引っ越し先にて
とうとう工事の着工が決まり約十一年住んだ
様々な思いの詰まった住み慣れた我が家と
お別れする時がやって来た。
僕自身の荷物はそれほど無く
他の友達よりは遅めに買ってもらえた
ファミコンさえあれば生活できる
みたいな心境だった。
新しい家は小学校の校区内で探し
最初近くの賃貸マンションを
2部屋借りようかという話だったが
母はもしまた叔父がアル中になって
周囲に迷惑になっても…
という思いがどうしても抜けず
なかなか引っ越し先を決められないでいた。
そんな時に同じクラスの同級生のところが
2階建てのアパートを経営していて
今一階は全て空いていると言う話を聞いた。
早速母と二人で見に行った僕は
少し唖然とした。
何故なら想像していたよりかなり古く
おまけに風呂無し共同便所だったからだ。
でも母は明るく
「一階を全て借りたら私らの便所やん。
ここやったら叔父ちゃんおかしなって
も事情解ってくれてはるから大丈夫やろ」
と言う母の言葉でここ即決した。
八畳一間を4人でひとりづつ借りて
あと二部屋を台所と物置にした。
初めて個人の部屋を持たしてもらった僕は
かなり嬉しくて毎日のように
友達を呼んで楽しく遊んでいた。
叔父もお酒を飲む様子など全く見せず
一緒に将棋をしたり銭湯に行ったりと
とても楽しい生活だった。
久しぶりに得られた平穏な時間
そしてこの場所での生活の中
僕に人生初めての彼女も出来た。




