張り詰める。


「君たちには、この王城により隠された王立魔法学園で、三年間学んでもらう」


......隠された、ね。


「願わくば、この世界の矯正も頼みたいところだが......まぁ、それは後の話だ」


男は踵を返す。


「付いてきなさい」


俺たちは、長い長い廊下を歩いた。

王門を抜け、ひたすらに歩く。

曲がり、進み、また曲がる。


やがて、新たな扉を抜けると──外だった。


そして、俺は目を疑った。


「......デカすぎだろ」


目の前に広がる、王立魔法学園。

建物が、異常なほど大きい。


一瞬【環相(カモフラージュ)】の一種かと思ったが、違う。

これは、空間拡張に近い。


その学園の前には、人だかりがあった。


──勇者組。


久しぶりの邂逅だ。


こちらを見て喜ぶ者。

ニヤニヤと笑う者。


始まるのか。

ここから──

俺たちの全てが。


学園という名の舞台で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ