第15話 「すれ違う想い…交わらない気持ち…」
嫌な体育の授業で、ハプニングがあり、倒れる私…。
ここのところ全然ついてないよ…不幸が、余計に酷くなったかも…。
男子の時でも、不幸が1つ始まると…何かと続いちゃうんだよね…。
「はぁ~…」
深いため息をつく…今日の授業も終わり、放課後となった。
今日こそは、青嶋さんと一緒に、元の身体に戻る方法を模索しないと!
それよりも…私が教室に戻ったときは、すごいことになってた…。
「青嶋さん、大丈夫!?ケガとかはないの?」
「青嶋、ホントに大丈夫か?無理すんじゃないぞ」
「うっうん、みんな、ありがとう…心配してくれて…大丈夫だから…」
クラスのみんなに、とても心配されていたようだ…倒れ方が普通じゃなかったしね…。
目立ちたくないのに…目立ってしまっている…反省しなきゃ。
「何やってんだよ、お前はアホなのか?ボールを避けれないとか…あり得ないだろう?」
そう怒ってくる青嶋さん…青嶋さんのプレイに見惚れてました…って、
そんなことが言える訳もなく…反論ができない私…。
落ち込み、下を向く私に…。
「まぁそんなこと言うなよ、皆人」
「青島も体調が悪かったんだろうし…大事に至らなくて、良かったじゃないか」
「そっそうだけどよ…」
なんだかんだ、私をかばってくれる俊樹…小さく「ありがとう…」というのが、精一杯だった…。
「気にすんな」って小さく答える俊樹…ほんとイケメンです!
「それよりも…皆人?今日の体育で思ったんだが、お前…バスケ部に入らないか?」
「ん!?…バスケ部か…どっちにしろ、身体も鍛えられるし…まぁいっか」
「いいぜ!バスケ部に入ってやる」
「おう!ありがとうな、頑張ろうぜ!」
「おう!」
何か2人で盛り上がってるんですけど…でも、青島さんのあのプレイを見ていれば
すぐにバスケ部のレギュラーにはなれそうな気がするよ…運動神経は、すごくいいんだもんね…。
意気投合した2人は、部活のために体育館へと向かっていた…あれ?元の身体に戻る話は…?
「…青嶋さん、放課後、元の身体に戻る方法を探すって話は…どうなったんですか?」
「ん!?そんな約束したっけ?俺、今から部活に行くんだけど」
「そっそんな…」
「俺は…元の身体に戻る気はないんだ、悪いな赤坂、じゃあな」
私にとって…絶望的な発言をされて、その場で何も出来なかった…。
そのやり取りを聞いていた俊樹が…私に語り掛けてくる…。
「皆人、部活が終わったら…お前に話があるんだけど、時間あるか?」
「えっ!?…うん、良いよ」
「時間あるなら、部活の練習を見て行けよ?部のみんなが喜ぶから」
「…何それ?暇だし、別に良いけど…」
青嶋さんが来るのが良いわけで…私が行くことに…何が良いのだろう…。
それよりも…先程の青嶋さんの言葉が…頭から離れない…。
青嶋さんの考えることが理解できない…元の身体に戻りたくない…とはどういうことなのか…。
「大丈夫?美沙希ちゃん…」
「汐里…うん、少し考え事をしてただけ」
「赤坂くんは、元の身体に戻りたくない…って?」
「…うん、私には…その気持ちが分からなくて…」
私の真剣な顔を見て、少し悩みながら…桃谷さんがボソッと喋り出した…。
「美沙希ちゃんね?あっ今の美沙希ちゃんじゃなくて、赤坂くんのほうね~」
「小さいころから、男の子ぽくって、男子と混ざって遊んでたんだ」
「そんな彼女と一緒に居たくて、私も遊んでたんだけど…」
「やっぱり女の子だと…身体の限界があってね?思春期になると男の子との差が出てきちゃって」
「身体つきも変わってくるじゃない?そうなると男子とは、疎遠になっちゃうし…」
「かと言って、今更…女子とは仲良く出来なくてね…美沙希ちゃん、クラスで浮いちゃったの」
「今、男子になれて…すごく嬉しかったじゃないのかな~?」
「あんなに楽しそうな美沙希ちゃん…初めて見たし~」
「…あっでも、今の美沙希ちゃんにとっては、良くないことだよね…」
「元の身体に戻りたいわけだし…」
「…そっそれは」
桃谷さんから、青嶋さんの事情を聴いて、さっきの言葉について…怒る気にもなれなかった…。
私は、この先どうしたいんだろう…今の青嶋さんの状態を見て、昔話を聞いて…、
すぐにでも、元の身体に戻りたいと…言えるのだろか…私には、分からないよ…。
「私がね?こんなことを言うのもおかしいと思う…けど、もう少しだけ、様子を見てくれないかな~」
「そのうち飽きて、元の身体に戻りたい!って言ってくるかもしれないしね~」
「…うう、そんな簡単に割り切れないけど…分かった、様子を見てみる…」
「ありがとう~美沙希ちゃん!」
そう言って、桃谷さんが飛びついてきた…ううぅ、そんなお願いは卑怯だよ…。
すごく嬉しそうに抱き着いてくる桃谷さん…、まぁみんなが楽しそうなら…別にいいのかな…。
いつまでも…このままとは行かないだろうし…多分。
「今の美沙希ちゃん…と~っても可愛いから、元に戻ってほしくないんだよね~♪」
「へっ!?私が…可愛い??」
「ほら~そうやって照れる美沙希ちゃん、可愛いな~♪」
そう言って、すぐさまスマホを構えて…写真をパチリ!
だ~か~ら~すぐ、写真を撮るな~!!
「む~すぐそうやって、写真を撮るの…やめてくれる?」
「お!?拗ねた、美沙希ちゃん…シャッターチャンス~♪」
また撮られた…もう…このままじゃ、ずっと写真を撮られちゃうよ…。
そう思うと、おかしくなってきて…笑いだす。
桃谷さんには…敵わないや…いつも私が悩んでいると、そうやって和ませてくれるのだから…。
「うん、良い笑顔だよ~美沙希ちゃん~♪」
「もう…汐里には、敵わないよ~」
「じゃあ、行こう?バスケ部の練習を見に行くんでしょ?」
「うん!行こう~」
頭の中にあったモヤモヤが、晴れて言った気がするよ…。
ありがとう、桃谷さん…恥ずかしくて…そう言えない私を許してください。
そんなことを思いながら、体育館に向かうのでした…。