最後の声
その日のうちに8畳と8畳の
部屋の真ん中を隔てる壁が壊された。
綺麗な白色だった壁だが叔父の方の部屋は
ヤニで全体に黄ばみがこびりついており
漠然とタバコ吸う人の肺も比べたら
こんだけ汚れてるんやろうなーと
考えたのを覚えている。
深夜までかかり新しいベッドの配置や
机やテレビの位置などを変えた。
疲れ果てて寝転がった僕の目に映ったのは
広く続く繋がった天井
何年も何年も嫌がらせをうけて
疎ましく思えた1枚の壁が無くなり
ただ単純に倍になっただけの光景だったが
僕にとっては無限の未来に感じた。
僕の広くなった部屋を一目見にこようと
沢山の友達が訪れた。
最高1日に9人が2日続けて
泊まったこともあった。
何もかもが新鮮で自由に思えた。
彼女もおびえることなく階段を上がって
みんなが本当に嬉しそうだった。
もう叔父の戻れる場所は存在しない!
ようやく開放された!
そんな気持ちで毎日を過ごしていた。
数ヶ月後の土曜日
誰も居ない夕方1本の電話が鳴った。
何故だか僕はそれが叔父からだとわかった。
普通ならモシモシと出る電話だが
僕はいきなり
「どうしたん?」
と言って電話に出た。
懐かしい昔の叔父の声がした。
「たかよしか?元気にやっとるんか?
俺はな、俺はなー、、俺はお前が好きなんや」
産まれて初めて聞く叔父からの
僕を好きだと言う言葉
だがその言葉は僕の胸には刺さらなかった、、
「あーそう、ありがとう叔父ちゃんも元気で」
そう起伏の無い言葉を並べて僕は電話を切った。
僕が直接聴いた最後の叔父の声だった。




