第17話 「憧れの人と、幼馴染と…」
バスケの部活終わりに、俊樹から話があると言うことで、
体育館裏に呼ばれて、待つこと数分…その場所に、俊樹がやってきて…出てきた言葉が。
「…俺、お前のことが…好きなんだ」
「…えっ!?」
一瞬、俊樹の言葉の意味が、理解できなかった…「好き」って誰が…誰を??
でも…時間が経てば経つほど…言葉の意味が理解出来てきて…。
「えっ!?えっ!?ちょっと待って!…それって…どういうことなの??」
「…そのまんまの意味なんだが…もう1度、聞きたいか?」
「ダメ!…恥ずかしいから、もういいよ!」
今でも十分、パニック状態なのに…これ以上、頭の中を混乱させたくない…。
でも、どういうことだろう…私たちは、幼馴染で親友…だったはず。
ましてや男同士である訳だから、恋に発展することななんて…あり得ないと思っていた…。
むしろ…そんなことを考えたことは、1度もなかったよ…。
「…私、俊樹のことを幼馴染で、親友と思っているし…急にそんなことを言われても…困るよ」
「分かってる…俺だって、ずっとそう思っていたよ…」
「そこに、お前が青嶋と身体が入れ替わって…最初はな?お前の身体を元に戻そうと思っていたさ」
「でも、お前と接しているうちに…昔から違和感を感じていたことが…確信したんだ」
「お前は…女性じゃないかって…このまま、青嶋の身体で良いんじゃないかって…」
私は、すごくショックだった…1番の理解者であると思っていた、俊樹から…、
そんな言葉が出るとは思ってもみなかったのだから…。
ましてや、昔から『男らしくない』とイジメられてきた、過去があることを知っての話だから…。
涙が出てきた…もう…涙が止まらない。
「…俊樹から、そんな言葉が出るなんて…思ってもみなかったよ…」
「ちっ違うんだ、皆人!最後まで、俺の話を聞いてくれ!!」
「聞きたくない!もう、俊樹のことなんか、知らないよー!!」
私は、そのまま俊樹を置いて、走り出した…後ろで呼び止める声がするけど、
そんなのどうだって良い…この場から逃げ出したかった…。
「あっ!美沙希ちゃん、どうしたの!?」
桃谷さんと青嶋さんが、私を待っていたのか?校門の外にいて、走ってくる私を見ている…。
今は誰とも話したくない…特に青嶋さんには…こんな姿を見られたくない…。
そのまま、2人を無視して通り過ぎていき…。
「…ごめんなさい、桃谷さん」
泣きながら、ポツリと小さく…謝罪するのでした…。
「どっどうしたんだろ…美沙希ちゃん、翠川くんと何かあったのかな?」
「う~ん…もしかして、あれか?あいつ…告白したとか…」
「あっ!そっか~あの2人、幼馴染みだもんね…でも、大丈夫かな…」
「何とかなるんじゃね?あいつらの問題だ、他人がとやかく言うことじゃない」
「でも、赤坂くんって…自分のことは鈍感なくせに、他の人のことだと…すごいよね?」
「うるさいな~さっさと帰るぞ、汐里~」
「はいは~い、うふふ~♪」
「何だよ」
「照れてる赤坂くん…可愛いなって~♪」
「うるさい!俺は、カッコイイって言われる方が良いんだよ、可愛いって言うな」
「は~い、了解しました~♪」
泣きながら、家に帰ってきたと思ったら…まさか!赤坂の家の方に来てしまった…。
俊樹の言葉が、正常な判断が出来ず、いつもの帰り道を歩いてきたようだ…。
『しまった…家族の誰かに会ったら、どう言い訳すれば…』
『とにかく、ここから離れよう…』
そう思って、歩き出したけど…母さんに出会ってしまった…。
「あら、うちの子の学校の方かしら?うちの皆人に、何か用事?」
「えっ…えっとですね…」
どうしよう…母さんに会うとは思ってなかったから、何を話すればいいのだろう…。
どうして良いか…戸惑っていると。
「あなた…さっきまで、泣いていたのね…まさか!皆人が、あなたを泣かせたの?」
「こっこれは!違うんです…赤坂くんは…何も悪くありません」
「あら~そう?それなら良かったわ~紹介が遅れたわね、赤坂 皆人の母です」
「こんな可愛い子が、皆人のお友達なんてね…高校生になって、あの子もやるようになったわね~」
「あっあの、赤坂くんのクラスメートで…青嶋 美沙希…って、言います。」
母さんの前で、自己紹介をするなんて…思ってもみなかったよ…。
とっとにかく、怪しまれないように…この場から離れないと!
「赤坂くんは、いない…ようなので…私は、ここで…」
「あら!せっかく来たのだから、上がって、待ってたらどうかしら?」
「あっあの…急ぎの用事でも…ありませんので…明日、学校でも良いです」
母さん…見ず知らずの人を、簡単に家に上げないでほしいよ…。
家にあげられて、青嶋さんと鉢合わせたら…何を言われるか…それだけは避けたい!
「ホントに良いの?家まで来たのだから、上がって行けば良いのに…」
「ホントに大丈夫です!…私はこれで、帰ります…。」
これ以上、ここに居たら…面倒なことしか起こらないよ…。
でも、元気な母さんの顔を見られたのは…良かったかな~。
母さんに一礼して、帰ろうとすると…。
「お母さん、ただいま~」
「あら、華凛、おかえりなさい~今日は、早かったわね~」
「今日は、部活が無かったからだよ?そう朝に言ってたおいたのに~」
私の妹の、赤坂 華凛だ…中学に上がってから、どうやら…嫌われたのかな?
すごく無下に扱われてたんだよね…思春期は、難しいね…。
でも、華凛も元気そうでよかったよ!じゃあ帰るかな…そう思い、離れようとすると…。
「それより…母さん、あの人は、誰?」
「あ~、皆人のお友達の青嶋さんよ、とても可愛らしい子だよね~」
「むむむ~」
すごく難しそうな顔をして、華凛が…私に近づいてくる!?
そして目の前に来て、私にしか聞こえない声で…。
「ちょっとあんた…私のお兄ちゃんに、近づかないでくれる?」
「お母さんの前だから、これだけで済ませてあげる…良い?お兄ちゃんに近づくな!」
「えっ…はい」
「よし!」
私の返事を聞いて、華凛は、気分を良くしたのか…笑顔に変わって…。
「さようなら~青嶋さん~」
「あっはい…さようなら…」
そう言って、華凛は、家に入っていった…母さんも私に一礼をして、家に入っていった…。
えっ…ちょっと待って!?華凛って、私のこと…嫌いだったはずでは??
俊樹のことでも、頭がいっぱいなのに…華凛まで…意味が分からないよ…。
新たな問題を抱えながら…青嶋家に戻るのでした…胃が痛いよ…。