愛情表現の仕方
次の日から
家の空気は一気に柔らかくなったように
感じた。
初めて居間で好きなテレビを観た。
自分の部屋のちゃぶ台ではなく
キッチンで晩ご飯を食べた。
とても新鮮に感じ嬉しかったか
それと同時に寂しくも感じた。
あれだけ居なくなって欲しかった叔父が
何故だかとても気になった。
母はそれを察したかのように
いろんな習い事をさせてくれた。
野球、英語、絵画といろいろ習いに行った。
その分母は相変わらず忙しく
あまり会えずにはいたが
母はその一緒に居て表せない愛情を
教育とお金で表現してるようだった。
店が休みの日曜日は
僕の友達も一緒に
レストランに連れて行ってくれて
洋食の作法など詳しく教えてくれた。
ある晩、母が
「ごめんな ずっと守ってやれんで
でもお母ちゃん、あんたに
お金だけには困って欲しくなくて
一生懸命働いて…」
その後
少しの間を置いて母はこう続けた
「そばにも居てやられへんし
間違ってるかもしれんけど
お金に不自由させへん
これが私の愛情表現や…」
やっと10歳を過ぎたばかりの僕は
あまり理解が出来ず
「お金なんかいらんから、側におって…」
そう言おうとして振り向いた母の頬に
静かに伝う涙に気付き
こう言い変えた。
「うんお母さん、僕、幸せやよ」
僕がその時出来る最大限の愛情表現だった。




