7-8
書いている最中や書き終わった直後は気が付かないのですが、2,3日経って読み返してみると、描写が抜けているところがちょくちょくあったりします。この話で言えば、冒頭のキョウヘイが嵌められた状況とか、呪い返しのところとか。
なんで気が付けないかなぁ…
気がつくべきだった。もっと前に。
或いは疑問に思うべきだった。せめて寸前にでも。
骨の髄どころか、血の一滴まで戦闘狂のこのキチガイ女が、俺の都合の良いように力を貸してくれるなんて。
そんなの、あるわけが無い事に。
シグレの手を何の疑問も抱かずにとって。引かれるがままにあの黒い水の中に入って。
この水がどこに繋がっているのかも、術としてはシュヴァルグランしか扱えない筈のこれを何でコイツが扱えるのかも、そもそも何故わざわざこの水を通るのかも。
その全てに何の考えもせず。
俺は中に入った。入ってしまった。
「ふん、やっときたか」
水を抜ける。晴れた暗闇。その先にいる、二つの影。
民族衣装に身を包んだ、大柄な男。手には弓。
豪奢な鎧に身を包んだ、小柄な男。手には大剣。
尊大な態度で出迎えられたが、俺は両者とも見覚えが無い。だが……
「……あの剣、もしかしてだけど」
「キョウヘイの予想で正解や」
小柄な男が持っている大剣。
古臭い、しかしどことなく見覚えのあるそれ。
確かめた先で。シグレはニンマリと笑った。
もう何度も見た、楽しくて仕方がないという笑みだった。
■ 妹が大切で何が悪い ■
どうやら俺は嵌められたらしい。
目の前にいる、恐らくはレオニダスと同等の実力を持つ2人を見て。
俺はそう思った。
そして自分の馬鹿さ加減に、ほとほと愛想が尽きそうだった。
「おい、何だアレ」
思わず隣にいるシグレに疑問をぶつける。
「退屈と腹黒や」
シグレは珍しく質問に返してくれた。だがそう言う答えを期待したんじゃねぇよ。
「退屈の方は自己紹介必要ないやろ」
「おい待て説明今ので終わりか」
「ほな、打ち合わせどおりや。私はこっちの腹黒とやるさかい、そっちはよろしゅうな」
ああああああああ、本っ当に話を聞きやしねぇ!
ぽんぽん。実にイイ笑顔でそうシグレは言って、気安く人の肩を叩いた。まるで人に些事を頼むが様な態度。いや、コイツにとっては些事なんだろうけどよ。
シグレは人の返答を待つことなく、そのまま件の腹黒さんこと民族衣装の弓持ちへと向かっていった。まるで新しい玩具に飛びつく様な子供だった。
「相変わらず愛らしい奴だ。ふふっ」
そんなシグレを見てそれはそれはイイ笑顔を見せる大剣使い……いや、ライオット。シグレの言葉はともかくとして、ティルの可愛らしい外見から随分と変わった事もあり、人違いだと思いたかったが……あのキチガイ戦闘狂に向けてあんな気色の悪い感情を表に出来る奴を、残念なことに俺は他に知らない。
「アレを愛らしいと思えるとか、本当にお前らお似合いだよ」
「ほう? 意外と見る眼があるじゃないか。前回の事と言い、中々見上げた目の付け所をしている。全く……こんな形で無ければ、きっといい仲にはなれただろうに」
……皮肉が何も効いちゃいねぇ。全然何も会話になってないんだけど。シグレ程とは言わないけど、コイツも相当だよ。ゴリッゴリにこっちの精神が削られている気がする。
「構えたまえ、キョウヘイ・タチバナ。君は絶対に殺す。僕とシグレの為にもね」
「……俺に構わず、アイツを屈服させたらどうだ?」
「勿論、それもする。だがね。僕は僕自身を差し置いて、シグレの関心を集める奴が気に入らないんだよ」
それはそれは歪んでいる事ですね。皮肉と一緒に溜息を吐き出したかったが、寸でのところで飲み込む。何だか此処に来てから、絶対溜息を吐く頻度が増えたと思う。
「関心? ただ玩具扱いされているだけだろ。アイツに取っちゃ俺なんて一時の退屈を紛らわす程度の存在だよ」
「はぁ? ならば寧ろ、玩具扱いしてもらえることに感謝をするべきじゃないかい? 君は一時と言うが、ならば一時でも関心を引けたことを泣いて喜び感謝すべきだろう。それがせめてもの君の存在意義と思わなければならないのでは? それともそんなことも分からないのかい? 御立派な頭をしていると思ったが蜘蛛の巣の張った不良品と言う訳だ。全く……せっかく話が合うと思ったのに残念で仕方がないよ。君も結局はそこらの有象無象ってなわけだ。シグレも何故こんなのに関心を寄せるのか理解に苦しむね。本当に残念だ」
……あああああああああ! もう!
だから! 会話に! なりやしねぇ!
ズレてんだよ! 色々と! コイツも!
「不愉快だ。構えたまえ。これはせめてもの最後の忠告だ」
「従わなきゃ、次は問答無用で斬りかかる、と?」
「ご名答。尤も――――」
姿が一瞬ブレる。
来る。直感的にそう悟るのと、防ぐように左腕を前に出したのは同時。
瞬きの間に距離を詰め、振りかぶられたその大剣を、魔力を籠手代わりに受け止め、いなす。
「ふん、苦しまずに殺してやろうと思ったのだがな」
蔑むような一言。呪詛に満ちた眼。
付き合ってられん。言葉の代わりに右足を軸に、牽制代わりに左足を振るう。
だがまぁ、易々といなされる。牽制代わりとは言え、それなりに力を込めたのだが……奴さん、アリアと同じように、剣術だけでなく体術もイける口らしい。
「っ、ほう?」
「チッ」
剣は振るわせない。密接した体勢のまま、それよりも先に拳を顔面に。それを避けられれば、そのまま密着して肝臓のあたりへ右膝蹴り。鎧だろうと関係ない。寧ろ鎧頼みなら好都合。そんなもの、叩き壊すぐらいのつもりで、魔力の放出を上乗せする。
だが鎧に触れると同時に、魔力が弾ける。
当然だけど密着状態って事は勢いも半端だ。魔力のカバーが無ければ、鎧を壊すことも、鎧越しに衝撃を与える事も、何も叶わない。
『げっ、ヤバいです! 魔力が弾かれました!』
「気付いたようだね。この防具の効果に」
返す刀で振るわれる大剣。それを飛び退いて避ける。
脳内に響くミリアの焦ったような声と、対照的に冷静そのもののライオットの声。コンコンコン。見せつける様にライオットは、己の鎧を叩いて見せた。
「これでも全盛期は四方八方から魔法が飛び交う戦場で剣を振るっていた身でね。無論有象無象の魔法程度であれば、対魔力である程度無効化できるとは言え、煩わしい事に変わりはあるまい?」
「あー……つまり、そもそも鎧に魔法関係を弾く仕掛けがあると」
「より正確に言えば、魔力を弾く。まぁ、卑怯などとは言ってくれるな」
言わねぇよ。言わねぇけど、まぁ、面倒くせぇなぁ。
「仕掛けが鎧だけなら、テメェの顔面にぶち込む分には問題はないと」
「その通りだ。勿論僕の対魔力を上回ればの話だが……そもそも、それが可能とでも?」
「可能不可能の話じゃない。やらなきゃいけない。それだけだろ」
「ふん、弱音一つ吐かないか。……気に入らないが、流石に彼女が気にかけるだけあるようだな」
ぐるり。ライオットは大剣を器用に腕の上で回転させて構え直した。無駄の多い気障な仕草だが、コイツがやると随分と絵になることだ。
「さぁ、好きに来るといい。君の……いや、貴様の全てを叩き潰して、僕が勝ってみせる」
言葉は漫画の主人公サイドみたいだ。いや、主人公サイドか。だってイーリスがどんな思惑を持っていようとも、彼らからすれば俺は魔族側に付いた裏切り者で、人間たちの世界を滅ぼそうとする手先なんだから。主人公サイドどころか、主人公と見ても不思議じゃない。……どーだっていいことだけど。
「俺から向かっていっていいのか?」
「せめてもの情けだ。許そう」
そりゃいい事を聞いた。どういう思惑かは知らんが、そっちがその気なら、乗せてもらおうじゃないか。
「ミリア」
『はい!』
呼びかけに即座にミリアは反応してくれた。細部まで事細かに指示をしなくても、彼女は俺の思考を十全に理解して準備をしてくれる。
右腕に魔力が渦巻く。体内の魔力を全てこの一撃に換算するために。つながっている魔力のパイプ。此処には居ないネムからも、一切の躊躇い無くその魔力を借りる。
「先に言っておく」
ブラフも込みで。俺はライオットに向けて口を開いた。
「テメェ以外に、まだイーリスも倒さなきゃならん。長い時間をテメェに費やせないんだ」
「……ほう? つまり、その魔力は」
「ああ。取り急ぎ、テメェにぶっ放す。その分だ」
要は右腕の一撃で終わらす。
俺の思惑を、ブラフを。どこまで読んでいるかは知らないが。
ニヤリと。ライオットは嗤った。
人を見下すのではない。
獰猛な猛獣のような、そんな笑みだった。
■
魔力を指定する部位に集中させる練習は、準備期間の一か月の間に何度も行ってきた事だ。
この世界では当たり前の様に行われている事でも、俺は何も知らないなんてことはざらにある。
魔力の集中はその一環。幾らミリアがサポートしてくれるとは言え、俺の中の魔力を司る器官が相応の動きをしてくれない限りは、魔力の効率的な運用にも限度がある。
『準備OKです』
響くミリアの声。彼女の言葉の通り、右腕からは充分過ぎる魔力を感じる。何とは無しに身体が重く感じるのも、普段は身体を動かすのに使用している分を、右腕に集めたからだろう。右腕以外の余計な箇所に、今は魔力を使用していないってことだ。
「大した量だな」
ライオットは宣言通り、その場を動かなかった。それが余裕によるものなのか、それとも絶対的な自信のつもりなのか。意図は不明だが、何にせよこの魔力に動じない辺りに、鎧に対しての信頼はあるのだろう。
「準備が出来た。そう言う事でいいのだな?」
「構わねぇ」
「そうか……なら、来るがいい」
ライオットは地面に刺していた大剣を抜いた。その様相はどこかボロさを感じるが、そんなのただの見てくれの問題でしかない。
どういう機能なのかは分からない。だが少なくとも、引き抜いた地面には突き刺した以外に、余計な罅も何も無い。よっぽどライオット自身の力加減が上手いのか、或いは見るだけでは分からないようなコーティングがされているのか……何にせよ、あの大剣の切れ味は見てくれに左右されないことは分かる。
「影鬼」
警戒すべきは大剣だけじゃない。ライオットはラヴィアの様に斬撃を飛ばせる。ティルの時と違って、力を存分に震える身体を持った今、威力は数段は上がっていると見るべきだ。
魔力の一部を影鬼に回す。ミリアのサポートがあるとは言え、こちらも操作精度は上がっている。俺の全身を覆うように、影鬼を展開する。
「ふむ。カバーして、どうするつもりだ?」
「さぁな」
影鬼には俺の身体の形を記憶させている。……より正確には、俺の身体を無意識にでも象れるように準備をしてきた。例え俺がこのまま影鬼を通して影の中に入ってもだ。
そう、影の中に入る。
真正面から斬りかかっても、恐らくは防がれるだろう。故に、不意を突く。
『こちらは私が操作します』
「頼んだ」
今地表に立っている影鬼の操作はミリアに任す。俺は影鬼の創り出した影の中に潜み、ライオットが影鬼に集中した際の隙をついて、一撃で終わらす。どれだけ腕が立とうと、不意さえつければ可能性はある。
視界の共有で、俺は地表に立っている時と同じ目線でライオットを見る事が出来ている。影の中に入ったはいいが、外の事が何も分からなかったこあの頃とは違う。後はタイミングを計るだけだ。そしてそれはミリアに任せている。どういうタイミングであれ、俺はコイツが晒した隙に向けて、不意を突くだけの話だからだ。
……だが、
「タイミングを計るのは結構だが……待ち過ぎては機を逸するぞ?」
ふざけている。そう思った。或いは、もしかしたらアイツなりの駆け引きなのかもしれない。
あろうことかライオットは剣を構えたままゆっくりと一歩を踏み出した。瞬時に距離を詰めるあの瞬発力は欠片も無い。ただ歩くが如く、アイツは一歩を踏み出た。
「っ!」
それに応じる様にミリアが飛び出す。振りかぶった右腕。それは顔面に向けるぞというアピール。……言っちゃ悪いが、ワザとらしさを感じる下手糞な攻撃。
だがライオットは何も慌てない。嘲るような笑みを浮かべる余裕すらコイツにはあった。
「ふん」
右腕が届く、そのほんの刹那の間。神速としか言いようのない速さで大剣が振るわれる。
斬り飛ばされる影鬼の右腕。だが何か違うと。ライオットも思い当たったのか怪訝そうに眉根を寄せる。
――――この瞬間しかない。
掴み取った隙は刹那にも満たないだろう。すぐにでも察知され、瞬き程度の遅さ背でも迎撃されるに違いない。
故に。気づかれるよりも早く、俺は既に魔力を込めた右腕を背後から振りかぶり、
「ふぅ……その程度の策か」
■
斬り飛ばされた。右腕が。
当たり前だけど、俺は斬り飛ばされた経験なんて無いから、「あぁこういう感じか」なんて他人事のような感想を抱く。
抱いてから、激痛。
喪失感に耽る間もなく、経験した事の無い痛みが俺の右腕を襲い、暴れる。
「気が付かないとでも思ったのか。あれだけ魔力を垂れ流しにしておいて」
ライオットが振り向かない。今しがた背後に向けて行った動作を、何の感慨も無く、まるで当たり前だと言わんばかりに。そんな、絶対的な、余裕。
「術で全身を覆い、能力を底上げしたように見せかけて、実は自身はそのまま足元に隠れると。それでもって隙をついて一撃を見舞うつもりだった。そんなところだろう……ふん」
此方の作戦をピタリと言い当ててくる。鼻で笑うおまけ付きで、期待外れと言わんばかりの態度。
「不愉快だよ。この程度の策で斃せると言う思い上がりも。その程度の策で充分としか捉えられていない未熟さも。こんなのを危険視する程度のレベルの低さも。あぁ、何もかもが不愉快だ」
ビッ、と。大剣を振るって汚れを落とす仕草すら見せる。
既に最初の影鬼は消えた。溜めていた魔力も斬り離された事で、虚空へと霧散していく。だがそこに注意を払う事も出来ない程に、右腕が痛みを訴えている。せめて呻き声を上げない様にと歯を食い縛るのが俺の精一杯で限界だ。
「せめてもの情けだ。僕が振り向くまでにその首を差し出せ。一撃で終わらせてやる」
阿呆言うな。そう言いたかったが、痛みを抑え込むのに精いっぱいで何も口に出来ない。情けない事だが……これ程までとは思ってもいなかった。
ミリアは……彼女は戻っている。影鬼を立体化して維持できない時点で、無理矢理残る事に意味はないと言う判断だろう。せめて痛みを和らげようと動いているようだが、それを拒む。今はそれよりも他にやることがある。
「まだ、戦うか」
再び、一撃。振り向きもせずに今度は左腕。魔力も込めていないそれは、簡単に斬り飛ばされた。此方は右腕ほど痛くはなかった。
「見苦しいな。……もう、終わりだ」
此方の状況は把握しているのだろう。俺の魔力だけでよくもまぁ正確に把握できるものだと、感心を覚える。カタリナなら騙せたんだけどなぁ。だけどそう言えば、シグレも把握していた。あのレベルなら把握出来て当然なんだろう。
尚も振り向かないのはただのカッコつけか。何にせよ、
「さぁ、これで――――っ!?」
「作戦通りってわけだ」
驚きに一瞬ライオットは身体を硬直させた。先ほどの余裕とは違う、明確な隙。だがすぐにでもその硬直を解くだろう。
ならばこそ。そこを逃さず、背後の影の中から飛び出て、ライオットの首に左腕を回す。
「悪いが、右腕は呪い返しでまだ感覚無くてな。左腕だけで失礼する」
言葉の通り、まだ右腕の感覚は無い。存分に魔力を込めたのが仇となったのだろう。だけど仕方がない。そこまでしなければ、きっと騙せなかっただろうから。
「貴様っ、何故っ!」
「アンタが斬り飛ばしたのな。アレ、俺のブラフ」
ブラフ。より正確には、右腕部分に渾身の魔力を込めた影鬼。
例え影の中に入っていても、魔力で位置を特定されるのは、アルム王国でのシグレの件で経験済みだ。ある意味では予想通り、本当に正確に、コイツは俺の影鬼の右腕を斬り飛ばしてくれた。……おかげで強烈な呪い返しを喰らった訳だが。
「逃がさねぇよ」
左腕をしっかり首に巻き付ける。息を吸う事が出来ない様に、気道を全力で潰す。チョークスリーパーの左腕だけver。右腕が動かないのだから仕方がない。残していた魔力を左腕に込めて、全力で締め上げる。
呪い返し。呪術の失敗による、術者へのフィードバック。
マノのダンジョンでのミリアの件で分かっていたつもりだったが、とんでもない。痛いなんてもんじゃない。動けと言う頭からの命令を無視するほどに、痛み以外の感覚が飛んでいる状態だ。そりゃあの時のミリアが、影鬼の頭を潰された事で気絶した理由がよく分かる。と言うか現在進行形で分からされている。
「な、ぜ……」
「駆け引きってのは交渉の基本だからな。この手の事は得意なんだよ」
相手の目標に対して分かりやすいゴールを幾つか用意してやる。この場合で言えば、俺の策を看破するというライオットのゴールに対して、
①影鬼で真正面から真っすぐに向かう。
②影鬼の中に潜んで①の失敗後に不意打ちを喰らわす。
この2つってわけだ。
「く、そ……」
①の見え見えの罠に対して、先に全力の魔力を見せる事で、②を看破させやすくする。②まで看破すれば、相手はいい気分になる。気に入らないやつを見下しているのなら尚更だ。見え透いたゴールに思考を誘導さえすれば、本命がバレる可能性は極端に減る。それこそ俺がその後に用意していた、
③魔力無しの筋力のみで首を絞めて落とす。
④仮に③を防がれたら、ミリアの影鬼の不意打ちで拘束する。
という策は見破られなかったわけだし。
「原低活動と同じだよ」
相手の目標価格に対し、此方は幾つか案を見せる。その殆どは大した効果額にならないし、行うにしても色々と条件が必要だったりする。だけどそう言う案を見せる事で、実際に活動していると見せかけ、協力姿勢をアピールできる。
実際にはもっと効果のある案があるのだが、それは表には出さない。だってバレたら相応の売価に下げる事を要求されるわけだし。
「……もう、聞こえちゃいねぇか」
膝を着き、締め付ける力に従う様に、そのまま後ろへとライオットは倒れた。
だが尚も力を緩める事はない。
ジャックの時と同じだ。
死者に鞭を打つ、のではない。絶対に生き返らないように、念を入れる為だ。




