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別離



その日は体調が悪く土曜日の学校を早退した。


家に帰ると叔父がひとりで居間に座って居た。


特に何を言ってくるでもなく


ただぼーっとテレビを観ていた。


そのまま通り過ぎ自分の部屋に行くと


珍しく喜々とした表情の母が待っていた。


待ちきれなかったのか僕に


「叔父ちゃん断酒会に入ってん。ほんで


そこの紹介でパチンコ屋の店員に就職して


住み込みで働く事決まってん」


と一気に捲し立てるように伝えてきた。


突然の出来事に僕は言葉を失った。


ようやく思い付いた言葉は


「叔父ちゃんちゃんと働けるかなぁ」と


少し心配しながら母に尋ねた。


母は


「大丈夫やろ、なんかいきなり会計とか


もするらしいしやっぱり頭賢いからなぁ」


と笑顔で答えた。


僕は表現し難い複雑な感情だった。


やっと家に帰ってからの暴力から解放される


安堵感と


まともな時のとても優しい叔父


将棋をしたり一緒にお風呂に入ったり


そんな楽しかった思い出と怖かった記憶とが


頭の中でずっと駆け巡っていた。


そして日曜日の朝


いつもより朝寝坊した僕に


「叔父ちゃん行くよー」と


母の弾んだ声が響いた。


僕はパジャマのままで玄関まで行った。


叔父は持って行く荷物を


まとめている最中だった。


そして叔父は僕に気付くと


とても優しい表情で


「行って来るわ、大きなれよ」と言った。


僕はたまらなくなって


「うん」


とだけ頷くと二階への階段を駈け登り


叔父が見えるか見えないかの位置に座って


支度をする叔父の姿を見つめていた。


どんなにひどい事をされても


誰よりもいつも一緒に居たのは叔父だった。


そんな事が次々と思い出しながら


涙が止まらなくなった。


「じゃ叔父ちゃん行ってくるよ」


母の声が聞こえたが


僕は涙で返事をする事が出来なかった。


叔父は、階段の上の僕にさっと手を振ると


ゆっくりと玄関を閉めた。


僕はそのまま膝を抱えて


涙が無くなるまで


その場所でただずっと泣いていた。


4年生も終わる寒い冬だった。


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