会食
街中を見て回った後、領主の館へ向かう。
入り口で、ごく普通の見た目のおじさん領主が出迎えてくれた。
早速案内された食堂で、豪勢な昼食を振舞われる。王族相手ということで奮発したのだろうか。かなり美味しかった。
王子は素直で裏がない。
その分、領主も余計な気を回す必要がなかったのか、話が弾んでいた。
邪魔しては悪いので、私は食事に集中した。
いい感じに友好的な雰囲気の中、領主邸を辞する。
帰りは少し遠回りして、畑を見た。
うちの領もほぼ山と畑ばかりなので、ちょっと懐かしい景色だ。
なんて思っていたら、また領地に帰ってからの事を考えてしまった。
そしたら
「元気がなくないか?」
と王子に顔を覗き込まれた。
そんなことはない。節穴め。
むしろ婚約破棄されたら領地に帰れると思うだけでウキウキだ。
何せクーに会えるんだから。
そう、クーに会えるんだから。
だからウキウキだ。
…本当に。
………それに、いくら王になる可能性が全くない王子が相手とはいえ、私が王子妃なんて間違っている。
滅多にドレスを着ない、胸も激烈に小さい子爵家の娘が王子妃なんて。
釣り合わないことこの上ない。
王子が立派になった分、周りもそういう目で見るだろう。
そんな気の張る立場なんて、やめられるものなら喜んでやめてやる。
たとえもう、王子と会えなくなったって……
どうせ私には選ぶ権利はないし…
だから国王に「この婚約は破棄だー!」って言われたら大人しく「承知しましたー!」って頭を下げて。
でも慰謝料だけは、がっつりたっぷりふんだくって。
それで王都からは遠く離れた田舎の領地に引っ込んで、のんびり暮らすんだ…。
犬とか犬とか犬に囲まれて……
今日中にもう一話アップします




