第22話 「今の生活に慣れてきて…」
昨晩は、青嶋さんのお母さんと楽しい団欒を過ごすことが出来た…。
お父さんの方は、帰りが遅かったけど…私の作ったカレーを食べていたみたい。
うん、作った甲斐があったよ~誰かのために…料理するのは、ホント楽しいからね。
それから、お風呂に入り、パジャマを着てベットに入る…。
今日も色々なことがあったな…青嶋さんと身体を入れ替わってからの、私の生活は一変した。
特に変化もない、平凡な生活は無くなり、毎日、何かに巻き込まれているような気がするよ…。
俊樹とのことを考えてしまう…奪われてしまった、私のファーストキス…。
俊樹の唇と軽く重なった、自分の唇をそっと触れてみる…。
…何だろう、キスされた実感があまりない…俊樹だから何だろうか…現実味がない。
でも、思い出すと…段々と恥ずかしくなってくる…明日から、どうすればいいんだろうか…。
相手を意識するなって言うのが無理だから…余計に意識してしまうし…。
あーやだやだ…余計、ドツボにはまるよ…これは…寝てしまおう…。
私はそっと目を閉じることにした…良い夢が見られたらいいな…。
青嶋さんと身体が入れ替わって、数日が過ぎていた…。
一向にも身体が、元に戻る気配がない…慣れてきた身支度…、
もう生活の一部となってきている…このままではいけない…。
青嶋さんと話をして、何とか元に戻る方法を見つけないと!
そんなことを思いながらも、いつもの様に、朝食とお弁当作りをしている私…。
青嶋さんのお父さんとお母さんが、私の朝食をまだか?と待っているんですけど…。
「今朝も美味しいものが、食べれて幸せだな…」
「そうね、こんなにも幸せな時が来るなんてね…」
「あはは…大げさだよ、パパもママも」
私の作った朝食を、2人とも涙目になりながら、堪能している…。
どれだけ、青嶋さんは愛されていたのか、良く分かる瞬間だった…。
「料理もそうだが、美沙希がこんなにも女の子らしくなってくれたのが、一番に嬉しいことだな」
「そうね~このまま男の子のようになっていくのか…とても心配だったからね」
「そっ…そうなんだね…あはは…」
酷い言われ様であるのだけど…まぁ、うん…青嶋さんだとそう思っちゃうよね…。
言葉使い、行動や仕草など…どれをとっても女の子らしさなんてなかった…。
男らしくカッコいい、青嶋さんに憧れている訳だからね…私は。
そんな私が…女の子らしく振舞っている…あれ!?どういうことですか??
おかしい…男として行動していたはずなのに…なぜ!?
それよりも…早くお弁当を作らないと、学校に遅刻しちゃうな…。
「あら?また…彼氏のお弁当を作っているのね~青春ね~♪」
「なに!?パパは許しませんぞ?美沙希には、彼氏は早すぎる!」
「だ~か~ら!私には、彼氏なんていませんから!これは友達の分だし…」
青嶋さんのお母さんじは、ニヤニヤ顔…お父さんは、怒り顔…。
朝から、すごく疲れるんですけど…変に誤解しないでほしいよ…。
でも、俊樹に作っていることは隠さないと…特に、青嶋さんのお父さんには!
「じゃあ、パパの分も作ってくれよ!それで許す!!」
「あ!じゃあ~ママの分もよろしくね~♪」
「ううぅ…分かったよ…明日からで良いかな?」
朝からまた忙しくなるけど…どうせ作るのだから、数が増えても…そんなに手間は変わらないし。
まぁいっか!誰かのために作るのは、苦にはならないから…むしろ楽しいし!
朝からドタバタな出来事があったけど、支度を終えて学校へと向かう…。
途中で俊樹に出会った…あれ?こんな時間に珍しいな…。
「おう、おはよう、皆人」
「うん、おはよう、俊樹…こんな時間に珍しいね?朝練はないの??」
「お前のことが心配でな…お前の登校時間に合わすことにした」
「えっ!?何で??」
あんなに好きなバスケを休んでまで、私の為にって…どういうこと!?
「何を言ってるんだよ?お前は…この間、危なかっただろう?」
ニャンコ事件ですか…あの件は、思い出したくないです…はい。
「皆人…お前は、危機感がなさすぎるんだよ…少しは自覚しろよ?」
「どっどういうことなの!?自覚しろって…」
「今まで、男だったから仕方ないがな…兎に角、男に隙を見せすぎだ」
「そっそうかな…私は特に何もしてないけど?」
「意識の問題だよ、相手に隙を見せすぎると…そこを付け込まれるからな」
「…こういう風にだ!」
「えっ!?ちょっと、俊樹!」
そう言って…私を壁際まで追い込んで…壁に手をつき、
所謂『壁ドン』ってやつをされてしまった…ヤバイ!顔が近い!近い!
俊樹は、何も言わずに…じーっと私の顔を見つめる…そんなに見ないでほしい…、
すごく恥ずかしいのだけど!我慢できず、目を逸らしてしまった。
その瞬間、俊樹の唇が近づいてきて…私は、またキスをされてしまった!?
「んっ!?」
「…なっ?こうなるだろう?」
「むーこうなるじゃないよ!また、キスした…」
「お前の恥ずかしがる顔が、可愛くてな…つい」
また、私のことを『可愛い』と言う…その言葉に耐性の無いので、また照れてしまう…。
これじゃ、俊樹の思うつぼだ…そう思うのだけど…素直に嬉しい部分もある…。
それじゃ悔しいから…負けず嫌いな私は…。
「もう…俊樹の…バカ」
こう言うのが、私の精一杯だった…また恥ずかしがると喜ぶ彼が、ムカつくんだけどね…。
そんなやり取りをしながら、彼と一緒に学校へと向かう…。
校舎に入る前には、私と別行動しないと…学校中で噂になる…。
「学校の中に入ったら、別で登校しようよ」
「んっ!?何でだ?」
「俊樹は嫌じゃないの?私と一緒に居ると…学校内で噂になっちゃうよ?」
「別に?その方がお前にとっても、俺にとっても好都合だからな」
「悪い虫が寄り付かなくて、その方が安全だし」
むむむ…何!?このグイグイ来る、俊樹のキャラは…いつもの彼じゃない…。
いつもクールで、私と同じ性格の、周りに目立ちたくないはずなのに…。
それ以上、何も言えなくて…、一緒に教室に入ると…案の定、クラスで噂になるのは、
言うまでもなかった…ああ…目立ちたくないのに~。




