第19話 「自分らしく…そんな日常を目指して」
昨日は、すごく疲れていたのか…グッスリと眠ることが出来た…。
俊樹からの突然の告白で…私の心は、すごくかき乱されてしまっていた…。
小さい頃から、頼りになる彼…私が、いつも誰かに虐められていると…すぐ助けに来てくれる。
同じ歳なのに、お兄ちゃんのような気がして…ずっと、背中を追いかけていた気がするな~。
そんな彼にも、憧れを抱いていた…人を守れる男になりたいと…。
でも、私って…いつも誰かに、守られてばかりな気がするよ…。
あの頃から…全然、成長してないわけね…何をやってきたんだろう、私って…。
ダメダメ…朝から、ネガティブでは…今日1日、ずっと引きずっちゃうから。
そういう時は、家事に限る!朝食とお昼のお弁当を作ろうかな?
そう思い、制服に着替えて、キッチンへと向かった…。
今日は、青島さんのお母さんがコーヒーを飲みながら、テレビを見ていた…。
「おはよう、美沙希」
「おはようございます、ママ…」
相変わらず、青島さんには興味がないのか?挨拶をしたら、またテレビの方に目を移していた。
これ以上、会話は望めないと思ったので、朝食とお弁当の準備をすることにした。
そうだ、俊樹の分のお弁当も用意しようかな?唐揚げが好きだったよね、確か…。
昨日のお詫びに、俊樹のお弁当を作ることにした。
誰かのための何か出来ることは、私にとってすごく嬉しいことで、
料理だってそうだ、誰かに美味しく食べて欲しい…、
そんなことを考えながら、料理を作っていると…。
「フンフン~♪フフ、フン~♪…」
自然と鼻歌を、歌い出す自分がいる…楽しくて、つい~癖、なんだよね~。
そんな調子で、作業を進めていると…。
「え!?何、美沙希!?あなた…いつの間に、料理が出来るようになったの?」
「はっはい!?高校生に…なったから…少しずつ、料理を練習してたの…」
いきなり、青嶋さんのお母さんから声をかけられたから…声が裏返ってしまった…。
あ~びっくりしたよ…完全に、自分の世界へ入り込んでいたよ…。
「ふ~ん、ようやく、あなたも女性としての自覚を持ってきたってことね…」
「そっそうかな…」
そう言いながら、私のことをジロジロ見てくるんですけど…。
これは…ヤバい!?私が青嶋さんじゃないってことを…バレてしまったのかな…どうしよう…。
「美沙希、あなた…もしかして…」
「……」
私は、覚悟を決めた…青嶋さんには、申し訳ないけど…。
ちゃんと、青島さんを演じきれなかった…私が悪いのです…。
「恋をしているわね!」
「ふぇ!?」
まさか…思ってもいない言葉を耳にして…変な声が出てしまった…。
しかも、してやったりと…すごくドヤ顔している、青嶋さんのお母さん…何なの、いったい?
「学生時代は…もう返ってこないわ~良いわね~青春時代…懐かしいわね…」
「…あの~ママ?」
「お弁当も…1つ余分に、作っているのもそうね!いつの間に、彼氏を作ったのよ~」
「…聞いてよ~ママ…」
いくら話しかけても…相手にされず…自分の世界に浸っている、青嶋さんのお母さん…。
青嶋さんの強引さは、この人の遺伝なのか!?…相手するのも疲れてきたよ…。
「良い高校生活をしなさいね!私は、仕事に行ってくるから~ラン~ララン~♪」
結局、最後まで私の話を聞かずに、さっさと家を出て行ってしまった…。
何!?この虚しさは?…私はどっと疲れてしまった…。
これから、学校へ行かないといけないと言うのに…。
でも、青嶋さんのお父さんにしろ、お母さんにしろ、少しはコミュニケーション…取れたかな?
少しでも…前進していたら良いな~うん!ガンバロー!!
私は朝食を済ませ、学校へ行くために、家を出ることにした…戸締りはしっかりと…っと!
学校へ向かう途中で、俊樹の背中を発見した…どう話かけようか迷ったけど…、
私らしくないな~と思い、普通に駆け寄り、声かけることに。
「おはよう、俊樹」
「おう、おはよう、皆人」
お互い、ぎこちないながらも挨拶は出来た…でも、意識してしまって、会話が続かない…。
俊樹との関係が、こんな事で終わってしまうのは、嫌だ…昨日のことは、キチンと謝ろう。
「…あのね、俊樹…昨日は、ホント…ごめん」
「ああ、気にするな…俺も悪かった…皆人、ごめんな」
「ううん…ビックリしただけだから」
「そうか…まぁ、この話はまた後でしようぜ、周りから変に思われるしな」
「うん…そうだね」
それからは、いつも通りの2人に戻って、普通に雑談をすることが出来た。
俊樹といると…安心するから、2人の関係が、いつまでも続けばいいな~と思う。
あ~お弁当を作ってきてたんだった…みんなのいないところに俊樹を呼ぶ。
「俊樹、ちょっと…こっちに来て」
「ん!?何だ?」
「はい…これ」
「…これは?」
「昨日のお詫び、お弁当を作ってきたんだ、お昼に食べて」
「ほう~それは、ありがたくいただくわ、サンキュー、皆人!」
嬉しそうに、私から、お弁当箱を受け取る…うん、渡せてよかったよ!
味も俊樹好みな味付けにしているから、気に入ってくれると良いな~。
教室に着くと…桃谷さんが慌てて、私の元に飛んできた!
「美沙希ちゃん!昨日は、大丈夫だった!?私、心配で心配で…」
「あっうん、ごめんね…昨日は、挨拶もしないで帰って…」
「ううん、そんなことは気にしないで!…それよりも、碧川くんと何かあったの?」
「そっそれは…うん、話せるようになったら、相談するね」
「そっか…うん、分かった!無理しないでね?美沙希ちゃん」
そう言うと、嬉しそうに自分の席に戻っていった…。
桃谷さん…ごめんね、今は話せないから…。
一息ついたところで、青嶋さんがやってきて…。
「…大方、あいつになんか言われて、悩んでいるんだろ?赤坂」
「えっ!?…そう…なんだけど」
「お前の好きなようにしろよ…俺は、何も言わないから」
青嶋さんは…それで良いの?自分の身体なんだよ??
私に、好き勝手使われて…何も言うことが無いの??
「お前は、納得をしてないだろうが…俺も、お前の身体を好き勝手に使っているからな」
「俺の身体をどう使おうが、文句は言えないだろう?」
男性と女性の身体では、そうはいかないと思うのだけど…。
青嶋さんと意見が合わない以上、ここで言い争っても、先に進まない気がする…。
でも…このままじゃいけない気がする。
「青嶋さんが、そう思っていても…私は、諦めてませんから…」
「元の身体に戻ることは!」
「…そっか、まぁ好きにしな」
そう言って、青嶋さんは席に戻っていった…。
そうだよ…私が諦めない限り、元の身体に戻ると気持ちを忘れなければいいんだよ!
俊樹との今までの関係もあるけど…恋人の関係になるわけにもいかない。
私は、気持ちを引き締めることにした、この生活に慣れる訳にもいかないのだから。
それから授業が始まり、いつもの学校生活が始まるのでした…。