望まぬ終わりと意図せぬ始まり
見切り発車です。
月1更新を目指します。
そこには1人の人間と1頭の竜が対峙していた。
荒れ狂う吹雪の中、数多の戦士と竜が息絶えていた。
ある者は四肢や翼を無くし、ある者は首を切られ、またある者は全身を焼かれ。
しかし共通しているのは、ほぼ全身が雪に埋まっているということ。
1人は剣士、左腕は既に無く、防寒具と思われる装備は役目を果たしておらず、誰が見ても彼女が息絶えるのも時間の問題。されど彼女の眼には未だ闘志の火が揺らぐことなく灯り続けている。
1頭は龍、片翼は削がれており飛ぶことは叶わず、四肢は失わずとも全身の傷から少なくない出血が確認できる。彼女もまたその眼に闘志の火を灯し続けていた。
そう、「いた」のだ。
仮にこの戦いを傍観する者がいたら、全員が剣士が先に膝をつくと判断しただろう。
しかし、長くもなく短くもない睨み合いの末、先に限界を迎えたのは龍であった。
その巨体を雪に伏した後、剣士は剣で止めをさすが、彼女もまた限界を迎え、その身を伏すことなく息絶えた。
数年後、この地を訪れた者達により彼女は「滅龍殺し」と呼ばれ、英雄となる。
しかし彼女が、そして彼女が死の間際に思ったのは……
((私(我)はただ生きたかっただけなのに……))
竜と龍の書き分けは誤字ではありません。