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転落



いつの間にか叔父はここの家で暮らすようになった。


大阪に来た時は確かまだ41歳になったばかり。


元々名古屋のエリート公務員で19歳で役職に就き


地元紙で取り上げられたこともある優秀な


人物だった。


それが一転野球賭博で捕まり公務員を解雇され


新聞にも載り


名古屋に居場所が無くなり仕方なく母を頼りに


大阪へと逃げるようにとやって来た。


エリート公務員だったと言う肩書きが


どうしてもプライドとして外れないのか


叔父は一向に働こうとしなかった。


より明確に言うと家の外にさえ出ようとさえ


しなかった。


朝10時頃に起き簡潔に身支度を済ませると


夕方まではテレビの前にずっと座っていた。


日が落ちるとご飯を済ませ


またテレビに視線をやりしばらくすると


風呂に入って1時過ぎに床に就く。



毎日ただその繰り返しだった。


まるで自分が生きている実感を


自ら好んで放棄しているかのような


感じさえした。


そんな叔父を女中さんや芸者さん達は


あからさまに白い目でみていた。


母一人を働かせて一切なにもしようとしない


叔父に冷たい目線を向けていた。


僕はそんな叔父がとても可哀想に思えた。


3歳からほとんど毎日芸者さんと一緒に


座敷に出ていた僕は


お客さんが喜ぶのと同じように叔父に


毎晩毎晩日本酒の晩酌をした。


ただ単純に元気になって欲しかっただけだった。


だがそんな僕の思いとは裏腹に


周囲の冷ややかな視線と毎日のお酒が


叔父と僕の人生を転落へと導いていった。

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