File2「画期的な新型機?」
「ちっくしょう、何が新型だ! 従来機とたいして変わらんじゃないか!」
煤まみれ、泥まみれになりつつ、チェスターは味方の基地に辿り着いた。徒歩で、である。
彼は自分の乗機たる機装兵を、魔獣との相打ちの形で破壊されていたのだ。
なお彼が乗っていた新型機と称する物は、その機体のテストを兼ねて無償供与されていた物である。
チェスターの本来の乗機は大破しており使えない状況だった。そこへテスト機供与の話である。
しかし無償という美味しい話にうかうかと乗った過去の自分を、彼は罵倒したい気分だった。
「まあ脱出装置は確かな様だけどよ。肝心な戦闘能力が元の機体と大差無いんじゃ……。乗りやすくはあったが」
「おう、生きて帰って来たな」
整備主任のオヤジが、チェスターに向かい声をかけて来る。
「済まんが、戦線が押され気味だそうだ。また出てもらえるか?」
「鬼かッ!! 機体がねーよ!!」
「あるぞ、ほれ」
オヤジが指差す先にはチェスターが先ほどまで乗っていたのとまったく同型の、完全に型にはめたかの様に瓜二つの機体、八メートルサイズの人型兵器、機装兵が鎮座していた。
「ま、まてよオイ。機体にゃ一機ごとにクセがある。それに慣れないうちに戦闘になんか……」
「つべこべ言わずに、乗れッ!!」
チェスターはオヤジと徒弟の整備士達に、強引に操縦槽へ放り込まれる。ため息を吐きつつも、チェスターは操縦席に着座し、機体を起動した。
(……!? こ、こいつ、手足の様に動く!?)
「おまえが前回乗った時に、データ取っておいて、それをデータカートリッジで移殖したんだよ。
専用機やらカスタム機やらでは意味無いシステムだし、一般兵用の安物に積むにゃ高価い。こんな低価格機に搭載してあるなんざ、おどろきだ」
『やっぱり安物だったのか!?』
「おうよ。だがな、ただの安物じゃねえぞ。値段は従来機の三分の二、しかし機体能力は従来機からなんら劣ってない。しかし問題はそこじゃねえ。
量産性、整備性、そして稼働率。あらゆる物が桁外れだ。あれを見な?」
オヤジが指差す先に機体の頭部、機外の映像を得るための眼である魔晶球を向けたチェスターは、唖然とする。そこにある大扉からは、この場に搬入されつつある三機の機装兵……。チェスターの乗っているソレと全く同じ機体が見えていた。
それだけではない。その後ろからは中破、大破した同型の機装兵が運び込まれて来る。おそらくチェスター同様にテストを任された奴らの機体だろう。
整備士が、いっせいにその損傷機に取りつくと、無事な部分をひっぺがし、それを使ってあっという間に一機の機体を組み上げてしまった。
『う、嘘だろ? こんな短時間に?』
「ほんとも、ほんとだ。ある程度の残骸が残ってりゃ、ニコイチ、サンコイチ、ヨンコイチであっと言う間に機体を復旧できる。個々のパーツの頑丈さが桁外れで、故障が少ない。
俺たち整備の人間からすれば、夢の新型機だ」
チェスターは開いた口が塞がらなかった。
「ダライアスって奴が設計して、組合が制作、製造した機装兵なんだがよ。操手さえ生きて還ってくりゃあ、いくらでも再出撃ができる。生きて帰還できるなら、いくらでもブチ壊してかまわんぞ。
さあ、出撃しろ!」
たしかに戦術的、戦略的には大きな意味のある機体だ。特にチェスターの様な中堅操手には、ふさわしいのかも知れない。
(でもなあ……。やっぱり高性能機、乗りたいよなあ……)
チェスターはため息を吐きつつ、再出撃した。





