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ハルキと安い海色ギター

作者: 霧海かわせみ

初めて書きました。

誤字脱字多かったり日本語がおかしかったりするかもしれませんが、最後まで読んでいただけると幸いです。

僕は30年前に中国の工場で作られた。周りには僕と全く同じ型のアコースティックギターが並んでいた。うんざりするくらいの木の香りと機械の音がする工場で。

そして僕は海を渡って日本に来た。日本の都会とも田舎とも言えない場所にあるショッピングモールの小さい楽器屋で売られることになった。

僕の値段は1万円。周りのギターは5万円や10万円する。正直すぐに売れて僕のご主人がすぐに決まると思っていた。

でもその店に来るのはマニア層が多かったのか、僕は3年間その店で過ごすことになった。僕はほとんど触られることなく音を奏でることなく3年間ダラダラとすごした。

外でセミが鳴くある夏、僕はレジに運ばれた。

小学3年生くらいの男の子と父親であろう人が僕をレジに運んだ。

子供の名前はハルキ君。

僕を見て父親に「これがいい!!」と言ってくれたんだ。

父親は少し不満気な顔をして違うのを選ばせようとしていたけど、ハルキ君は僕が売られている、いや、飾られている場所から動かずにこれがいいって言い続けてくれた。

そして父親は渋々僕をレジに連れてってくれた。

僕の色は明るめのブルーサンバースト。恐らく僕の色が派手だっから子供受けしたんだろうな。


ハルキ君は家に帰ってから音楽と言うよりもただ音が鳴っているだけのような弾き方で僕をずっと弾いていた。

僕には「ウミ」という名前をつけて。100均で買ったシールで「ハルキ」という文字と「ウミ」という文字を背中に貼り付けて。

僕の色にあっている名前だ。

平日は学校から帰ったら勉強机に向かう前に30分程度僕を鳴らして…夜も母親に注意されるまで弾いてくれた。

学校が休みの日は3時間くらい弾くこともあった。

そんだけ弾いてると上達するのもあっというまで2週間くらいで歌を1曲ほぼ完璧に弾けるようになった。

ハルキ君、嬉しかっただろうな。そして僕もとても嬉しかった。

ハルキ君は成長と共に上達するのも早かった。僕はハルキ君の成長は嬉しかった。でも上達するのは少し不安だった。

僕だって最初の方は上達するのだって嬉しかった。

でも僕は所詮安物。あの小さい楽器屋に居た周りのギターの方が音がいいのは僕だってわかった。

僕はハルキ君のギターの腕前を知っている。かなり上手い。

だから僕はその腕前に似合わない価値のギターだろう。

彼が僕を安っぽい音のギターと気付いてもっといいギターを買うのは時間の問題だろうな。寂しい。

でもその時が来るまではハルキ君に音楽の楽しさを教える。それがお前の仕事だろう?そうだろ、ウミ。


ハルキ君はすくすく成長して中学3年生になった。今は高校受験の勉強でとても頑張ってる。僕を弾く時間を削って。

中学生になっても変わらず僕の音を鳴らしてくれた。家族との旅行にも、友達とのカラオケにも連れてってくれた。

変わったことといえば僕の背中の「ウミ」と「ハルキ」のシールは剥がされ、ハルキ君は僕のことを「ウミ」と呼ばずに「青いギター」と呼ぶようになっていた。

少し寂しかったけどこれも成長なんだと考えた。

「ウミ」と「ハルキ」の文字は日に焼けてくっきりと跡が残っていた。


ハルキ君は第一志望の高校に受かったらしい。僕も嬉しかった。ハルキ君も喜んでいた。やっぱりハルキ君と一緒に喜ぶってのは話すことが出来ない僕らなりに何か煌めくものがあった。

父親と母親はハルキ君にお祝いを買ってあげたんだ。

枯葉型の板に何個か穴があるサウンドホールの珍しいアコースティックギター。僕が何年も前にお店にいた時に置かれていた。珍しいからこそ覚えている。それに客はみんなそのギターを僕には向けない目で見ていた。僕の何倍もする値段だったギターだ。

ハルキ君喜んでたな。高校に受かった時よりもはしゃいでいたな。僕も喜べたらまたあの煌めきを感じれたのに、、

ハルキ君は高校に入って高校の友達とバンドを組んだらしい。

学校に行く時はよくあのギターをもって学校に行っていた。

学校から帰ると僕で1曲歌を弾いて、その後はあのギターを寝るまで弾いてた。でもこれは僕が望んでいたことでもある。あのギターの音色はハルキ君の実力にあっている。

それに僕はネックが曲がってお腹も膨れて弾いてたら指が痛くなるギターになっていた。

そんな僕でも弾いてくれてた君には本当に感謝してたよ。


ハルキ君は大学に進学して一人暮らしを始めた。

僕を実家に置いて。まあ当たり前だ。僕は修理が必要な体になっていた。でも元々は1万円のギター。修理代の方が高かった。

ハルキ君は高校の時のバンドが動画サイトで少し有名になった。10万回再生を何回か出したことがある。

大学に行ってもそのバンドは続けてるらしい。

バイトにバンド活動に学校生活。忙かったハルキ君は僕を触る時間をとうとう無くした。

だから置いていかれるのは当たり前だよな。

たまに母親が部屋に入ってきて窓を開けて換気する。それくらいしか誰かが部屋に入ることが無くなった部屋で僕は眠った。


そんな日を過ごすある日。いつもとは違う足音が聞こえて僕は目覚めた。

この音は聞き覚えがある。ハルキ君だ。

部屋に入ったのは雰囲気がガラリと変わったハルキ君。

大人になったな、、、そしてハルキ君は小学校と中学校の卒業アルバムと僕を車に乗せてハルキ君が住んでいる家に行くことになった。

その時にはもうハルキ君に奥さんがいた。僕は何年間寝ていたんだろう。

僕らを乗せた車はハルキ君の家に行く前にある楽器屋についた。

そして僕はその見知らぬ楽器屋の見知らぬ店員に預けられた。

なんと僕は修理されることになった。僕の元々の値段の何倍ものお金をかけて。

ハルキ君はライブなんかを開いてお金を稼げるようになっていた。お金に少し余裕が出来て僕を修理することにしたそうだ。

僕は修理されてハルキ君の手に返された。

奥さんがその時僕のことを見ながら言ったんだ。

「良かったね。ウミくん。」

あぁ、そうか。僕はウミだ。忘れていた。ハルキ君が小学校だった時以来だ。その名前を聞いたの。

まだ僕の背中にはうっすらとその名前の跡がついているのに。


ハルキ君の家に着くとあの時の枯葉型の穴があるギターも置かれ

ていた。

それからのハルキ君は僕をライブに使うことはなかったけど家では基本的に僕を弾いていた。修理されたとはいえあのギターに比べれば安っぽい音なのに。

ハルキ君は僕を子供の時のようにかき鳴らして。

それからは幸せな毎日を過ごしていた。僕を家族との旅行に連れてったりしてくれて。僕の名前をウミと呼んで。そして9年後のある日。ハルキ君は家に帰ってくることはなかった。ハルキ君の奥さんとハルキ君の赤ちゃんが泣く部屋に。ハルキ君の笑っている写真の前に線香と花が供えられたこの部屋に。今までギターの音色が響いていたこの部屋に

僕とあのギターは押し入れの中に入れられた。そして僕は涙を流して眠りについた。


僕はまたある日目覚めた。押し入れから僕を引っ張り出した衝撃で。

誰だこの人?ハルキ君に似ている。

もしかしてハルキ君の息子か?

彼は僕とあのギターを街の楽器屋さんに売りに出した。

彼は僕とあのギターを音楽が好きな人に渡したいと考えたんだ。

優しいな。ハルキ君に似ているよ。

楽器屋の棚に僕らが並ぶとあのギターはすぐさま売れた。

そして僕はまた1人になった。誰も僕の前に立ち止まらずに。

その時には僕はまたネックが反り、お腹が膨らんでいた。

それに背中には今となっては何と書いていたのか分からなくなった日焼けの後がある。

「ジャンク!後ろに日焼け跡あり!12000円!!」

まあその値段では売れないだろうな。なんで僕がその値段で売られているんだよ。

こんな値段で売れるわけがない。


数年たったある夏の日。あの日に似た外でセミが鳴くこの日。

小学2年生くらいの子が父親と共に店に入って僕を見つめる。

ほとんどオブジェとしかなっていなかった僕を。

その子は父親に頼んで。父親は店員に頼んで僕を棚からおろしその子に持たせた。その子は僕を受け取るとすぐさま後ろを見た。

僕の背中の日焼けをみると彼は静かなクラシックの音楽が流れる店内で大声で「これだ!!!」と叫んだ。

父親が静かにするよう宥める。店員はキョトンとした顔で僕とその子を見ている。

少年は父親にこれがいいと言っている。父親は他のギターを選ばせようとしている。

あれ?この光景は昔どこかで見た。店員が少年にこのギターは修理しないと指が痛くなる。それにもっと綺麗な青のギターもある。そう言って父親と一緒に他のギターを薦めている。

それでも少年は僕を離さず、抱きしめながら。

「知ってる!!これがいい!!」と言っている。

父親は渋々レジに僕を通して車の後ろ席に積んだ。

少年は助手席から振り返って僕を見ながら呟いた。

「これからもよろしく。ウミ。」








ウミは僕の一番最初に買ったギターがモデルです。もしもこのギターに感情があるならどんなことを考えるんだろう。そんなことを考えながら書きました。

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[良い点] まずは文章の書き方が好きです。 題材も良かったです。 [気になる点] 気になる…というよりもっと深堀りしても良かったのでは? つまりは、もう少し読みたかったという事です。 最後の展開はこの…
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