1593話
その取り決めが終わった次の日だった。俺と婆娑羅は訓練場にやってきている。もちろんカメラをつけているのだった。
「テステース。おけ、大丈夫そうだね」
「今日の目的は、こいつと戦う以上。さっさと戦うぞ」
「まあまあ。そう焦らずに、簡単なルール説明をしようよ〜。何本先取?」
「1本」
「負けた時に、まだ回数があればって言いそうだから数増やして」
「なら3本」
1本先取とするのなら、配信時間的に30分もかからないだろう。だから、必ず回数を増やしておく必要がある。その目論見は成功したのだった。
「あの条件って全ての戦闘でするの?」
「ああ、もちろん」
「了解。じゃあ、早速始めようか」
カメラの画角に合わせていた場所に移動をし、カメラの反対側に合図を出すように銃を持ったゴブリンを召喚する。
(このゴブリンで攻撃をすれば・・・。絶対に怒るよね)
最初は婆娑羅のローペースの戦闘から行うようだ。槍を取り出し構えているものの、その槍に属性は付与されていない。時間を伸ばしたとしても、魔力量の優位性はとられない。特に問題はないのだ。
婆娑羅の槍の振り下ろしと、刀の抜刀がぶつかる。
「本気を出さないの?先に3本とって終わらせちゃうよー」
煽っておこう。これで怒りで我を忘れて、属性を付与することで魔力消費を増やすことが目標だ。
「お前も条件は必ず満たせよ?その場合はうちの勝ちだ」
満たさずに終わらせると、負けるのか。ならその条件をさっさとクリアするのが正解だ。とどめを指すのに土操作を支えとは言われていない。なら戦闘の開始に使って条件をクリアするのが最優先だ。
互いに後ろに飛び退くことで、距離が開く。婆娑羅は魔法を警戒し、俺は魔法を作るために後ろに下がったのだった。
即座にアースウォールを作り出す。場所はちょうど中間部分になるところだ。俺の姿は婆娑羅から完全に視界外に消えている。手元にアースジャベリンを作り出し、戦闘準備を行う。
(どうしようかなー)
婆娑羅の攻撃をしてくるとすれば、アースウォールの左右か上、切り崩しての正面だ。見えないことから、今のうちに飛行槍を準備している可能性もある。決めた。
アースウォールを婆娑羅の方向に倒すのだった。これで視界がクリアになり、行動の予測ができる。婆娑羅の行動は単純だった。アースウォールを縦に切り落とすことで、無理やり倒れるアースウォールを避けるのだった。
折れ、地面から生えているアースウォールの残骸を蹴り飛ばすのだった。顔めがけてだ。避けるのも面倒なため、シールドでその顔に飛んでくる残骸を防ぐ。俺の視界が婆娑羅で埋め尽くされた隙に、婆娑羅が近づいてくるのだった。
元から詰んでいる。いや、あれを奥の手にするか。飛んできた瓦礫を受け止めると同時に、魔力を込めることで支配下に置き、短剣の形を作り出す。
そして、婆娑羅に向かって投げるのだった。その短剣にグラビティーをかけるのだった。軌道をずらした短剣は婆娑羅の弾こうとしていた槍の下をすり抜け、脚に刺さる。
「まずは一本ってところかな?」
婆娑羅の機動力が落ちたのと、左右にアースジャベリンが設置されていることで槍で防ぎ切ることができない。もっと槍の本数があれば、槍を犠牲にして防ぐことができていただろう。認めなければ、このまま逃げながら戦えばいいだろう。
「いいや、うちの勝ちだ」
婆娑羅の脇下から2本の槍が飛び出す。
「まずは1本」
そう婆娑羅がつぶやくのだった。
アースジャベリンが変形し、絡みとることで向きを変える。それにより飛んでくる槍を無効化するのだった。先端に当たり、押し退けることで体の前で槍がクロスする形で止まっている。想定内の行動だ。
「残念なお知らせです」
飛んでくる槍を警戒していないわけがない。せめて一部でも見せていると警戒していただろう。最初から最後までなければ、フィニッシュで持ってくるに決まっている。心理戦が足りないねー。
飛び退こうとする婆娑羅の足を土操作で絡み取る。完全に尻餅をついた状態だ。
「まずは1本でいい?」
そんなわけで1本目を獲得する。このまま、1本も取れなかったらどうするのかな?てか、拘束ってよりかは暗殺に特化しすぎか?まあ、使うことが条件だし別にいいか。
誤字脱字があればしていただけると幸いです。




