第14話 「再度、保健室行きな私…」
私の思いを余所に…体育の授業が始まった…。
男子はバスケットボール、女子はバレーボール…私の苦手な球技。
チームのみんなは、私が青嶋さんだと思っていて、もう勝利を確信している…。
「…ううっ、もうヤダ…帰りたいよ…」
「ほらほら~美沙希ちゃん、頑張ろうね?」
桃谷さんが励ましてくれる…でも、私にどうしろと!?
運動オンチの私に…どう勝利に導いて行けと…おっしゃるのですか??
そんな心の叫びは無視されて…試合開始のホイッスルが鳴り響く…とにかく、頑張るしかない!
相手チームからのサーブ…あれ!?私を狙って打ってこない…。
…あっそうか!青嶋さんだから…狙いをわざと外してるのかな!?
これは…ラッキーかもしれない、試合中…ボールを触らなければいいのだから。
でも…桃谷さんが狙われている…桃谷さんも運動が苦手ってそう言ってたはず…。
私が助けなきゃ!そう思って、桃谷さんのカバーに向かう。
その瞬間、足がもつれて…そのままの勢いで倒れてしまった!
「あっ…ひゃん!!」
バーンー!!っと、私が倒れ込む音は、体育館中に響き渡る…いたたた…。
すぐさま、近づく桃谷さん…うわ…カッコ悪いところを見せちゃったよ…恥ずかしい!
「大丈夫!?美沙希ちゃん」
「うっうん、ごめんね汐里…カッコ悪い所…見せちゃった」
「青嶋さん、大丈夫!?」
体育の先生も近づいて来て、目立ちたくないのに…余計に目立ってしまった。
「大事を取って、休むように…」と先生に言われたので、私はコートを出た。
コート外で三角座りをして、桃谷さんの試合を眺める…ああ、そう簡単に上手くいかないよね…。
ふと、男子側のコートで拍手喝采が聞こえてきたので、そちらに目を移すと…。
「すごいじゃないか!?赤坂!連続ゴールだー!!」
「皆人、やったな!」
「おう、次も任せておけ!」
そう言って、青嶋さんがボールを取り、ドリブルで攻めていく…。
連続ゴールを決められたのもあって、相手チームは、2人でのマークで進路をふさぐ…。
その瞬間、俊樹にパスを出す、完全ノーマークだっので、そのままシュート…。
ゴールリングにボールが吸い込まれていく…すごい…息の合ったコンビプレイだった。
「…すごい…カッコいいな、青嶋さん…」
そんな青嶋さんのプレイを見て、感動をしていた…ちなみに俊樹はバスケ部なので、
上手くて当然なのだけど…青嶋さんはバスケは素人なのにすごいな…。
女子の時からも、運動センスが抜群だったし、そんな姿を見て憧れてたんだよね…。
それからも試合が終わるまで、青嶋さんと俊樹のコンビプレイがとても見ごたえがあって
女子の試合をそっちのけで見ていた…それがまずかったのだ…。
桃谷さんの声が聞こえたと思ったら…。
「美沙希ちゃん!危ない、避けてー!!」
「…へ!?」
運悪く、相手のスパイクが大きく外れて、座っている私の方にボールが飛んでくる…。
気付いたころには、私の意識が飛んでいた…。
どれくらい意識を失っていたんだろう…気が付いて目を開けると…そこは白い天井だった。
あれ?ここは見覚えがありますよ…うん、たぶん保健室で…ベットに横になってますね…はい。
誰かがいる気配がして…そちらに目を向けると…桃谷さんが近くに座っていた…。
「あ!美沙希ちゃん、気が付いた?良かった…大丈夫?頭は痛くない??」
「…汐里、ごめんね、また倒れちゃったんだね…」
「もう…ビックリしたんだからね!」
「ボールが美沙希ちゃんの頭に当たったとき、ものすごい音がしたんだからね!」
ボールが私の頭に直撃した後…そのまま倒れて動かなくなったそうだ…。
うん、意識が飛んじゃったみたいだしね…私もそれからの記憶がないもん…。
女子ならず、男子までも心配して、みんなが駆け寄って…大騒ぎになってたみたい。
そういや…誰に保健室まで連れてこられたんだろう…また青嶋さんなのかな?
「…私って、誰に保健室まで…運び込まれたの?」
「あっ!そうそう~♪翠川くんが1番先に走り寄ってきてね?」
「美沙希ちゃんを抱き抱えて、連れて来てくれたの~♪また、お姫様抱っこされてたよ~」
「いいな~お姫様抱っこ…憧れちゃう~♪美沙希ちゃん、もう2回もされてるもんね~」
「…そうなんだ、俊樹が…」
小さい時から、いつも私のことを気にかけてくれる幼馴染み…。
そんな彼が私を…!?意識しだすと…何だか照れてしまう…何、この感情は!?
「え~なになに?美沙希ちゃん…もしかして…翠川くんのことを考えてたのかな~」
「え!?いや…そうじゃなくて…あの…」
「照れてて可愛いよ~美沙希ちゃん~♪」
桃谷さんがスマホを取り出し、写真をパチリ…って、写真を撮るな~恥ずかしいのに…。
「…もう、写真やめてよ」
「ふふふ~美沙希ちゃん~か~わいい~♪」
またスマホで、写真をパチリ…もうやだ…。
これは…さっさと話題を変えないと…恥ずかしすぎるよ…。
そう思って…話しかけようとすると…。
「翠川くんもね?さっきまで一緒に居たんだけど…」
「授業が始まるから、先に戻ってもらったんだけどね、私がいるつもりだったし」
「…そっそうなんだ…」
俊樹には、無駄に心配かけてしまったようだった…戻ったら、キチンとお礼を言わないと。
いつまでも、ここで寝ている訳にもいかない…授業に戻らないと…。
少し起き上がって、自分の体調を確認してみる…うん、眩暈もなく…大丈夫そうだ。
「あっ美沙希ちゃん、大丈夫?急に起きたら危ないよ~」
「ありがとう、汐里…うん、もう大丈夫だから、教室に戻ろ」
「ホントに大丈夫!?無理してない?」
「うん、ホントに大丈夫だから…ね」
「仕方ないな…言い出すと聞かないから…美沙希ちゃんって」
それでも、心配する桃谷さん…私って…そんなに頼りないのかな?
…でも、ここ最近の私の行動では…みんなに心配かけてばっかりだ…。
もっと、しっかりしなくちゃね!青嶋さんのように…カッコいい人でありたい…。
そう願いながら、教室に戻るのでした…。