第04話 「保健室にて…」
『あなたは…いったい…誰なの?』
桃谷さんから言われた言葉が…頭の中で響き渡る…。
どうする、どうする…本当のことを言ってしまえば良いのだろうか…。
信じてもらえるかどうかわからない…こんなアニメのような話…誰が信じるのだろうか。
でも…僕は嘘を突き通せるほど、青嶋さんや桃谷さんのことを…全く理解していない。
どこかでボロが出てしまう…と言うか、僕は嘘が苦手だし…。
もう無理だ…そう考えた僕は、桃谷さんに真実を伝えることにした。
「汐里…ううん、桃谷さん、僕の…話を聞いてもらえる?」
「え!?…うん、分かったわ、美沙希ちゃん」
僕は、覚悟を決めて…今朝あったことを話し始める…。
「まず…僕は、青嶋さんじゃなくて…赤坂 皆人…です」
「え!?同じクラスの…赤坂…くん?」
桃谷さんは、とても信じられないといった顔で…唖然としている…。
普通、そういう反応をするよね…僕だって絶対、そうな反応をすると思う…。
「じゃ…じゃあ、美沙希ちゃんは!美沙希ちゃんはどこに行ったの!?」
「僕になっています…赤坂 皆人の姿に…」
「え…赤坂くんに…!?」
「うん…なぜ、そうなったのか…原因は、はっきりと分からないんだけど…」
「朝、学校へ行くのに僕は急いでて…前をよく確認していなかったんだ」
「…うん」
「そこに…わき道から突然、飛び出してきた…青嶋さんと激しくぶつかってしまって…」
「気が付いたら、お互いの身体が入れ替わっていたんだ…」
「え…そっそんなことって…あるの?」
僕だって未だに信じることが出来ない…普通はお互いぶつかって痛み分けで終わるはず…。
でも、現実は身体が入れ替わっている…そうとしか…説明が出来ないのだから…。
どういう理屈で身体が入れ替わったのかもわからないから…これ以上の説明が出来ないので…。
「僕だって…そう思いたいよ?でも…今は…僕なんだ、青嶋さんではなくてね」
「…」
それから…お互いが何の言葉も見つからずに、少しの間、沈黙の時間が続いた…。
こういう時…桃谷さんに、何を言えば良いのだろうか…幼馴染が別の人になりました!
そんな現実を叩きつけられて、相当なショックなはず…。
人見知りで友達の少ない僕には、慰めの言葉なんて出てくることはない…。
なんで僕は…いつもこうなんだろう…知らぬ間に、他人に迷惑をかけてしまう…。
あれ?そう言えば…僕はなぜ…保健室にいるんだろう?疑問に思い、桃谷さんに聞くことに。
「桃谷さん?ちょっと聞いて良い?」
「え!?…うん、良いんだけど…」
「ぞの前に!美沙希ちゃんの姿で、桃谷さんと呼ぶのはやめて!…いつものように汐里って呼んでよ」
「え!?はい!…じゃあ、汐里?聞きたいことがあるんだけど」
「うん、な~に、美沙希ちゃん?」
桃谷さんの機嫌は治ったようだ…桃谷さんて…青嶋さんに負けないほど可愛くて…、
表情もコロコロと変わって、すごく魅力的な女の子だ、クラスでも人気あるのは納得できる。
桃谷さんのような可愛い女の子に…近づけたら良いな…とって、違う違う!僕は…男だ!!
僕は、男らしくカッコいい男になりたい!そう思って生きてきたんだ…断じて違うから!
そんなこと思いながら、頭を何回も横に振ったりしていた…。
「なにしてるの?美沙希ちゃん…さっきから…変だよ?」
「あう!ごっごめんなさい…1人であれこれ考えちゃって」
「クスッ、なんか面白いね!美沙希ちゃんって…あれ?今は赤坂くん…だっけ??」
また自分の世界に入り込んでいた…恥ずかしいところを見せてしまった…。
今はそんなことで反省してる場合じゃない!話を進めないと…。
「話が逸れてごめんね…改めて聞きたいことなんだけど…」
「うん、な~に?」
「僕って、授業中に席を立ったはずが…いつの間にか、保健室に来ているんだけど…」
「もう!美沙希ちゃん、いきなり倒れるんだもん…私、心臓が止まるかと思ったわ!!」
「やっぱり、僕…倒れちゃったんだ…」
倒れたことは覚えてなくて…でも、桃谷さんの声だけは…はっきりと覚えていた。
そんなに心配かけちゃったんだ…申し訳ない気持ちでいっぱいだ…。
「私ね、美沙希ちゃんに声をかけることしか出来なくて…どうしたら良いか分からなくて…」
「そんな時に、赤坂くんがやってきて…美沙希ちゃんを抱き抱えて、保健室に連れてきてくれたんだ」
そうだったんだ…青嶋さんが僕を…介抱してくれたんだ…なんだかすごく嬉しかった。
すごく奇妙な出来事があって、そのおかげで…青嶋さんと話す機会が出来て…。
すごく心が満たされた気分でいたけど…桃谷さんの話は続く。
「美沙希ちゃんね、お姫様抱っこされてて、すごく羨ましかったな~私もしてほしい~♪」
「え!?」
また目立ってしまった…そのうえ、青嶋さんに…迷惑をかけてしまった…。
青嶋さんの身体なのに…大切に扱うことが出来なかった…。
僕は、ショックを受けて落ち込んでいると…桃谷さんの話はまだ続く…。
「それはそうと…美沙希ちゃん、身体は大丈夫なの?」
「あ!そうだった…あの、汐里?青嶋さんの身体なんだけど…生理が始まったって…」
「あ~それでね、うん、納得」
「そっそれでね…僕、女性の身体のこと…分からないから、どうすればいいのかな?」
「そっそれと…トイレの仕方とか…教えて欲しいなーと…」
「OK!私に任せて~♪美沙希ちゃんのためなら、何でも私に聞いてね」
まだふらつくものの、何とか身体を起こして、桃谷さんに支えてもらいながら、ベットから出る。
それから女子トイレに向かって…いざ入ろうとすると…何だか躊躇してしまう…。
「ほら、美沙希ちゃん?トイレの前で突っ立てると…変に思われるよ?慣れなきゃね~」
「うっうん…覚悟を決めなきゃ…」
いざ!覚悟を決めて、女子トイレの中に入る…いざ入ってみると、男子トイレとそう変わりがない。
小便器がないのと、個室トイレの数が多いだけだ…うん、気にしない、気にしない…。
個室トイレの中に入り、下着を下ろして便座に腰を掛ける…え!?何…これって血が!?
「きゃあああああ!!血がー血がー!!」
「美沙希ちゃん、落ち着いてー!大丈夫だから」
「汐里ー助けてよー!グスッ…」
何だか、今日は、色々とありすぎて涙が溢れ出してきた…全然、涙が止まらない…。
トイレの鍵を開けたら、桃谷さんがトイレの中に入ってくる。
「大丈夫だから…ね?泣かないでね?美沙希ちゃん」と言いながら…頭を撫でてくれた…。
それでも涙が止まらなくて…僕が泣き止むまで…桃谷さんは慰めてくれたのでした…。
活動報告にも書きましたが、誠に勝手ながら、連載はしばらくお休みとさせてもらいます。
本当にごめんなさい。