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誕生

平成8年9月12日


正確に言えば前日の夜9時30分頃


勤務先の電話が鳴った。


陣痛が始まりあと数時間で産まれそうだと。


僕は22時に仕事を上がるとすぐに


奈良の病院へと向かった。


初めての経験に奥さんも義母さんも


とても不安そうだった。


やがて激しく陣痛が押し寄せ


僕と義母さんは分娩室前の椅子で


固唾を飲んでいた。


午前3時40分


元気な産声と共に初めての子供が産まれた。


男の子だった。


事前に性別はあえて聞かなかった僕たちは


男の子やなーと3人でにこやかに話をした。


そしてしばらくすると産着に包まれ


スヤスヤと眠る息子を抱かせてもらった。


僕は初めて対面する我が子にささやいた


「おはよう優希」


その名前はどうしても付けたい名前だった。


一般的な意味は優しく希望に


溢れた子になりますようにだと思う。


もちろんそれも含まれているのだが、


僕がつけた意味合いは


《人に対して優しく出来て人に


優しくしてもらえて自分に希望を持てる子》


になりますようにだった。


僕は一緒に暮らした肉親と呼べる人に


愛情を注いでもらえなかった。


優しくもしてもらえなかった。


もちろん母は愛情を注いでくれていたが、


みんなを養うために1日では足りないくらい


働き詰めでほとんど隣に居てくれなかった。


叔父には暴力を受けていたし


ほとんど怯えていた。


でも僕は友達や先生、近所の人、


芸者さんたちお客さんたちに


沢山優しくしてもらった。


だから僕も優しく出来た。


でも僕はほとんどの毎日、


自分の未来、環境になんの希望も持たず


むしろ絶望したまま過ごしてきた。


だからこそ優希には自分の今と明日と未来に


希望を持って育って欲しかった。


だから《優希》とつけた。


こうして僕は若干22歳にして


一児の父親になった。


それは僕が23歳の誕生日を迎える


9月14日の1日前のことだった。

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