将棋
小学3年生の頃
普段のまともな時の叔父とはよく将棋をした。
元々のきっかけは父が教えてくれて
でも頻繁に父と出来るはずもなく
だけど父よりなんとか強くなりたくって
優しい時の叔父に相手をしてもらって
いろいろと教えてもらっていた。
もちろんアル中になってる間は恐ろしくて
声を掛けることさえ出来なかったが、
普通の優しい時は何時間と
対戦してもらった事もある。
ある日僕が自分の部屋でテレビを観ていると
いきなり叔父が
「うるせー 静かにしろ!」
と唐突に殴りかかってきた。
そしていつも居間で食べるのはとても怖いので
自分の部屋でひとりでご飯を食べる為の
ちゃぶ台に投げつけられた。
ちゃぶ台の足が折れ
僕の太ももに突き刺さった。
今はほとんど跡も消えたが
そうとう深く突き刺さった。
僕が大声で
「助けて」と
叫ぶとたまたま座敷にお客さんとして来ていた
消防署の人が叔父を羽交い締めにして
止めさせてくれた。
僕はそのまま救急車で運ばれた。
それから3日間
叔父は自分の部屋から出てこなかった。
そして4日目
僕が学校から帰ると居間には
無精ひげをきれいに剃ったさっぱりとした
叔父が座ってた。
僕は嬉しくなり大きな声で
「ただいまー」と言った。
叔父は 照れくさそうに
「おうっ」とだけ言った。
僕は早速自分の部屋から
将棋の用意を持ち出した。
そうして叔父に
「今日からまた将棋出来るね!
叔父ちゃん将棋しよっ」と言うと
叔父は涙を浮かべながら
「すまんかったなぁもう、せんからな」と言った。
僕は
「いいよ あれ、本当の叔父ちゃんと
違うんやろ?」と言うと
「もう変われへんから、最後やから…」と
僕に申し訳なさそうに告げてきた。
「いいよいいよじゃあ今日は僕が先攻ねっ」と
言うと
「…おうっ」と
叔父は返事をすると将棋の駒を並べ始めた。
僕と叔父の束の間の幸せな時間だった。




