決別
その日は朝から彼女が家に遊びに来ていた。
僕が壁一面に描いた絵の本気具合に
多少ひいていたようだが
テレビを観たりしながら
平和な休日を過ごしていた。
隣の部屋からは叔父の荷造りしている物音が
ガサゴソと聞こえていた。
いよいよ引っ越しの日だ。
その日の夕方には早くも壁を壊して
壁紙を張り替える予定も既に入っていた。
もう後戻りすることはない。
引っ越し業者の人が次々と
叔父の荷物を運び出す中
僕たちはお腹が空いたので
とりあえずコンビニに行くことにした。
メゾネットマンションの階段を
彼女が先に降り玄関に着くと
何故かすぐに彼女がまた階段を戻ってきた。
そして
「あんな、私の靴無くなってるねん!」
僕は急いで階段を降り玄関を確認した。
本当に周囲を探しても無く
ふと思い立ちエレベーターの向かえにある
非常階段から隣のビルとの塀の隙間を見た。
そこには間違いなく朝
彼女が履いてきたスニーカーが
もう絶対取れないとこに投げ棄てられていた。
僕は絶対に叔父がやったに違いないと
階段を一気に駆け上がった。
荷物の指示を出している叔父と目が合うと
叔父はニヤリと口を歪めた。
僕は叔父に向かいながら
「いつまで姑息な手段で嫌がらせするねん!
ええ加減にしとけよ!」
と怒鳴り叔父に殴りかかった。
一発目で叔父は踞り二発目で床に倒れた。
業者の人たちに取り押さえられながらも
僕は叔父を蹴りあげた。
母もようやく物音に気付き僕を止めに入ってきた。
母に事情を話すと
「ほんまにあんたは!ほんま腐ってるな、、」
と叔父に吐き捨てるように言い
僕にお金を渡すと
「これで靴買ってきたり」
と僕をその場から遠ざけた。
僕はまだ怒りが収まらず
叔父に暴言をぶつけながらも
近くのスーパーに彼女の靴を買いに行った。
帰ってくるともう叔父の姿は無く
既に出て行った後だった。
あまりに呆気ない幕切れだったが
叔父と直接会ったのはその日が最後となった。
彼女は新しい靴を履くと
「、、今日は帰るわ」と力無く言い
そのまま玄関を出た。
そして夕方
二つの部屋をひとつにする工事が始まった。




