そして
あの後、改めて王子から事の顛末を聞いた。
やっぱり国王はそのつもりで動いていたのだそうだ。王子の調教が終わったら、速攻私と王子の婚約を破棄して別の令嬢と婚約させるように。
調整もある程度済んでいたらしい。
けれど王子が、結婚相手が私でなければ自分は元のバカ犬に戻ると自信満々に国王を説得したのだそうだ。そうして、水面下で動いていたその話は潰れたらしい。
そう語った王子は、真冬に池の中に落ちたボールを取ってきたクーくらいに自慢げだった。
褒めて欲しそうだったので、頭を撫でておいた。
そしたら耳どころかパタパタ動く尻尾まで幻視してしまって参った。
…日に日に王子が可愛く思えてきて困る…。
その後も順調に教育は進み、王子はギリギリokなレベルの王子になった。
よく頑張ったと思う。
王子も私も教師たちも。
…仕上がり具合の報告にウムウム頷いてただけの国王は、やっぱり一度でいいからしばき倒したいと思った。
まぁ、絶対に無理だから諦めるけど。
それに何しろ義父になる訳だし………
…いや、それならむしろ殴っていいのか?
なんて事を思いつつも、残念ながら実行できる訳もないから、それはいいとして。
そして何やかんや準備して、私と王子はそこまで派手ではないけれど王都の大聖堂できちんと結婚式を挙げた。
途中だいぶ諦めていたけれど、私は王子の花嫁になれてしまった。
結婚式用の白い衣装を着た王子は、王子の癖にとても王子っぽくて格好よくて、ちょっと悔しかった。
その王子が、私のドレス姿にハッと息を飲んで
「その胸どうした!?」
と詰め寄ってきたのはご愛嬌だ。
とりあえず裏拳一発で許しておいた。
こんな日にも、やっぱり目がいくのは胸か。
「…今日着たらこうなってたんですよ」
王室御用達の仕立屋は、どうしても胸のないドレスは作りたくなかったらしい。
届いたドレスには、詰め物で人並みサイズにボリュームアップされた胸が縫いつけられていた。
見事過ぎる刺繍でカバーされ、不自然さは全くなかった…。
結婚式用のドレスは慎みが要求されるので生乳は出ない仕様だから、こんな強引な真似ができてしまうのだ。
でも仮縫いの時には、こんなの絶対付いてなかったのに…。
王子が
「それ、揉んでいいか?」
とあまりに真剣な顔で聞くので
「式の後にしてください。偽乳でよければ」
と許可を出しておいた。
断ったら、十年後にもまだ言いそうだったから。
…王子が忘れず実行したのは、言うまでもない事なのだろうか…。
とまぁ、そんなちょっとしたゴタゴタはありつつも、今日も私は王子と楽しく暮らしている。
実家から呼び寄せたクーを侍らせて、王子ジュニアたちをきっちり調教しながら。
おしまい。
これにて本編完結です。
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この後オマケを5話ほど予定しています。
だいたい後日談。
・王子vsクー
・国王vs主人公
・兄王子&弟王子
・王妃vs主人公
・王子と主人公のほのぼの




