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第2話 チートっぽい称号を獲得した件

「成績上位100名の者は、我々と共に王城へ向かってもらう。残りの者は余生を楽しむがいい。勇者の卵として召喚した以上、相応の責任は取らせてもらう。ある程度の優待も用意しよう」


召喚者――ローブを羽織った初老の男の言葉は冷たかった。

実質、格差。成績で人生が決まり、それに異世界でも抗えないというのか。


「はっ、残り物はいらねぇってか」


思わず口をついて出た言葉に自分でも苦笑する。

いや、いい。むしろこの"残り物"扱いこそが逆転劇の前振りになる。


「まぁいいや。俺はこの【空間魔法】について研究したいんだ」


王城だの栄誉だの、興味ない。

そんな薄っぺらい称賛より、"本物の力"のほうがよっぽど価値がある。


――――


異世界に放り出された"その他"の100人はそれぞれ自分の道を歩み始めていた。


俺はというと、とりあえず王都近くの街「アルベン」で落ちこぼれ特権の優待を使って宿を確保し、冒険者ギルドに向かっていた。


ギルドのカウンターに立っていた受付嬢は、長い金髪をまとめた理知的な雰囲気の女性だった。


「えっと......冒険者登録をしたいんですが」


「はい、ではこちらの登録用紙に記入をお願いします。最低ランクはF級からのスタートになりますが、問題ありませんか?」


「――構わない。俺は積み上げる側の人間だからな」


クールに返したつもりが、受付嬢の笑みがほんの少し引きつったのが見えた。

......しまった、ちょっとキメすぎたか。


ともあれ、登録は無事完了。

簡単なオリエンテーションを終えた俺はギルドを後にし、森の外れで実験に取り掛かっていた。


「さて、【空間魔法】の本質は"収納"だ。今のところ、目の前の物を別の空間にしまえる。ただ......それだけじゃ戦えない」


収納先は、"ここに存在しているけど、触れられない空間"。

ならば、発想を逆にして、別の空間を俺の軸に"接続"できればどうだ?


「空間そのものを引き出せば......もしかして」


試しに、辺りに落ちていた木の枝を拾う。


「空間を、覆え」


そう念じて、枝を振り下ろした。


――ズバンッ!


一瞬、風が切り裂かれたような音が響いた。

そして――枝が通った軌道上にあった草木が、綺麗に真っ二つになっていた。


「......は?」


なんだ今の。枝の先に刃なんてついていない。

それなのに、地面まで切れてる。


そのとき――


ピロン♪


「ん、今の音......まさか」


慌ててステータスウィンドウを開く。

そこには見慣れない一文が表示されていた。


【新たな称号を獲得しました:空間の覇者】


「な、なんだこれ......?」


詳細を開く。


《空間を武器として応用し、現象を現実へと干渉させた者に与えられる称号。攻撃判定に空間断層を付与する補助効果あり》


「......つまり、さっきの斬撃は、枝を媒介にして空間を"切断"したってことか?」


いや、マジかよ。

枝一本で"空間そのもの"を武器にできるとか、めちゃくちゃロマンあるじゃねぇか!


「ははっ、これだよ......!これを待ってた!」



思わず笑いがこみ上げたが、直ぐに表情を引き締める。


「ダメだ、まだ浮かれるな。これは、ただの第一歩に過ぎない」


今日はこのくらいにしておこう。

正直、何が起きたか完全に理解したわけでもない。


俺はそのまま宿へと戻り、しばらく空間魔法の構造について考察することにした。


あいつらを見返す日も、そう遠くない。

――この空間、俺が支配してみせる

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