第11話 「生まれて初めての告白!?」
生まれた初めて貰ったラブレター…と言っても赤坂ではなく青嶋さん宛なわけで…。
複雑な気持ちと不安しかなく、相変わらず胃が痛い思いをしながら、体育館裏へと急いだ。
放課後になってから、みんなと色々と協議してたのもあり、時間が経っているからだ…。
もしかしたら、来ないことを分かって帰ってくれてた良いのにな…。
そんな淡い期待をしながら、体育館裏に着いたのだが…誰かが待っていた…。
私が近づくと、相手も分かったらしくこちらに向かって走ってきた…。
「すみません、こんなところに、お呼びしてしまって…」
「…いえ」
良く相手を確認してみると、隣のクラスの藍葉くんだった。
中学も同じでクラスメートになった事もある…。
性格は大人しく、こんなに積極的に行動する彼ではなかったはず…。
ここに来てしまったものの、どうしたら良いものか分からず、黙って俯いていると…
彼が恥ずかしそうに話を切り出してきた…。
「手紙を読んでくれて、ここに来てくれて嬉しかったです」
「来てくれないと思っていましたから、すごく嬉しいです」
名前も要件も書いてないんだから、普通は、警戒するよね…多分。
自分の意思ではなく、何となくの流れで来てしまった自分を呪いたい…。
「…そっそれで、お話しって…なんですか?」
「…うん、実は…今朝、学校に向かう途中に、青嶋さんを見かけたんですよ」
「…はっはあ」
「そこで、猫と戯れている青嶋さんを見て…すごく癒されてしまって…」
猫と戯れている…はっ!もしかして!?
「あっあの…その…見ちゃいましたか?」
「はい!見ちゃいました、青嶋さんの猫の鳴き真似を…あれは可愛かったな…」
藍葉くんは、その時のことを思い出しているのか…すごく嬉しそうに悶えている…。
てか、OLのお姉さん達だけに見られていたかと思っていたのに…これは不覚だった!
私は一気に顔をが真っ赤になり…悶えてしまった。
「あの…それは、忘れて…ください…それと…誰にも言わないでください、お願いします!」
あれは…もう私にとっては忘れたい記憶…猫が好きすぎて勝手に動いてしまった。
あんな往来でするべき行動ではなかったのに、好奇心が上回ってしまった。
頭を抱えて悩む私に、藍葉くんはこう言ってきた。
「はい、誰にも言うつもりはありませんが…一つ、お願いがあります」
「えっと…お願いとは?私のできる…範囲内であれば」
どうしよう…デートしろとか…キスしろとか…言われたらどうしよう…。
私、男なのに…青嶋さんの身体なのに…そんなこと言われたらどうしよう…。
そんなことを悩んでいたら、藍葉くんは…私の予想もしていないことを言ってきた。
「もう1度で良いですから…あの猫の鳴き真似と…猫のポーズをしてくれませんか?」
「…えっ!?」
「あの時に見た青嶋さんの姿が忘れられないのです…」
「誰にも言いませんので、もう一度…見せてください、お願いします!」
そう言って、藍葉くんは頭を下げてきた…いやあの…告白じゃ…なかったんですか?
思ってたと違う…藍葉くんからのお願いにどうして良いか分からない、恥ずかしいし。
ただ、弱みを握られて脅されてるわけじゃないので、仕方ないか…やるしかないね。
「…うん、じゃあ…1回だけだよ?それ以上はしないから」
「…ほんとに!?ありがとう、青嶋さん!」
「…どう…すればいいの?」
「そうだね…両手を猫のようにポーズして、猫の鳴き声を真似てもらっていい?」
私は…ここで何をしているんだろう…。
何が悲しくて…こんな恥ずかしいことをやらされてるんだろうか…。
さっさと終わらせて、早く帰ろう…。
「…こうかな?…にっにゃー」
「ダメだな、恥ずかしがって、全然できてない…はい、やり直し!」
「えー!?こっこうかな?にゃー」
「だめだめ、もっと猫の気持ちになって…」
こんな感じで、彼が納得のいく猫の真似事を何回もさせられた…。
なにこの、拷問は…でも四つん這いとかさせられなくて…まだましだったかも。
「ありがとう、青嶋さん…すごく癒されたよ」
「そっそう?それじゃ…私はこれで…」
「うん、また今度も頼むから、よろしくー」
「え!?1回だけって…言ってたんじゃ…」
私がたじろいていると…藍葉くんがニヤニヤと笑いながら…私に近づいてくる。
「こんな、可愛い青嶋さんの仕草を独り占めできるんだ…こんな愉快なことはない」
「以前なの君からは想像もつかないことだった…僕たちの…2人だけのヒミツだ」
「いっいや…こないで…」
藍葉くんが…こんな人だとは思わなかった…そのギャップとあのニヤけた顔が怖くて、
私は何も出来なくて…足が震えて、その場にへたり込んでしまった。
藍葉くんが座り込んだ私の顔に…触れようとした時。
「その辺で止めておけよ!藍葉!!」
俊樹が颯爽と現れた。
「何だよ…翠川くん、僕の邪魔をしないでほしいな!」
「青嶋が泣いているだろ?…その辺で止めとけ!」
そう言いながら、俊樹は私と藍葉くんの間に割って入ってきた。
後ろを振り返り、優しく「皆人…遅くなってすまないな」小さい声で言ってくれた。
「何だよ君は…青嶋さんと何の関係もないんだろ?僕たちのことは、ほっといてくれよ!」
「そういう訳にはいかないな…青嶋は、クラスメートであり、大切な…友達だ」
「これ以上、彼女をイジメるようならば…容赦はしないぜ!」
そう言って…藍葉くんの前で仁王立ちをし、彼を睨みつけていた。
俊樹は、スポーツも万能でケンカも強い…とても藍葉くんでは歯が立たないだろう。
観念したのか、彼は、何も言わずに走り去って行った…ヤバかった…ホント助かったよ…。
まだ立ち上がれない私を見て、優しく微笑んで、手を差し出してくる。
「大丈夫か?皆人…立てるか??」
「うん、ありがと…」
手を差し出し、そのまま立ち上がらせてくれた…でもまだ…恐怖で足が震えている…。
そのまま俊樹に抱き着き、私は泣きだした…。
「おいおい…」
「こわかった…怖かったよー俊樹ーー!!」
「そっか…ごめんな、皆人…」
そのまま、私が泣き止むまで…背中を擦ってくれたりと慰めてくれるのでした…。