1581話
40階層のボスはダンピール、別名ハーフヴァンパイアだ。配信としてこの階層を出すのは初めてのようなものだ。攻略して終わっているものは軒並み、配信外でこの階層をクリアしている。そのことの指摘は少しずつ増えているのだった。
空白の40階層、それがここの二つ名だ。何もないから配信に使われない。そう考えられている。まあ、ガチモンの人間のようなものを相手にするから写していないだけであって、それ以外の理由はないのだった。
「やばくなったら、呼んでねー」
舐めてかかっていると苦戦をするのは確実だ。あとマリアとの相性は少し悪いような気がする。ボスは自分の血を吸うことでHPを回復させていたはずだ。そのスキルが短期決戦をしたいマリアの邪魔をするだろう。
マリアが40階層に足を踏み入れ、理性を持ちバンパイアになったことを受け入れた青年がその場に立っている。俺が来た時には幼子だったけどな〜。少し強めな存在か?
だが、受け入れたことで、理性と凶暴性が溶け合い言語能力が消失している。ただそこにあるのは凶暴性を必死に理性でコントロールしようとしているバンパイアだ。
ヴァンパイアであれば、本能とも言える吸血欲が抑えられることができただろう。だが、ハーフだ。つまりなり損ないの中途半端な存在だ。そのため、本能という名の欲望をコントロールすることができない。
受け入れたことで、使える能力が増えている。それは血液操作だ。自分の長い爪で手のひらを切り裂き血を流す。その血が取り出されつつも急激に固まっていき、剣の形に作り替えられる。
魔力形質変化やスライム金属のような特徴を持っている。不規則的な変形武器との戦闘はマリアは行っていない。そのため、対処はできるのだろうか?
剣の鍔を噛み砕き、口の中で転がす。そして、つけた掌の傷を修復するのだった。より興奮しているのだろう。飲み込むことができず、口の隙間から液体となった血がこぼれ落ちている。黒かった目が赤く染まっている。
本能が理性を超えたのだ。影の魔物を召喚し、幻影を作り出す。バンパイアの本能は、血に飢えた獣だ。狙うのは血の通っているものだ。そのため、幻影はすぐに見抜くことができる。幻影を使うものにおいては、天敵となる。
光魔法を放つのだが、簡単に避けられる。血を吸ったことによるドーピングだ。一時的に上がったステータスにより、簡単に回避し破壊する。バンパイアは走り寄りながら、剣を両手で持つのだった。
刃を触ったことで血が噴き出しているが、それも気にしていない。剣を折り、武器が変形する。片手持ちの短剣を二刀流にしているのだった。そして、その短剣を繋ぐように鎖が短剣の端に巻き付いているのだった。
リーチと武器を手放すリスクを減らすのだった。ここから近接戦闘が始まる。
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