待ちに待った入学式
沢山の友達が出来た幼稚園を卒園し
僕は近くの市立小学校に通うことになった。
僕は地元の幼稚園に通うことなく
送迎バスと給食のある私立の幼稚園へと
通っていた。
その為か見渡す限り初めて見る子供で
知っている顔ぶれは学年でわずか数人しか
居なかった。
周りの子供達はみんなが幼稚園からの
友達のようで楽しそうに会話をしていた。
僕だけ誰もクラスに知った顔が見つからなくて
まるで1人取り残されたかのように浮いていた。
でも僕は幼稚園の時より長く学校に居る事が
出来てあの家に居なくて済むんだ。
ただそれだけの理由でこの場所に居ることが
嬉しかった。
学校生活も1週間が過ぎ少しずつ友達も増え
周りに慣れ始めた頃
それは突然起こった。
いきなりクラスのある男の子が僕に
「お前、蚊ついてるぞ」と
言っていきなり僕のほっぺをビンタしてきた。
続けて今度は
「あれ?おかしいな、あ!ここにおったわ」と
背中を強く叩いてきた。
家での叔父からの暴力にいつも怯えていた僕は
その場でも思わずしゃがんで震えてしまった。
するとその男の子はニヤリとしながら
「おいこいつおとなしいぞ」と
周りに得意気に言いふらしていた。
周囲からは乾いたような嘲笑が聞こえてきた。
希望に満ちた小学校
そう思っていた僕の生活は
更に厳しいものとなった。
家でも学校でも心ない言葉と暴力を
浴びせられる毎日。
安全な時間は母が仕事から帰ってきた時の
布団の中だけになった。
どうやったら楽になれるのか
どうやったら死ねるのか…
そんな事を毎日考えながら
ただひたすら布団に入れる時間を
耐えて耐えて待っていた。