表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

浴窓

作者: シウソラムカナ

  浴窓

                       シウソラムカナ


僕は、風呂に入っている時、時々窓を開ける。主に、のぼせた時にそうする。冬の寒い日は、風呂の中の蒸し暑さと、外の空気の冷たさが、まるで露天風呂のように感じられる。

幸い、僕の家は超がつくほどの田舎にあるため、窓を開けても誰かに覗き込まれたり、みられたりする心配はない。見せるほどのものは何もないが。

今日も御多分に洩れず、少々のぼせてしまった。いつものように、ガラガラと窓を開ける。

「わっ」

 声が出た。

 外は、雪がしんしんと降り注いでいた。

 窓から見える家の郵便ポストの上には、申し訳程度の白い傘が被されていて。

 映画のワンシーンのようだった。現実離れしている光景だった。

 雪は、風に煽られて、斜めを向きながら落ちてくる。かと思ったら、今度は急に地面に垂直に降りてきたり、逆向きの風に乗ってみたり。

街灯に照らされる雪も、浴窓に入り込んでくるおっちょこちょいな雪も。

 その全てが綺麗だった。

 かれこれ一○分ぐらい、僕は浴窓からの光景を眺めていたんだ、と思う。

 気がつけば、好きな人のことを考えていた。

 デフォルトに彼女は綺麗だという事実があって、その人が動いて、もっと綺麗になる。それをみて、愛しくなる。

 学校ですれ違って挨拶する時も、運動しているところも、旅行先のストーリーの写真も。

 綺麗だ。

 長い髪を結んでいるときなんかは、僕を悶絶させる力を秘めていた。

 誰にでも見せる笑顔も、まだ見たことがないけど好きな人にしか見せない笑顔もきっと。

 好きだ。

 恋人は中身が大事って言うけど、僕はそうは思わない。

 やっぱり、綺麗なあの人が、一番好きなんだ。

 僕に向ける表情も、言葉も、その全てが嘘なんだろう。本心で言ってることなんて一割にも満たない、そうなんだろうな。

 僕をずっと子供扱いして、成長を見守るみたいな感じで接してるんだろうな。

 そうでしょう?

 毎月一緒に飲んでくれるのも、遊びとは言わなくても、時間稼ぎというか、暇な時間を埋めるための時間に過ぎないんだろうな。

 それでもいいよ。届かないのは知ってるよ。……って言ってみるけど、やっぱいいはずない。

 一緒に時間を過ごせば過ごすほど、忘れられなくなる。

 まだ、もう少しでいいから僕の手が届く範囲でいてほしい。

 ちょっと年齢が離れていたって関係ない。

 マフラー、ちゃんと使ってくださいね。

 だいぶ寒くなってきましたから。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ