第05話 「幼馴染との和解」
保健室と女子トイレの一件で、少し吹っ切れた僕は、桃谷さんと和解が出来て、
僕たちの秘密を共有できる仲間が出来て、少しホッとしている…。
まだまだ、頭の痛い問題は山積みなんだけどね…青嶋さんとじっくり話し合わないと!
身体の方は、かなり楽になったので、保健室から出ることにした。
教室に戻るまで、桃谷さんはすごく心配してくれていた…ほんとに迷惑かけちゃったな…。
いつか、何かお礼をしてあげたいと思う、そうだ!何かお菓子でも作ろうかな?クッキーでも。
それで、桃谷さんと話し合った結果なんだけど、今まで通りに接することとなった。
「美沙希ちゃんの姿で、赤坂くんとは呼べないよ~私が訳が分からなくなるし…ね!」
「私のことは、今まで通りに、汐里で良いからね~ほかの呼び方したら、許さないぞ~」
「それと~美沙希ちゃんは自分のことをあたしって言ってたから…僕は、やめてね?」
だそうだ…兎に角今の僕は…あっ違う!…私は、青嶋さんなわけで…。
周りに怪しく思われないように、演じていかないと…あ~不安しかないよ…。
そんな気分が晴れないまま、自分の教室に戻ってきた。
「青嶋さん!大丈夫?」
「いきなり倒れたから、びっくりしたぜー」
クラスのみんなが私の周りに集まってきて…それぞれの思いを喋ってくるのだけど…、
人見知りの激しい私は、みんなの言葉が頭の中でわーんわーんと響いて来て…目が回る~。
桃谷さんが割って入ってきて…。
「はいはーい、みんなそこまでだよ?美沙希ちゃんは、ちょっと疲れてただけだから、心配ないよー」
「そうなんだ…心配しちゃったよ」
「無理するなよ、青嶋!」
桃谷さんの一言で、みんなは安心したのか、自分の席に戻っていった…助かった…。
「ありがとう…汐里」
「ううん、美沙希ちゃんのためなら、どうってことないよ!いつでも私を頼ってね~」
桃谷さんと和解してから…すごく近くなった気がするんだけど…なんでだろう?
私は青嶋さんと違うのに…そんなに簡単に割り切れるのだろうか?不思議で仕方なかった。
兎に角、桃谷さんとは仲良くやっていけそうだから…それは問題ないんだけど…。
さっきから視線が気になる…怖くて目が合わせれないよ…。
自分の席で俯いていると、誰かが近づいてくる…青嶋さんかな…怒られちゃうよ…。
「青嶋…ちょっといいか?」
「え?…とっ俊樹!?あっ違う…碧川くん?」
まっまさか、俊樹から話しかけられるとは思ってなかったので、普通に呼んでしまった…。
咄嗟に言い直したものの…多分バレてるかもしれない…。
「言い直さなくていい、それは…いや、今はいいや、ちょっと来てくれよ」
「…うん、分かったよ」
何か…いつもと雰囲気が違う、俊樹の後をついて行く…どこに行くんだろう?
何も言わない俊樹の後を追いかけて、いつの間にか屋上に来ていた…。
「ここなら誰もいないだろう…それでだ、青嶋…いや、皆人なんだろう?」
「え!?どっどういうこと??」
いきなりで意味が分からなかった…何で私が皆人だと…。
全くの予想していなかった展開で、どうして良いか分からず、言葉を失っていると…。
「皆人と…いや違うか、青嶋と話をしたんだよ、お前が倒れて、いない間にな…」
「え!?青嶋さんが…」
青嶋さんは…俊樹と何を話したんだろう…うん、何となくだけど…想像がつく…。
多分あれかな…諦めたかな、説明するのを。
「ちなみになんだけど…どんな話をしたの?」
「ん?それはだな…」
ここから、俊樹の回想話が続く…。
『皆人!どうしたんだよ、今日は…何かおかしいぞ?』
『そうか?どこもおかしくないぞ?』
『喋り方にしろ、行動にしろ…全然、お前らしくないぞ!』
『幼馴染みだっけな…お前たち…めんどくせーなー』
『そうだよ!お前の知ってる赤坂ではない、俺は…青嶋だ!』
『はぁ!?何を言っているんだお前は…』
『あとは、俺の格好している赤坂と話をしろーじゃあな』
『おい!皆人、寝るんじゃねーよ、意味が分からないぞー』
「って、話があってだな…半信半疑で青嶋に話しかけているところだ」
やっぱり…説明を放棄して、私に押し付けてきたし…。
いつもこうだ…何でもかんでも私に降りかかってくるんだから…青嶋さんのバカ…。
「…うん、分かったよ、信じるか信じないかは俊樹に任せるよ、順を追って話するね」
「OK、頼むわ」
それから私は今朝からの出来事を振り返りながら…俊樹に話をする。
幼馴染みの彼だ、嘘を言ってもすぐバレるだろう、ここは信実を言うことにした。
それと信じてもらうには、過去話を言うことが早いと感じ、答え合わせをしていく…。
「こんな昔の話を皆人以外、知るはずもない…ましてや高校で出会った青嶋が知るはずがないな…」
「原因ははっきりしないけど、今の青嶋さんは私なんだよ…」
「信じがたい話だけど…話せば話すほど皆人と思える…うん、分かった、お前を信じるよ」
「ありがとう、俊樹」
いつも味方になってくれる俊樹が、私の話を信じてくれて…少し涙が出てきた。
秘密を共有できる頼もしい仲間はまた増えた、少し気持ちがほっとする。
笑顔で俊樹にお礼をすると…なぜか黙って私を見てくる…?
「何かお前…可愛いな」
「え!?え!?かっ可愛い??」
「いつもの青嶋を知っているだけに…なんだろう、その笑顔はヤバすぎるな…」
「かっ可愛いのは、青嶋さんであって、わっ私じゃないし!」
「私は皆人なんだよ?気持ち悪いこと…言わないでよ!!」
「…何だろう、この気持ちは…わからん」
「しっ知らないし!私行くから!」
悩む俊樹をほっておいて私は、教室へと戻る…私が可愛い!?そんな訳が…。
でも、可愛いと言われて嬉しかったのは…何なんだろう?
違う違う!私は男なんだから!そう自分に言い聞かせるのでした…。
久しぶりの投稿です。
のんびり書いていくつもりです、ご了承ください。