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SSまとめ

如何せん独り。

作者: 木下真三郎

私小説とも、文芸とも言えないような作品がなんとなくで作られてしまいました。

テスト終わったんで、なんとなく書いた次第でございます。


―仕方ないよ、だってそれが僕という人間。



―だってほら、これだって僕のアイデンティティだよ?



―そうやって言って、逃げてるだけじゃないか。




 僕は、凡人。

 運動は人並みにできて、勉強もまあまあ。

 人間関係も悪い方ではない。

 特技も、まぁある。


 だけど、足りないものがある。数年間望んでも得られなかったもの。

 もしかしたら、自分の中で何かが吹っ切れれば得られるのかもしれない。

…でも、僕にはできなかった。



 もしかしたら、結果的には“それ”が自分の弱さに気付いたきっかけだったのかもしれない。


 小学生の頃から大人しい…というか人と絡むのが得意ではなかった僕だが、そのまま続けばつまらない少年時代を送っていたであろう僕に転機が訪れたのは、小学四年生の時だ。

 僕自身が成長に伴って変化したのか、それとも“あの人”に何かしらの転機が訪れたのかは知らない。

 いつの間にか、僕は“あの人”と仲良くなっていた。

 潜在的に僕が“下”というニュアンスが籠った関係だったけれども、それは決して従属の関係ではなく、言わば“あの人”はコミュニティの広がりの中心であると言えた。


 無論、広いコミュニティの中心にあって主張の強い男子達をまとめていたというのは、今となっても“あの人”の器量を感じざるを得ない要素だ。そしてそれは、“あの人”と格別に(自分で言うのも変だけれど)仲が良かった僕にとっても、密かな誇りだった。

 “あの人”がやんちゃ盛りの男子達の中心に立てていたのは何故なのだろうか。身長?運動神経?性格?それとも、不思議な魅力(カリスマ)

 何にしろ、僕の人生観と人生を一変させた一人であることには変わりない。


―その時から、僕は少しずつ気付いていたのかもしれない。


 紆余曲折を経て、僕は“あの人”とは別の学校に進学した。

 無論、その志望理由に書いた、「上を目指したい」という意志はあった。

 だが、当時口には出さなかったが、薄々自分の心の中で気付いてきたことがあった。


―俺は、ダメになる。


 もしも、“あの人”と同じ中学に進んだとしたら、別の出会いがあっても、


―俺は、黙殺してしまいそうな気がする。


 今が心地よいからこそ、堕落してしまう。そういう若干の危機感を抱きながら、“あの人”との最後の学び舎を過ごした。


ー自らの弱さ。それは、行動力の致命的なまでの欠如。


 何が原因なのかは、未だに分からない。遺伝とかそういうのは信じないタイプだが、少し信じかけてしまっている程に、原因が分からない。


…もしかしたら。


…もしかしたら、“あの人”との出会いを経て、安寧に浸かり、自ら行動した経験が圧倒的に不足していたのかもしれない。“あの人”はみんなを引っ張る行動力があったから、自分はそれに引っ張られるだけで楽しいし、幸せに暮らせていた。


だからこそ今、壁にぶつかっている。



 新たな学校に入学してから、間もなく僕は“仮面”を被らざるを得なくなった。

 知らない誰かに話しかけようとするだけで、足が竦んでしまう。口が開かない。相手は怖くない人だと知っていても、それは変わらない。


―思えば、情けないながらも、仲良くなりたいと思った人に対して自分から声をかけて事なんて無いかもな。


 でも、仲良くしたいという気持ちはあった。他の人に気に入られたい、楽しく話していきたい。

 幸いにも、周りの人も自分と同じくアウェイな環境に放り込まれているという点では一致していた。だから、いわゆる“陽”サイドの人間は僕にも声をかけてくれた。


 声をかけられるというのは、僕にとって好機(チャンス)でしかない。

 自分で声をかける必要もなく、仲良くなるための一歩を踏むことが出来る。


 その千載一遇の好機を逃さないためには、どうすればいいのか、


 自分が“滑稽”であるという“仮面”を被るしかなかった。他人に気に入られるためだけの、無価値な仮面。息苦しいから独りの時は外すその仮面。そのギャップをも自らのアイデンティティにしたい、欲張りな僕は“変人”という仮面を加えることで整合性を整えた。


 話しかけてくれた人に対しては愛想を振りまき、自分は魅力的だ、面白い人間だ、とアピールする。「あぁ、こいつ面白いな」と思ってもらえるように。そして、もう一度話しかけてもらえるように。自分という卑小な存在を認めてもらえるように。


 そうやって、“自分から人に話しかける”という些末な一歩を踏み出すことなく、僕は楽をして楽しい生活を手に入れた。別に演じるなんて苦でもない。マスクをするのと同じだった。

 そうやって、“自ら行動する”ということから逃げてきた。いつか必要に迫られたら自分にもそれくらい、できるさ。そんな甘い理想を自分に押し付けた。


 それで出来上がったのは、自分からは何もできない会話AIの劣化。

 周りの友達も、僕に話しかけることが出来るくらいの“行動力”を持ち合わせた人ばかりだったから、余計僕は“行動”を迫られる機会が減っていき、堕落していった。





 ある夕方、電車に揺られながら勉強していると、明らかに「目が見えませーん」という方が乗ってきた。

 数秒考え、周りを見渡した。殆どの人が、まるで「私は気付いていません」と言わんとするのか、食い入るようにスマホを弄っていた。

 駅のスタッフ(この呼び方が正確かは分からないが)が付き添っていたが、絶対に席に座った方が良い。

 ここで、真っ先に動けたら良いのだろう、と思う。

 多分、声も聞こえる。だから、肩トントンというハードルを越えれば、ミッション達成なのだ。


―あの、席。


 言えない。それどころか、立つことすら出来ない。


ゆっくりと時間が経った。ドアが閉じる前には会社員の男性が席を立ち、肩トントンからの「席どうぞ」で、双方が笑顔になっていた。

 そのやりとりを眺めながら、僕は再び唇を噛んで俯くしかなかった。


 こういうことが、びっくりするくらい多い。


―しょうがないよ、独りだもん。独りじゃ、何もできないよ。人間は集団で生きる生物なんだから…。


 臆病な自分に対して腹を立てる、もう一人の自分に臆病な方が言い聞かせるが、もう一人の自分がムスッとして無言で向こうを指差した。


 そこには、当然のようにみんなを仕切る人の姿があった。


「でもあんなこと、今の俺に出来ると思う?」


 半分の自分は苦い表情を浮かべ、もう半分と合体して、僕を作る。


「…出来やしないよ、しょうがない。…独りじゃ、ね」



 数年間に渡って危機感を覚え続けていたが、危機感は抱いているだけでは何も変わらない。僕は、小学校のころから挙手しまくる人のことを尊敬していたし、何度か自分を変えようと努力してみたこともある。


 だけど、何も変わらなかった。


 いつしかそれが当然となり、自分の一部となり、自分となった。

 

 今ある安寧に甘え、いつしか「行動力を身に付けるための努力」をするための行動力さえもどこかに捨ててきてしまった。



 なんで、僕は動けないの?


 周りの目が怖いから。


 そう答えざるを得ない。それが唯一の答えだろう。


 人に話しかけるのが怖いのも、「こいつもしかしたら、俺の事鬱陶しいと思ってるかもしれないよな」とか、無根拠な思いが脳を去来するからだ。


 論理的な思考をする僕は、「もし自分だったら、そんなこと思わないけどな」と言うが、感情的かつ悲観的な僕は「僕とこいつは違うぞ」と呟く。

 結局、人に話しかけるという経験が圧倒的に不足している僕は、一歩踏み出せない。


 如何せん、独り。しょうがない。


僕は、これからも自分に言い聞かせなければならないのだろうか。


最終的に自己分析多めのエッセイっぽくなってしまいましたね。

需要あんのかな?

ま、人が読んで楽しむような内容でもないしいいか。


小学生の時は相談できる奴が身近にいたんですが、中学になってからはちょっとばかり遠い存在になってしまって。たまーにしか会えないので、なかなか相談はできず。



結局自分の感情の整理するには、文章に書くのが一番なんでしょうかね。

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