627話
騎士が不機嫌になった一番の理由は、あの油断した時にもらった一撃だろう。剣を突き刺した後、気力を腕に回しておけば、後数回は突き刺すことができる。そのオークを殺していたはずだ。それか、攻撃されるのを恐れているのであれば後ろに下がらなければならない。
死が決まっていない時には何かしらの行動を起こす必要があった。だが、チーフがした行動はその場に立ち、眺めるそれだけだ。その一瞬で有利な状況が傾こうとしていた。あの状況でもし短剣を持っていればどうだろう。左手に短剣があり、何も防御ができないその腹に刺さる。殴られたのだから距離を取ることになった。だが、殴りではなく地面に叩きつけられた場合はどうだ。
そこから死ぬまでの方法はいくらでも思いつく、殴りで飛ばされていなければ死んでいただけだな。騎士はもう1回オークと戦わせるつもりらしい。もう見るのは飽きたからなー。さっさと終わらせてもらいたいところだ。チーフのやる気も入っているため、むやみにやめさせるわけには行かない。やる気がないよりかはまだマシだな。
仕方ないがここは俺が折れることにするか。少し伸びている列に並び直す。まだ昼も来ていない。そして動いていないので全く腹が減っていない。だが、一番動いていたチーフは腹が減っていたようで、手に入ったオークの肉を生で食べている。
豪快ですごい食いつきだな。一応料理もできるけど。生肉も食べて腹も壊さないとかすごい消化能力だ。召喚魔法で仲間のゴブリンを呼び出し、水魔法を使わせそれを飲んでいる。大勢のところでよくもまあ自分の手札を晒せるもんだ。
あまり見られていないようで安心する。1部の人に見られたが、おそらく俺が召喚したのだろうと思っているのだろう。人間だとわかるのは俺だけだ。それなら俺が出したと考えるのが自然だろう。出したのは俺じゃないけど。
騎士の不機嫌オーラにより誰も近づくことができず、順番が回ってくる。相手のオークは、武器なしだ。なんというか少しずつレベルが下がってきているように感じるのは俺だけか?騎士の下位互換のようなオークだ。
最初はオークが動き出す。チーフに殴りかかるが、それを盾で受け止め、開いたところに剣を突き刺しすぐに引っこ抜く。そして一歩下がった。この戦い方ならレイピアの方が良さそうな気がする。オークが腕を振り回し、近寄らせないように攻撃をする。あのまま深くまで突き刺そうとしていれば、この攻撃を受けていただろう。
一歩下がっていたことにより、その攻撃はチーフに当たるぎりぎりを通り過ぎていく。通り過ぎていってすぐに、守りとして左腕に込められていた気力が足に集中し、その素早さをあげた。そのオークの体に新しく切り傷が作られた。
我を忘れたように腕を振り回すことだけが攻撃手段なオークだ。もう勝ちは決まったな。オークは息が切れたのか、汗を垂らしながら深呼吸をし落ち着かせているようだ。その剣で腹に突き刺した。今回は、スタミナ切れで大きな攻撃は行ってこないとわかっていたため、深くまで突き刺さる。そして大量の血が外に撒き散らされる。
その血はチーフを赤く染めた。右手から放たれる拳を左手の盾で受け止める。これが最後の一撃だったようだ。オークの体が地面に倒れた。横に座っている騎士からは不機嫌なオーラは少しなくなったように感じる。これなら次の目標のトレントまで進んでも問題なさそうだな。
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