第17話 闇ギルド
闇ギルド
――冒険者ギルドが「善」ならば、ここはその真逆に位置する。
この場に人権は存在しない。
理由は単純だ。ここでは全員が「商品」であり、同時に他人を値踏みする権利を持つ。
弱ければ売られる。強ければ奪える。秩序など存在せず、価値を決めるのは暴力だけ。
俺はハボッグの言葉を胸に、静かに息を整えた。
彼は団長として味方のように振舞っている。だが、その実、いつ俺を売り払うかも分からない。ここで弱気になれば――気づけば鎖に繋がれて終わるだろう。
《ハボッグ。俺はここで組織を作りたいんだが......どこに提出をすればいい?》
わざと軽口をきいた。
ハボッグは目を開き、次いで大笑いした。
『提出だと?ハッハッハッ!子供じみたことを言うなよ。ここは闇ギルドだ。名を挙げたいなら仕事をこなせ。それだけだ。まぁ、通り名がつけば野望も叶いやすくなるだろうがな』
通り名......。俺の頭の中で、ひとつの野心が灯る。
《闇ギルドでの仕事ってなんだ?》
『そりゃもちろん――人殺し、人身売買......たくさんあるぜ?表で禁じられてることは全部ここで出来る。俺のオススメは暗殺だな。人を殺せば殺すほど、恐怖と共に名を刻める。その居心地がいいんだよ』
......狂ってる。こいつ、本当に団長か?いや、団長だからこそか。
《色々教えてくれて助かった。ありがとう》
俺は言葉を残し、席を立とうとした。
だが、その時。
『そういや、アンタ――黒煙と言ったな』
背後から冷たい声が飛ぶ。
『情報ってのは生命線だ。ただでやるとは言ってねぇ。この場には"対価"が必要なんだよ。......驚きの連続をくれたお礼として、アンタの素顔――割らせてもらおうか』
!?
【環相】ッ!
瞬時に魔力を纏う。しかし、発動する前に――バチンと音を立て、魔力が断ち切られた。
な、に......?
理解が追い付かない俺に、ハボッグは薄笑いを浮かべる。
『おいおい、逃げるのはずりぃだろ?......なぜ魔法が発動できなかったか気になるか?これも対価だ。俺の眼は特殊でな。魔法やスキルの発動に必要な"魔力の導線"が視える。魔眼の一種だ。他にも持ってるやつはいるがな』
魔眼......?ペラペラ喋りやがって。そんなに俺に"借り"押し付けたいのか。
《なら、その魔眼で俺の素顔を覗けばいいんじゃないのか?》
『そんな便利なもんじゃねぇよ。まぁ、話はここまでだ――生きるか死ぬか。入口には俺の仲間もいる。逃げ道はねぇ』
詰んだ。
......詰んでる。
俺の人生ここまでか?まだやりたいこと、たくさんあんのに。くそ、誰か――助けてくれ。
その瞬間。
頭の中に膨大な魔力が流れ込んできた。
意識がふわりと浮かび、身体が熱を帯びる。......呼ばれている?何かが、俺を......?
腰元に鋭い痛み。
視線を落とすと、あの時押し付けられた刀が淡く光を放っていた。
「......お前、なのか?」
問いかけに呼応するように、刀はさらに強く脈打つ。
意志を持つ刀......いや、剣じゃないから"妖刀"か。
「......最高じゃないか。あのババア、いい仕事してくれたな!」
君には何ができる?どんな力が込められている?興奮して刀に問いかけた。
だが――次の瞬間、頭の中に流れこんでくるのは、数多の"詠唱"。
「は......はぁ!?これ、声に出さなきゃダメなのか!?だっせぇって!」
この刀、詠唱をしなければ効果を発揮させてくれないらしい。
『おい、何を二ヤついてやがる。早く答えやがれ」
ハボッグの声が飛ぶ。
......あーもう、どうにでもなれ!
俺は刀が導くまま、声を張り上げた。
夜の闇を切り裂くように、言葉が紡がれる。
闇ギルドは表に干渉不可ってことは......生き残るのは、俺の方だ!!
腰の妖刀が眩い光を放つ




