第03話 「なれない身体に戸惑って…」
午前中の授業が終わり、お昼休みとなった…それぞれ昼食をとるために、
学食に行く人、教室で食事をとる人、違う場所で食事をとる人…教室から人が散っていく…。
あれからもどうすればいいのか…元に戻れるのかどうか、そんなことばかり考えている…。
当然、授業何て身に入るわけもなく、ただボォーと聞いていただけだった…。
お昼休みになってもお腹が空くわけもなく…ただ席に座っていると…桃谷さんが近づいてきた。
「どうしたの?美沙希ちゃん、ご飯食べようよ~」
「あの…何かお腹が空かなくて…」
「え!?本当に大丈夫?美沙希ちゃんがご飯を食べないとか…一大事だよ!保健室に行こうよ!」
「ええっ!?だっ大丈夫…だから」
「そんなことない!朝から変だよ?何があったの??」
「そっそれは…その…」
説明しても理解はされないだろうし…どうしたら良いんだろう…。
肝心な青嶋さんは、いつの間にか教室からいなくなっているし…。
どうしたらいいか分からずに、顔を下に向けてモゴモゴしていると…。
「もう!美沙希ちゃんらしくないぞ?いつもみたいに…はっきりと言ってよ!!」
「ひゃい!?」
突然に迫られたものだから…変な声が出てしまった…恥ずかしいよ…。
そんな僕の姿を見た桃谷さんが、急に笑い出して…。
「ひゃい…だって!何、可愛い声を出してるの?今日の美沙希ちゃん、可愛いぞ~」
「…かっ可愛いだなんて…」
そう言いながら、僕の頭をなでなでしてくる桃谷さん…。
可愛いのは青嶋さんであって…僕じゃないのに…でも何だか嬉しかった。
しかし…どう反応して良いか分からずに、されるがままの僕…いったい何が起きているの!?
「あの…桃谷さん」
「桃谷…さん!?」
「…違った、汐里さん?」
「汐里…さん!?」
「あうっ!…じゃあ…汐里?」
「な~に、美沙希ちゃん?」
桃谷さんの笑顔がなんか怖い…目が笑ってないよ…。
これは絶対に疑われているよ…どうしよう、何も思い浮かばないよ…。
何も出来ずにウジウジしていると…いつの間にか青嶋さんか近づいて来て…。
「青嶋!ちょっと良いか?」
「え!?…うん」
「ごめんね、汐里…ちょっと外すよ」
「…うん、また後でね、美沙希ちゃん」
桃谷さんに断りを入れて、席を離れた…青嶋さんの後を追いかけるように…教室を出た。
何にせよ、青嶋さんに助けられた…あのままだと、どうなっていたか…。
休憩中に来た、階段の前に来て、青嶋さんが振り返る。
「なにやってんだよ、赤坂!汐里の相手をちゃんとしてくれよな!!」
「え!?そっそんなことを言われても…青嶋さんのこと知らないし、桃谷さんのことも…」
「ちっ!ホントに面倒なことになったな…」
青嶋さんが、すごくめんどくさそうにしている…これは元に戻れるチャンスかもしれない!
僕は、すぐに相談してみることに…。
「でしょ?だから…元に戻る方法を考えないと…いけないと思うんだけど…。」
「いや…男のままで良いんだけどさ~あたしは」
「え!?僕は困るよ…これからの生活とか他人の生活になるんだよ?」
「ん~何とかなるんじゃない?慣れればさー」
「また…そんなことを言う…」
また…根拠のない、テキトーなことを言ってくる…青嶋さんってこういう人なんだ…。
でも、こういったところがすごく男らしく、カッコいい…僕の憧れだったわけで…。
僕はというと…女々しい性格で…可愛いものが好きで…全然、男らしくなかった。
そのせいで…人との会話が上手く出来ず、友達が少ない原因でもあった。
俊樹だけが…小さい時からの理解者で、唯一の親友である。
あれこれと考えていると、時間が経つのが早い…腕時計を確認してみると、
お昼休みの終了の時間に迫っていた。次の授業の準備をしないと…。
「あっヤバイ…お昼休みが終わっちゃう…次の授業の準備をしないと…」
「ちっ仕方ないなー赤坂!放課後、ちょっと話そうぜ」
「うん、分かったよ、じゃあ放課後に…」
「おう」
不安は拭い切れないけど…兎に角話し合って、みんなにバレないようにしないと…。
元の身体に戻ったときに困るんだよね…特に僕が…青嶋さん…目立ちすぎるからね…。
胃は痛いし、生理の所為で、体はだるいしお腹の方が痛む…ホント最悪だよ…。
そんなこと思いながら教室に戻った。
それから授業になったんだけど…なんか調子が悪くなってきた…。
頭はガンガンと痛いし、眩暈もする…ずっとお腹は痛いし…まともに授業を聞くことが出来ない…。
授業をしている先生にこの事を告げないと…そう思い、席を立とうとすると…意識が…。
僕はそのまま倒れたのでした…。
「美沙希ちゃん!美沙希ちゃん、大丈夫??」
意識が朦朧とする中…桃谷さんが…僕の身体をゆすりながら叫んでいるのが聞こえる…。
僕は倒れちゃったのか…そこで、僕の意識が途絶えた…。
僕は…どれだけ気を失っていたんだろう…意識が少しずつ戻ってくる…。
うっすらと目を開けると…白い天井が見える、どこだろう、ここは…。
いつの間にかベットに寝かされていて、布団をかけられていた…。
「…こっここは…僕は…どうなったの?」
「あっ!?美沙希ちゃん、目が覚めた?…良かった…ねぇ、身体は大丈夫?」
「あっ桃谷さん…僕は…大丈夫だよ…」
「えっ!?…桃谷…さん?…僕??」
しまった!僕は意識がはっきりしていなかったから…いつもの僕の感じで喋ってしまった…。
桃谷さんの顔はすごく唖然とした表情になっている…これはヤバいことになる!早く訂正しないと!!
「あっ!ちっ違う、汐里…大丈夫だよ」
「…ねぇ、美沙希ちゃん?こんなこと言う…私はすごく変だと思うけど…聞いて良い?」
「え!?何を…?」
「あなたは…いったい…誰なの?…本当に、美沙希ちゃん…なの??」
「そっそれは…」
すごく…まずいことになってしまった…もう、隠しきれないのかな…。
僕は…いったいどうすれば…いいんだよー!それ以上の言葉が思いつかなかった…。




