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風変わりな家族
僕が生まれた町は明治時代から続く歓楽街で
いたるところにお茶屋と言われる俗に言う
芸者遊びが出来るお座敷がいくつもあり
母はそこのひとつで女将として生きていた。
当時の家族と呼べる一緒に住んで居た人達は
芸者を引退した女中さんと終戦後に満州から
て避難きた70歳のおばあさんが居て
いつも忙しい母の代わりにそれは大事に大切に
育ててくれた。
父が家に居てくれた記憶はなく
でもそれを感じさせまいとするかのように母と
女中さん達が出来る限りの時間を作って誰かが
僕の側に居てくれていた。
その頃の僕は常いつも笑顔で本当にとても
とても幸せな日々を過ごしていたと思う。
そうして僕は3歳になる頃
私立でバス送迎のある幼稚園に通うことになっ
た。
いつも忙しく夜も遅くまで働いている母が
お弁当の代わりに給食の有る幼稚園を探して
くれていたのだ。
当時は珍しいブレザーの幼稚園で可愛らしい
ハットを被り家の門の前で記念写真を
撮ってもらった。
そして入園式を終えすぐに仲の良い友達も
出来て母と共に安堵の気持ちで帰宅した。
このままずっと続くと思っていた幸せ
でもそれは突然破られることになる。