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ドッペルゲンガー  作者: 楢弓
3/3

オルター・エゴ

「あら? 今日は一人なの?」

作弥と出会ってから数ヶ月が経過したある日、俺はいつものバーのカウンターに一人でいた。何処かに出かけているのか、それとも女の所をほっつき回っているのか、作弥とはしばらく顔を合わせていない。酒を口に運びながらこの後何処に行こうかとぼんやり考えていたのだが、背後から声をかけられた。俺がゆっくりと顔をそちらに向けると、一人の女が立っていた。茶色味を帯びたセミロングの髪に色白の肌。ピンク色の唇は瑞々しく艶があり、切れ長で黒目の小さな瞳は周りの男の視線を釘付けにするだろう。目を引くのは顔だけではない。胸部は白地のシャツの上からでも豊かな膨らみが分かる。下半身にピッタリと張り付いたデニムパンツのシルエットによって、健康的な太さの脚と張りのある丸みを帯びた臀部が浮き出ている。グラビアアイドルか、はたまたモデルか。俺はそんな自分に話しかけてきた魅力的な女に一瞥を送ると、そのまま顔を正面に戻した。

「ちょっと。なんで無視しているの? 久しぶりに会ったっていうのに」

女は少し怒ったような口調でそう言うと、俺の隣に腰掛けた。その横顔をどこかで見たような気がする。

「あぁ、失礼。俺に話しかけているとは思わなくてな」

「カウンターに座っているのはアナタしかいないでしょ? 少し見ないうちに目でも悪くなったの? こうして座っていると思い出すわね。アナタがここで私の横に座って口説いた時の事を? 覚えている?」

彼女が誰だったのか思い出すまで時間稼ぎをする予定だったが、低く落ち着いた声と俺がこのバーで口説いたという言葉を発してくれたおかげでその時間は必要なくなった。服装や髪型は変わっているが、数ヶ月前に俺を手ひどく振ったモデルの女だ。たしか、しのぶという名前だったはずだ。俺はあの時にバカな自分を思い出したくなくて、嘘をついた。

「俺が口説いた? そうだったか? 記憶にないな」

「ふぅん? なるほどね。私のことなんてその程度の軽い気持ちしかなかったっていうわけだ?」

「そういうことじゃない。俺はいつでも本気だよ。ただ、過去は振り返らないようにしているだけさ。昔の自分を思い出すと腹が立ってくるからな」

俺がそう誤魔化すとしのぶは少し疑うような目をこちらに向けたが、顔を向けない俺に小さくため息をついて前にいるマスターに酒をオーダーした。

「まぁ、アナタの言っていることは私も分かるよ。今思うと、あの時の私は人生のどん底にいたからね。流されるままにモデルになって、他人から押し付けられた夢を自分の物だと勘違いしてさ。挙げ句にその他人からは裏切られて身体を売られそうになったわけだし。あの頃の私が目の前に現れたら説教してやりたい位。自分の人生なんだから、自分の生きたいように生きろってね。今の言葉もアナタの受け売りだけど」

しのぶは口元に笑みを浮かべている。そんな言葉を言っただろうか? 作弥から人生を学んだ今の俺なら言えるかも知れないが、昔の空っぽの自分にはそんな言葉思いつきもしそうにない。俺は少し不審に思いながらも、話を合わせることにした。レッスンの六。疑問に思っても、否定せずに適当に頷け、だ。

「それで? 今は生きたいように生きているのか? その身なりを見る限りでは心配なさそうだが」

「お陰様でね。事務所も辞めて、今は小さなオフィスで働いているの。モデルの時と比べたら派手な生活は出来ないし上司には毎日のように怒られるけど、容姿しか褒められることがなかったあの頃よりもずっと充実しているわ。今度、簿記の資格を取ろうと思っているの。勉強が全然出来なかった私がよ? 信じられる?」

しのぶを見る。確かに服装はカジュアルでどちらかと言えば地味になっており、よく見ると手にしているバッグや時計なども安物だ。だが、本人自体は以前のような暗さや自暴自棄な雰囲気はなく、やる気に満ち溢れていた。活力を感じるその姿は俺には前にこのバーで出会ったときよりも、もっと魅力的に映った。作弥が言っていたことを思い出す。暗い女より明るい女だと。

「それは良かった。俺も一安心だ。で? 何の用があって俺に話しかけたんだ?」

その問いかけに、しのぶは一瞬表情が曇った。何かを悩んでいるような、そんな感じだ。だが、次の瞬間にはまた顔に笑顔を貼り付けると、俺の腕に自身の腕を絡めてきた。

「そんなこと、言わなくても分かるでしょ? ねぇ、こっち向いて?」

俺は言われるままに顔を隣へ向けると、目の前にはしのぶの顔があった。上目遣いでこちらを見る姿にデジャヴュを覚える。しのぶがそのまま顔を上にあげて、唇と唇が触れた。小鳥がついばむように軽く何度が唇同士が触れた後、しのぶの舌が俺の口内へと侵入してきた。俺は受け入れるように舌を絡める。柔らかな感触を楽しむと共に、ほんのりと甘く、やや粘度のある液体を味わう。貪るようなキスをたっぷりと堪能して顔を離すと、しのぶは少し酸欠になったのか息を荒げていた。顔は赤く上気し、瞳は潤み、口元はどちらのものとも分からない涎で汚れている。しのぶは呼吸を少し整えると、抱きつくように俺の首に両腕をまわすと耳元で囁いた。

「この前みたいにシて。作弥」


「つまり、影人のことを別人だと勘違いしている相手とそのままエッチしたってことか? まじかよ。羨ましいけど、バレたりしないのか?」

「今の所は大丈夫そうだな。作弥にバレたら半殺しにはされそうだが」

俺がタバコを吸いながらなんでもないように言うと、茶髪の同級生は口を半開きにした。隣りに座ったスポーツ刈りの同級生が不安そうな表情で尋ねてくる。

「半殺しって……。そんなにヤバい相手なのか? それになんでお前はそんなに落ち着いているんだよ?」

「落ち着いているように見えるか? 焦りを隠すために美味くもないタバコで気を紛らわせているだけだぞ?」

俺はそう言って二人に向けてタバコの煙を吐いた。二人が嫌な顔をしながら手を仰いでいるのに気がつき、俺は謝罪する。

「あぁ、すまない。つい癖で。二人共タバコはやってないんだったな」

「二人共って、影人だって前まではタバコなんて吸ってなかっただろ? 酒だって俺たちに誘われた時くらいしか飲んでなかったのに、今じゃ部屋のアチコチに瓶や缶がある。見た目も変わっちゃったし……。一体どうしたんだよ?」

「大学も最近来てないだろ? このままじゃ留年しちまうぞ?」

二人の話すつまらない言葉を俺は聞き流しながら、自分の部屋を見回した。そんなに変わっただろうか? 確かに以前のように整理整頓された部屋ではなくなっている。床にはゴミが散乱し、飲みかけの酒がテーブルやベッドに転がっていた。部屋の隅には誰かが持ち込んだ成年雑誌やマンガ本が雑に積み重なっている。俺のことを心配して数カ月ぶりにこの部屋にやって来た二人が驚くのはもっともかもしれない。だが、俺は前の無味無臭な部屋よりも色々なものが乱雑に混ざり混沌とした今の部屋の方が自分らしいと感じている。作弥や彼の仲間と共に多くの経験をしてきた。中には一歩間違えれば命の危険があるようなこともだ。この部屋はそんな沢山の経験を積んだ今の俺の心象風景を表しているような気がして、気に入っていた。

「なぁ、その作弥ってヤツと縁を切ったらどうだ?」

「はぁ? なんだよ、突然?」

「いや、だってさぁ。ソイツと出会ってからのお前、ちょっとおかしいよ。見た目や部屋も変わったけど、口調というか性格まで以前とは別人みたいになっちゃってるし……」

言っている意味が分からない。苛ついてタバコを持つ手が震え始める。本当の自分へと進化をしたのだ。昔のクソみたいな自分と別人なのは当たり前だろう。

「もし脅されているんだったら一緒に警察に相談に行くからさ。だから、そんな危険な相手と付き合うのはやめようぜ? なぁ?」

段々と頭に血が上っていくのを感じる。なぜコイツラにそんな事を指図されなければならないのか。俺は自分で望んで彼らと関わっているのだ。文句を言われる筋合いはない。

「連絡先を教えてくれないどころか、その作弥ってヤツが今どこでどんな仕事をしているのかも知らないんだろ? 絶対に影人のことを都合の良い手下位にしか思って……、ウワアアァァァアアッ⁉」

気がつくと俺は同級生の一人を片手で壁に追い詰めていた。もう一人の同級生が必死に抑えている俺の腕には火のついたタバコが握られており、もう数センチ動かせば胸ぐらを掴まれている同級生の顔に触れてしまいそうだ。俺が手を離すと同級生は床にへたり込んだ。もう一人の同級生が身をかがめて彼に声をかける。俺は怯えている二人に怒声を浴びせた。

「俺は作弥を信頼している! それは作弥も同じことだ! 二度とフザけたことを言うんじゃねぇぞ‼ とっとと家から出ていけっ‼」

逃げるように部屋を出ていく二人を俺は睨みつけながら見送った。あの二人は俺を心配してくれただけなのだから、ここまでする必要はなかったのではないかと問いかける声が聞こえる。タバコを灰皿に押し当てて火を消すと、俺はベッドに横になった。冷静になれ。また声が聞こえた。だが、未だに俺は動揺していた。彼らの言う通り、俺は作弥のプライベードを何も把握していない。彼の過去についても同様だ。どこで生まれたのか、家族はいるのか、なぜ都会でフリーターをしているのか。そもそも、本当にフリーターなのか。尊敬しているはずの作弥のことを俺は何も知らない。このままでは駄目だ。俺はもっと作弥を理解しなければならない。


「よぉ、兄弟。元気だったか?」

同級生たちが尋ねてきた日の夜、久しぶりに作弥が俺の家にやって来た。友人や女も連れずに一人でだ。俺が歓迎してグラスを渡すと、作弥はソファに座って中身を飲んだ。俺はベッドに腰を下ろすと話しかけた。

「しばらくぶりだな。どこ行ってたんだ?」

「ん? まぁ、色々とな。それより、どうだ? 彼女は出来たか?」

「女が出来てたら、お前を家にはあげねぇよ」

「そりゃそうだ。ハハッ」

談笑しながら、俺は作弥を盗み見た。作弥は笑っている。特に変わった様子はない。俺は先程決意したように、彼のことを尋ねてみた。

「なぁ、お前って、普段は何をしているんだ?」

「なんだよ? 急にそんな事を聞いてどうした?」

「いや、ただ、お前のことを知りたくなって……」

「おいおい。彼女が出来なさすぎて、ついに男に目覚めたか? 別に否定する気は無いが、俺はそっちの趣味はねぇぞ?」

「ふざけないでくれよ! 俺は真剣なんだ!」

「何もそんな怒ることはないだろ? 一体どうしたんだ? 何かあったのか?」

作弥は欠伸をしながら俺に問いかけた。俺は素直に同級生とのやり取りを話し、作弥について何も知らないことを伝えた。聞き終えた作弥はなぜかニヤニヤと笑っている。

「へぇ。スゴイ偶然だな。俺もちょうどお前に俺の話をしようと思っていた所だったんだよ」

「そうなのか?」

「あぁ。今日はそのために来たからな」

そう言うと、作弥はソファから立ち上がって俺の隣に座った。

「本当にお前はスゴイヤツだよ。見た目や喋り方はもう完全に俺と同じだ。中身についてはゆっくりやっていこうかとも思ったんだが、先週仲間の一人がドジってヤバい相手に目をつけられちまってな。急ぐ必要が出てきた」

「何をドジッたんだ?」

「まぁまぁ。それよりも先に俺の事を聞きたいんじゃなかったか? 教えてやるよ。俺は地方の出身でな。お前もそうだろ?」

「あぁ」

「家族は父親と母親。兄弟はいなかった。裕福な家庭だったが、親父とお袋は下らない理由でいつも喧嘩してな。小さかった俺は怒鳴り声が止むまで、ただじっと我慢していた。転機は高校生の頃。お袋が車に轢かれて死んだ。本当に事故だったのか、俺は今でも疑問に思っている。何せ一緒にいた俺はその時の記憶が抜け落ちているんだからな。小さい頃からそうだ。ふとした瞬間に気がついたら、友達のおもちゃを壊したり、上級生を殴りつけたりしていた。母が死んだのも事故ではなく、僕の中にいる誰かが母を車道に突き落としたんじゃないか? 冗談に聞こえるかもしれないがそう思ったんだ」

「信じるさ。俺も同じ経験をしているからな」

「疑っていたのは僕だけじゃなく、父もだった。警察や病院に相談するか迷っていたけど、僕の将来の事を考えて人には知らせずに、なんとか僕をマトモにしようと頑張っていた。普通の生活。普通の考え。普通の人間。それを僕に植え付けて、父は亡くなってしまった。多分心労のせいだと思う。僕は都会の大学を受験し、実家を売り払ってこの部屋へと移り住み、大学生として生活している。普通の生き方をするために」

話を終えた作弥はまた欠伸をしている。作弥を改めてよく見ると、いつもとは髪型や服装が異なっていた。まるで昔の俺がそこにいるような、そんな錯覚に陥った。

「錯覚じゃないさ。話を聞いていて思っただろう? まるで自分の話みたいだと。そうだよ。僕はお前だ。僕こそが吉川影人だ」

「お前が吉川影人? それじゃあ俺は?」

「僕がお前であるように、お前も僕だ。僕は今までなんて名乗っていた?」

「浩谷作弥……」

「そうさ。お前は浩谷作弥だ。吉川影人という昔の名前はもう捨てなければならない。これからは浩谷作弥として生き、浩谷作弥として死んでいくんだ」

俺は浩谷作弥。俺こそが作弥。そうか。そうだった。俺は作弥なのだ。作弥の事を理解したいと考えていたのが恥ずかしい。理解するも何も、俺自身がそうなのだ。理解する必要など最初からなかった。

「どうだ? 納得出来たか?」

「あぁ、俺は浩谷作弥だ」

「素晴らしいな。それじゃあ、浩谷作弥としての最期の仕事だ。俺の為に死んでくれ」

影人はそう言って懐からナイフを取り出すと、俺に向かってそのナイフを振り下ろしてきた。


浅い眠りから目を覚ますと柔らかなベッドの上にいた。顔を横に向ける。壁に掛けられている時計の針が七時を少し過ぎた所だった。俺が唸り声を上げると、向こうの方から女性の声が聞こえてきた。

「やっと起きた。いつまで寝てるの? 今日は一コマ目から講義があるんでしょ? 早く顔を洗ってご飯を食べてよ」

スーツ姿のしのぶが皿とカップを持って、部屋に入ってきた。トーストとスープをテーブルに置くと、カーテンを開ける。朝の日差しに俺は布団を掴んで頭から被ったが、しのぶはそれを剥ぎ取ると俺の腕を掴んで起き上がらせようとした。

「いい加減、真っ当な人間の生活にも慣れてよ。そんなんじゃ、留年しちゃうわよ?」

「分かった。分かったよ。今起きるって。だが、その前に……」

俺はしのぶの腕を掴み返して引っ張った。しのぶがベッドへと倒れ込んでくるので、空いている腕も使って抱き寄せる。しのぶは急な行動に少し腹を立てた様子だが、俺から離れようとはしない。

「ちょっと、危ないでしょ。いくらベッドの上とはいえ、怪我するかもしれないじゃない。それに出勤前なのにスーツにシワが寄るわ」

「それじゃあ、今日はお預けにしておくか? 俺は別にどっちでも構わないぞ?」

「イジワル。私が断るわけないって分かって……」

最後まで言い終わる前に、俺はその口を自分の口で塞いだ。一瞬驚いたように目を見開いたしのぶだったが、数秒後には目をトロンとさせて俺の背中に腕を回してきた。乾いた口内が潤うと、俺は顔を上げた。しのぶの舌が名残惜しそうに俺の唇を追っているのを見て、俺はニヤリと笑う。無意識の行動だったらしく、しのぶは恥ずかしそうに顔を背けようとしたが、その前にまた俺がしのぶの唇を奪った。二回目のキスを終えてお互いスイッチが入りそうになるが、テーブルの上から急に通知音が聞こえて現実に引き戻された。先程まで身体の力が抜けていたしのぶが俺の腕からスルリと抜け出すと、立ち上がってスーツのシワを伸ばし始めた。

「ほらっ! こんなことしてる時間はないでしょ? 早く起きて!」

俺も諦めてベッドからゆっくりと体を起こす。部屋を見回す。ソファやテーブルなどの家具は白を基調としており、小さめのテレビが置かれたテレビ台の上には観賞植物が飾られている。床に敷かれたカーペットにはゴミはおろか髪の毛も付着しておらず、念入りに掃除されていることが分かる。タンスが大きいのはモデル時代の名残なのだろう。俺はしのぶのベッドから起き上がると、大きく伸びをした。しのぶが俺にスマホを渡してくる。

「はい。お友達からメッセージみたいよ」

ソファに座りながらスマホを受け取ってメッセージを確認する。今日の講義が終わったら飲みに行かないかという誘いだった。しのぶは目を細めながら嫌味を言う。

「へぇ。良いわねぇ、大学生は。一日数回授業を受ければ遊びに行けて」

「そうだな。まぁ、残念ながらこの誘いは断るが」

「あら? 行ってくれば良いじゃない? 作弥の事だからボロが出るなんて事はないでしょ?」

俺は返信してスマホをテーブルに置くと、そばに置いてあるもう一つのスマホも確認した。仲間からメッセージが届いており、無事相手に『浩谷作弥』の遺体が渡ったそうだ。横に座ってスマホを覗き込んでいたしのぶが俺の肩に頭を預けた。

「本当にアナタって悪い男ね。自分を慕ってくれているバカな大学生を身代わりにするなんて。しかも、自分は相手の生活を乗っ取って大学生活を謳歌しようとしてる。良心が傷んだりしないの?」

「そんなもの、何の意味がある? それにヤツは俺のおもちゃだ。どう扱おうが俺の勝手だろ」

「おもちゃ、ねぇ? それならどうしてコイツに私を抱かせたの? 私もアナタにとってはコイツと同じおもちゃだってこと?」

体を起こして不安そうな眼差しで見てくるしのぶを俺は肩を掴んで抱き寄せた。

「安心しろ。お前はおもちゃなんかじゃない。俺の女だ。捨てるような事はしない。ヤツに抱かれてこいと言ったのは、最期に夢を見させてやりたかったからさ。おもちゃとは言え、情は湧くからな」

俺の言葉にホッとしたのか、しのぶは再び俺にしなだれかかってきた。しのぶをこちらに向かせると三回目のキスをした。唇を離した時、しのぶは満足そうに微笑んでいた。

「ねぇ、作弥は私の事を捨てないでね? アナタの指示には何があっても従うから」

「本当か?」

「えぇ。本当はアナタ以外の男に抱かれるのなんて嫌だったけど、言われた通りあの大学生に抱かれたでしょ? 目の前の男は必死にアナタだって思い込もうとしたのよ? キスの仕方も、セックスの腕も全然アナタには及ばなかったけどね」

その言葉に俺は満足すると、しのぶから腕を離してテーブルに置かれたスープを手に取った。スープを口に含んだが、熱くてすぐにカップを離した。しのぶが不思議そうに俺を見ている。

「大丈夫? 少し熱すぎたかしら? でも、いつもは平気そうに飲んでいたわよね?」

「あ、あぁ。大丈夫だ。さっきのキスで舌が敏感になってしまったのかもしれないな」

「フフっ。なにそれ?」

笑いながらしのぶは出勤の準備をし始めた。俺は猫舌をごまかせたようで安堵する。今度からは熱そうな物が出された時は注意しなければ。俺は浩谷作弥なのだから。

お読み頂きありがとうございました

今回でこのストーリーは完結です

今回、このストーリーを書いた経緯は今までとは違ったジャンルに挑戦しようと思ったからです

ホラーは私自身苦手でどのように構成すれば良いのか悩みましたが、サイコなキャラにスポットを当てたサスペンス気味のホラーなら書けるかもと思い、プロットやキャラクターを作り上げていきました

他人に成り代わるという展開を思いついた時、自分の好きな漫画の中で悪役が他人に成り代わる場面があったので、キャラクターの名前はその登場人物たちから名付けました

ただ、名前から先の展開が読めてしまう可能性があったため、ブラフとして二重人格を思わせる描写をいれました(2話の最後の描写や3話のタイトルなど)


また、性行為を思わせる言葉を含んでいたのでR15に設定しましたが、せっかく年齢制限を設けたのだからもう少し生々しくしようかと思い、キスの描写を少し過激にしてみました

いかがでしたでしょうか?


次回についてはターゲッティング広告から思いついた話を書こうかと思っています

投稿しましたらお読みいただけると幸いです

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