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7-10

 イーリスが裏技を使っている事はキョウヘイも分かるだろう?

 ああ、そうだ。強さは置いておき、7人以上の参加者がいる件だ。

 確かにルール上の最大上限は7人だが、アイツは契約を交わした稀人や屍人共を送り込んでいる。武器と言う名目でな。あちらには空間の歪曲や座標軸との固定を得意とする輩がいて、俺たちが入ったのとは別に入り口として穴を開けているんだ。

 だからそれを逆手に取る。入り口があるのなら、そこから戻ればいい。それでイーリスを殺す。策事体は簡単だろう? ま、言葉だけはな。

 ああ、心配の通り、勿論クリアしなければならない前提条件は幾つかある。大きく分けて3つだ。

 一つ目。キョウヘイ達全員が出れるわけじゃない。アンタら魔族側は、最低でも1人はこの螺旋回廊に残っている必要がある。全員がいなくなってしまったら、魔族側は全員死んだと認識され、イーリス側の勝ちとみなされるからな。

 二つ目。ある程度イーリス側の参加者を間引く必要がある。早い話が、強かったり面倒な輩にはご退場を願おうってわけだ。

 三つ目。俺に掛けられている隷属の呪術を解かないとならない。今の俺はイーリス達の支配下に置かれている状態だからな。解かないとアイツらを暗殺できない。

 ま、ざっとこんなもんだな。まずはこの三つをクリアする。そしたら次の段階へ移行しよう。別に難解な内容じゃないだろう? 難易度は置いておいて、やる事自体はシンプルだ。


「待てよ」

「サイ、何でお前は俺たちに協力する?」

「……いや、違うな」

「何でイーリスを裏切る?」

「アイツはお前らからすれば味方なんじゃないのか?」

「それでもって、負けるのはアンタらの世界に取っちゃ不都合なんじゃないのか?」


 そこは気にするところかい? 意外だね。もっとドライかと思っていたけど。

 まぁいいか。問いかけへの答えだけど……それは秘密だ。そこまで明かすほど俺もお人好しじゃないんでね。

 それに俺がアイツらを裏切って暗殺しようとする理由は、キョウヘイにとって知らないければならない事かい?


「結論から言えばYESだ」

「確かにイーリスを暗殺できるってのは魅力的な内容だ」

「だけど、今の説明だけでアンタに全幅の信頼を預けるには、俺は臆病者なんだよ」

「ならその溝を埋めるために、アンタの意図を訊くことはおかしなことか?」


 おかしくはないね。確かにキョウヘイの言う通りだ。信じてもらおうってのは虫が良すぎる。

 けど……俺もこう見えて必死でね。協力の取り付けも完了していないのに、何でもかんでもを明かすわけには行かないんだ。ましてや今の俺の立場の危うさは、わざわざ言葉にするまでも無いだろう?

 イーリスの暗殺の為には、キョウヘイ達の協力を取り付けなければならない。かと言って全部を明かしてしまえば、俺が持つアドバンテージは無くなり君たちとの交渉どころじゃなくなる。

 てことで、言えないのさ。今はまだ、ね。



 けど……まぁ。

 一言だけ付け加えるなら。


 気に入らないんだよね。


 昔から。

 誰よりも。何よりも。

 アイツの事がさ。











■ 妹が大切で何が悪い ■











 そろそろ心身共にゆっくりと休みたいとは思う。思うのだが、如何せんこの世界の神様(イーリス)は俺の事が大っ嫌いなので、実際には全く休むことが出来ず、疲労が蓄積していくばかりである。

 獣人さんやライオットとの連戦。呪い返しにより未だ動かぬ右腕。潤滑に回らない魔力。とうの昔にキレそうな体力。俺、確か、疲労回復のスキル……あったよなぁ? なかったかなぁ?

 まぁ考えても仕方がない。何せこの世の中、良いことは続かないくせに、悪いことは連鎖するのだ。

 そう考えれば。体力が枯渇して気絶して、それから目覚めて即(本当に即だった。目覚めとほぼ同時だった)裏切り者(サイ)との交渉の席に強制参加させられたのは、まだ良い方なのかもしれない。何が良いのかは置いておくけど。


『信じるんですか?』


 意識が落ち着きを見せる、その絶妙なタイミングでミリアが声をかけてくる。案件は勿論、先ほどのサイとの会話の事。


「信じるかは保留。けど、前提条件とやらは解決に向けて動く」

『何故ですか?』

「デメリットが殆ど無いからな。二つ目に関しては、そもそも情報の有無に関わらず終わらせる案件だ。三つ目だって、アイツの自由云々の前に、情報を手に入れる為にはイーリスの監視の手から逃さなきゃいけない」


 イーリス側は、問答無用で敵だ。裏技を使われてはいるが、ルールとして全滅が勝利条件である以上、誰が出てこようと全殺しは確定だ。行う事にデメリットは一切ない。三つ目だって先に言った通りである。

 唯一、一つ目だけがそのまま信じていいか悩むところだが、そこの真偽を問うのは後回しでも良い話だ。


「怪しい奴だが、今はその口車に乗る」

『うーん……そうですか』

「気に入らないか?」

『本音を言えば、そうです。正直に言って、信じられるような人じゃないかと』

「そこは同意見だ」


 サイ。一見すれば好青年。だがこの手の輩は、職業柄良く見たことがある。所謂、営業の人間。人好きのする笑顔を浮かべ、呼吸をするかのような自然さで、自分の都合の良い様に話の流れを変える。口先の上手さは勿論の事、気さくな人柄すらも、確実に猫かぶり。アイツの本心は確実に別にある。最後のイーリスが嫌いな事も、本心には近いが、決して本命では無いだろう。


「俺だってアイツの事は信じちゃいない。けどそれは、アイツも同じだ。目的の為に利用し合う、そんな関係性だな」


 寧ろそれくらいの関係性で良い。何かあれば、始末すればいいだけの話だ。元より敵なのだから、利用価値が無くなれば、そこが縁の切れ目。今更殺すことに何の感慨も抱きやしない。

 そしてそれは、逆を言えばアイツだって同じこと。


「何かあれば、即殺せばいい。まぁ今の提示条件だけなら、アイツが嘘を吐くメリットは殆ど無いし、一旦は信じてもいいだろう」

『そんなものでしょうか……』

「割り切って問題ない相手だからな」


 割り切るってのは重要な事だ。特にこういう状況では。それにアイツの真偽については、ヴァネッサが起きた後にも把握できる。

 ミリアは渋々と言った様子だが納得してくれた。後は今この場にいない面々に説明する。反対意見の方が多ければサイは切り捨てればいい。


「とにかく……先ずは皆と合流だな」


 逸れてしまった一佳、ラヴィア、遊仙。

 未だ会っていないアリアと黒騎士。

 どっか行ったシグレ。……いや、シグレはどうでもいいか。うん。


「ミリア、調子の方はどうだ」

『まだ全然だめです。全く魔力の操作がおぼつきません』


 それは良くないニュースだな。分かっていた事だけど。

 前途多難すぎる。……いや、そもそも順調だった事なんて無かったか。

 ゆっくりと立ち上がり、疲労を存分に乗せた息を吐き出す。サイはシグレのところに行ったのだろうか、姿が見えなくなっていた。……協力してほしいなどと言って置きながら、アイツも自分勝手な奴だ。




「ふん、やっと動くか」




 心臓が止まるかと思った。

 本当に、冗談じゃなく、情けないことに。

 なんなら心臓が跳ねた。

 それくらい全くの予想外の声だった。











「……ライオット?」


 声の主の名を呼ぶ。

 気絶する前まで、死闘を行った敵。

 今も右腕が動かぬ最大の原因。

 だがサイの横槍により、コイツは矢で撃ち抜かれて死んだはずだ。


「ああ、そうだ。……生きているのが不思議か?」

「良く分かっているじゃないか。その通りだよ。テメェ死んだんじゃないのか」


 最後の光景はよく覚えている。光の矢で胴体を打ち抜かれた。どう見ても致命傷の筈だ。

 ……いや、待て。最後にサイのヤツ、確か封じるとか言っていたな。


「前言撤回だ。封じられたんじゃないのか?」

「封じられたさ。指一本動かせない」

「じゃあなんで喋れるんだよ」

「忘れたのかい? 僕は元々剣に意思を残していた。封じられる前に、剣に意思を戻しただけだ」

「ああ、そう言う事か。じゃあ剣が喋っているようなもんか」

「その通りだ。尤も、剣の状態のままだと話は出来ない。実際には君の右腕を斬り飛ばした際に霧散した魔力を通して語り掛けている状態だけどね。魔力が垂れ流し状態だから、容易にそこは繋げられた」

「待て待て、情報が多い。どういうことだ」

『パスをつないでいるような状態だと思います。実際には違いますが』

「はぁ?」

「君の魔力はこの空間に垂れ流しになっている。繋げるのは容易だ」

「俺が理解できている事を前提に喋らないでくれ……」


 つまりは、えーと、どういうことだ? 俺の魔力が空気中に霧散しているから繋げられた、って言われてもなぁ……


「口や喉を使うのではなく、僕は魔力を用いて君に語り掛けている。パスを繋げなくとも、君に語り掛けるのは容易だ」

「空気の振動で声が聞こえているんじゃなくて、魔力の振動で聞こえているってことか?」

「? まぁいい。そう言う事だ」

「絶対分かってないだろ。あー、いや、まぁ、そんなのどうでもいいことか」


 独り言なのか、誰かに言い聞かせるのか、或いは自分への暗示かも分からない呟きが零れる。そう、今はそんな事はどうでも良いことだ。


「用件は何だ?」


 わざわざ語り掛けて来た。それもいつでも言葉を発せられる状態でありながら、サイもシグレもいないタイミングで、俺にだけに。

 その行為に含まれた指向性、それに気が付くことは難しい話じゃない。


「アイツらには聞かれたくない事か」

「その通りさ。……正確には、あの裏切り者だけだけどね」


 裏切り者……シグレの事じゃないな。100%サイの事だろう。このシグレ大好きイカレ野郎が、アレの悪口を言うとは思えない。


「サイの言っている事は正しい。確かに、イーリスは元々の入り口とは別に送り込んでいる。隷属の術も掛けられている。だがそれらの事実とは別に忠告だよ。サイは前のイーリスも裏切っている。信用も信頼もするな」

「裏切られて封印されたアンタを反面教師にしろということか?」

「そんな表面上の話じゃない。だがまぁ、確かに今の僕では説得力がないか。……サイの思考回路に常識は通じない。何を言われても信じないことを薦める」

「端的で分かりやすい評価だな。にしても随分な言葉だが」

「サイの口から本心が出る事はない。呼吸をするような自然さで嘘を吐く。アレとはそれなりに組んだが、終ぞ本心を知ることは無かった」


 まぁそうだろうよ。あの表情、言葉の選び方、会話の進め方、話し方や語調……そのどれもが信用に値しない。言われるまでもなく、ずっと感じていたことだ。


「……まぁ敗者の戯言だな。今更言っても仕方がない事だ」

「いや、アイツは信用ならんと思っていた。裏付けが取れたのは僥倖だ。サイとは長いのか?」

「長い、とは一概に言い切れないな。サイとは生前からの仲ではあるが、友好を深める意思はなかった。それは前のイーリス以外の全員が同じだっただろうが」

「……ちょくちょく気になっていたんだけどさ。前のイーリス、ってどういうことだ?」


 口にして何なんだが、この会話には関係の無い問いかけだ。何せイーリスは殺さなければならない対象である。イーリスについて問いかけるのなら、もっと他に訊くべき内容はある。

 だがシュヴァルグランに見せられた光景と言い、どうにも合わぬ人物像と言い、ミリアと立てた予想と言い、そして強調される『前の』という言葉と言い。気にならないと言うのには無理がある。


「今のあのイーリスは別人なのか?」

「その通りだ」


 思いの外あっけなく肯定された。今のイーリスは別人。ミリアの予想通り、前のイーリスは依代として乗っ取られたという事だろう。


「かつてのイーリスは、聖女と言う名に振り回される小娘だった。無駄に生真面目な稀人だった。それこそ、苛立ちを覚える程度にはな」

「だけれども今はただのイカレ女」

「ああ、その通りだ。事実として乗っ取られたのだろう。久方ぶりのイーリスは、そもそもの存在が異なっていた。魂の輝きが別人になっていた」


 別人である意の肯定。なるほどね。


「キョウヘイ。君はイーリスを殺すそうだな」

「そうでもしないと、平穏が訪れないからな」

「そうか。なら、一層サイには気を付けた方がいい」

「土壇場で、裏切ると」

「その可能性が非常に高い。かつての魔族との戦いの時も、終焉を目前にしたところで、サイの裏切りでパーティーが崩壊したからな」

「おいおい……1人の裏切りで崩壊って、どれだけ結びつきが弱かったんだ?」

「元々魔族を倒すと言う目的が一致しただけの仲だったからな。結びつきの強弱云々の前に、そもそもとしてそんなのは無かった」


 後世には語り継げないであろう内容だな。実際本を読み解いた限りでは、そんな内容は一切記載されていなかった。


「イルファニアが消失し、レオニダスとフェルムが争いを始めた。この時点でパーティーは半壊していた」

「サイ以前の問題じゃないか」

「加えて僕もシグレも、強い奴を倒せればいいと考えていた。仲間内なんて知った事じゃなかった。そしてサイがイーリスを裏切った」


 情報でぶん殴られる気分だ。何もかも急転直下過ぎる。以前のイーリスとやらはどれだけ不憫だったのか。


「サイの裏切りは、魔族を撃退する前の状態での話だ。勝利が近いとはいえ、まだ確定はしていなかった。にも関わらず、サイはイーリスを裏切り、重傷を負わせた」

「とんでもない内容だな。で、裏切った本心は分からず仕舞いか」

「そうだ。事の次第はシグレから聞いたが、サイが裏切った動機については終ぞ不明なままだ」

「そして同じことが、俺たちの身にも起きるかもしれないと?」

「可能性の話だ」


 今の話だけだと、ますますサイの目的が分からない。勝利が見えたから、前のイーリスを殺して手柄を独り占めしようとしたとか? だがその割には詰めが甘い。

 生物の行動には合理性がある。それが人だろうと、獣だろうと、虫だろうと、必ず裏付けとなる理由がある。だがサイの行動に、その理由や合理性は見出せない。全くの不可解だ。


「……肝に銘じるよ。アイツを信じ過ぎると足元を掬われる程度じゃ済まされないってことだな」


 サイが単純にイーリスをまた裏切りたいのか、或いは裏切っていると見せかけて俺たちを嵌めたいのか……何にせよ、今は未だ保留にするしかないわけだ。


「そう言えば、何でサイはお前を封印したんだろうな」

「そんなことよりサイはシグレと何を話したんだ、何故僕よりサイをとった……」


 自身の事なのに、そんなことの一言で会話を一蹴する喋る剣。

 ああ、そう言えば忘れてた。サイの事は置いておき、コイツはコイツでシグレが絡むと話が出来なくなるやつだったんだ。立派なイカレ野郎なのだ。











 深呼吸を繰り返す。肺だけでなく、四肢の先まで行き渡る事をイメージして。

 それからゆっくりと、己の動作が可能な限界点を把握する。左腕はOK。右腕は……肩先までと言ったところか。斬り飛ばされたところよりは、回復している。僅かだけど。


「行くのか」

「ああ」


 ライオットの問いかけに肯定する。いつまでもここで体力回復を名目にサボっているわけにはいかない。不調絶不調に関わらず、俺は動かきゃなきゃいけない。

 幸いにして両足は動く。右腕のアンバランスさだけどうにかすれば、パッと見は普通の状態だろう。まぁここにはそんな目先の光景で騙されるような阿呆はいないだろうけど。


「せいぜい抵抗を続けろ。間違ってもあの裏切り者には負けるな」

「肝に命じとくよ」


 散々な評価だが、同じ人物から2回も裏切られればこうもなるだろう。隷属の術を掛けられていたとはいえ、さっきはよくまぁ一緒にいたものだ。俺がライオットの立場なら、確実に殺している。


「じゃあな」


 敗者にかける言葉なんて無い。ましてや殺し合いだ。もう動けないコイツがどうなろうと、知ったこっちゃない。

 それを当人も分かっているからこそのエール。エールと言うには私情100%で、皮肉すら込められた代物だったが……ま、敗者なんてそんなものだ。


「あ、そうだ。防具は貰っていくな」


 ライオットが装着していた、魔力を弾く機能付きの防具。今後使うかは分からないけど、持っていくに越したことは無い。必要なければ捨てるだけだ。放置して敵に使われる方が厄介だし。

 持ち上げてみると、思いの外その軽さに驚く。これは相当いい素材を使っているのだろう。俺のサイズには合わないが、アリアなら身に付けられるだろうか。


「そう言えばこれに隷属の術はかけられてないよな?」

「術は肉体に掛けられる。防具には掛かっていない」

『その通りですね。隷属させるには、その魂に作用させなければなりません。肉体に記さないと効果は大きく減少します』


 ヴァネッサの死体も、これまで殺してきた屍人も。言われて見れば、その身体に紋様が刻まれていた。

 念のため防具を見てみるが、これと言った紋様どころか模様一つないシンプルな造りだ。無駄を排した、戦闘をするためだけの防具。着用したが最後イーリスの支配下に置かれてしまったら冗談じゃないが、此処まで見た上にミリアもそう言うのなら心配はしなくても良いのだろう。

 それならいいかと、影の中に放り込み、


「……なぁ」


 ふと、思いつく。


「隷属の術は肉体に刻まれるんだよな?」

『そうですが……』

「物には刻まれていないんだよな?」


 再確認を取りながら、思いついた事を脳内で整理する。

 影鬼に食わしたヴァネッサの事。

 シグレやティルのように、肉体に魂が同居する例がある事。

 先ほど確認した、物には隷属の術が刻まれない事。

 或いは魔物であれば、かつてのケントの街でクシーがゴーレムと交わした様に、契約が必要な事。


「そして今のライオットは、剣が主体だ。イーリスの言う事に従う必要もない」

「それは君の言う通りだ。だが正確に言うのなら、僕があの肉体で交わした契約は、ネクロマンサーとの間のものだ。そもそもとしてイーリスは関係ない」

「だけど、今はそのねくろまんさーとやらの契約も無い状態なんだろう?」

「忌々しくも、サイのせいというか、サイのおかげで肉体を封じられてしまったからね」


 つまりは今のライオットは、あの城で分かれた時の状態って事だ。己の意志を剣に封じ込め、誰とも契約を交わしていない、誰かを乗っ取らなきゃ動く事も出来ない。そんな、ただの物の状態。


「てことは、だ」


 横たわるライオット()を指さす。


「飲み込んで、影鬼として使役できるってことだよな?」


 ミリアやヴァネッサの時とは違い、ライオットは物体に魂を宿している状態だ。ミリアのように魔力、或いはヴァネッサの様に肉体があるわけじゃない。

 だが2人に共通しているのは、当人の魔力を取り込んでいる事。なら、コイツの魂を影鬼として使役する事は、理論上は出来る筈だ。


「……ハハッ、ぶっ飛んでいるね」


 数秒の空白を経て、言葉を発したのはライオット。

 「何を言っているんだ」。そう言いたげであろうその表情が、俺にはありありと浮かんだ。


 そしてもう1人。


 魔力不足で実体化できていないし、そもそも何も発言していないけど。

 ミリアが青い顔して硬直している、その姿が。

 同じように、俺にはありありと想像できた。




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