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6-10

21/8/17 誤字脱字修正

 格闘技の話になるが。

 同じ相手と何度も公式戦で戦う事は、あり得ないと聞く。

 業界の風習や、ジム同士の意向、というだけではない。

 格闘技と言うのはどうしても怪我が多い職種であって。次の試合へは身体の回復や調整に長期的なスパンを要求される職種であって。

 つまりは、蓄積したダメージによっては。いつ引退するかも分からない世界ということであって。

 それ故に、同じ相手と何度も拳を交わすことは、そうそう無い――いや、出来ないと。

 そう、俺は聞いた事がある。




 三回目。いや、細かい回数で言うなら、四回目か。

 見逃された一回目。

 ミリアを犠牲に逃げ延びた二回目。

 アリアとネムと協力して、どうにか撃退できた三回目。

 コイツと拳を交わすのは、つまりは、これが四回目になる。

 ……信じられるか? 殺し合いを三回。そしてこれが恐らくは四回目。

 手加減をする筈もなく、互いに殺意をぶつけ合って、四回目。


「嫌な縁だ」


 愚痴未満の言葉を零し、一歩前へ。

 試合ならまだしも、殺し合いで四回目の邂逅。

 しかも何かしらの明確な、俺たちが交わざるを得ない理由があるわけでは無い。

 つまるところ、それは。認めたくは無いが、俺とこのイカレ女(シグレ)との間にはどうにも強固な縁があるということで。それは理屈でどうのこうの言い表せるものじゃなくて。

 ……ああ、まったく。本当に「縁」とやらがあるのであれば。

 断ち切る事が出来たらどれだけ楽な事か。











■ 妹が大切で何が悪い ■











 瞬きの間に。シグレが距離を詰めてくる。得物の切っ先は真っすぐに俺の心臓へ。最短距離を真っすぐに、最速に。

 受ける、ことは出来ない。俺にはもう手甲が無い。だが避ければ、そこから軌道を変えて追撃に移られるだけだろう。コイツならその程度、天性のバネで容易く行なってくるに違いない。

 なら、


「任せた」


 アリアに、ではない。俺に付いている、もう1人の相棒(ミリア)へ。

 そして迎撃すべく、俺も左拳を真っすぐに、シグレの軌道に被せる様に放つ。


『あああああ、また無茶をっ!』


 脳内で嘆きに似た言葉が響くが、言葉とは裏腹に左腕全体を護る様に魔力がカバーする。流れるような魔力操作。俺が行うよりも段違いの速度と精度だ。

 魔力を手甲代わりに。……本当に、共有しているとはいえ、ぴったりに意思を汲んでくれる。


「へぇ」


 シグレが嗤う。嬉しそうに嗤う。

 俺の左拳に刃先が触れ、魔力により切っ先の軌道が流れて。

 その瞬間に、感心めいた笑みを、コイツは浮かべた。


「……っ」


 コイツと無駄な言葉を交わす趣味は無い。そもそも戦いたくもない。視界にだって収めたくない。

 だから。切っ先が逸れた、その瞬間に。

 全力で右拳を顔面に向けてぶっ放す。こちらは魔力操作が間に合わず、単純な力による一撃。

 だが分かっていたかのように、シグレは首を捻っていなす。


「っ!」


 まるで軽業師の様に、シグレはそのまま俺の横腹に蹴りを入れて距離を取った。どういう判断と、身体の使い方なのか。相変わらずの規格外。気持ちの悪い女だ。


「後遺症は無いようやな」

「おかげさまでな」


 今の一瞬。交わした刹那の拳と刀。それだけでシグレは俺の状態を粗方把握する。少なくとも、イーリス聖教国で負った傷は、完治している事を把握される。……いや、それはお互い様か。俺もアイツの動きから、あの国で与えたダメージは回復された事を理解したのだから。


「今はテメェに構っている暇ないんだがな」

「はっ、そないつれないことを言うもんやない。女と男、会ったらヤる事は一つやろ」

「テメェを女と思ったことはねぇよ」

「ほんとつれへんなぁ――――おっと」


 俺の真横を、炎の渦が通り過ぎる。それは意思を持つかのように、シグレに襲い掛かるが、


「……チィ」

「残念やな、その程度ならもう効かんのや」


 一閃。それだけで炎の渦は霧散する。アリアの一撃は霧散する。


「もう、喰うた」


 そう言って、シグレは切っ先を転がる死体に向ける。俺たちが部屋に入った直後に、目前で斬られて崩れ落ちた誰かの死体。


「……これでも竜種の炎だ。あの時(前回)よりも威力は落ちているが、それが霧散するということは……まさか」

「多分アンタが考えてるコト、正解や」


 切っ先に炎が灯る。シグレの刀に灯る、だがそれはアリアが灯したものよりも大きい。……今までに見た中で、一番大きい。


「『炎帝』は、喰った」

「っ、化け物がっ」

「さぁて、これくらいは越えてもらわな。……喰らえ」


 その切っ先を振るわれる。俺たちに向けて振るわれる。


「なんて言うてたかな……まぁ、ええか」


 炎の渦、なんて。そんな生易しい表現ではない。

 シグレの放った炎。アリアの炎の三倍以上はある大きさのそれは、俺たち二人を飲み込む程度など造作もなく。

 当然、避けるスペースも、時間も与えられる筈もなく。

 だがせめて。何か策を考えねば待っているのは死だけ。

 ならばこそ、目前に迫ろうとも頭の回転だけは止める事無く――――


 ――――中に入って……

「『影鬼』っ!!!」


 判断は一瞬。直感を信じた手立て。理由は経験と記憶による後付け。

 咄嗟の呼びかけに、しかしミリアは分かっていたかのように俺の影を隆起した。

 顕れるは、俺よりも頭一つ分は大きいであろう人型。記憶のよりも大きな人型。……充分な大きさの、人型。

 その人型に隠れる様に、俺はアリアの手を引いて。炎が俺たちを飲み込むよりも先に、自分から飲み込まれに行く(・・・・・・・・)











 あのダンジョンで。シグレに襲われる直前に。

 ミリアが脱出の策を考えていた際に。

 彼女に言われた一言がある。

 『影鬼の中に入って移動する』

 それは瘴気から身を護り、元の世界に戻る為の方法。

 実行したことは無い。その前にミリアは殺された。そして策が形を成す前に、シグレと戦わざるを得なかった。

 ……そしてその後、この事を思い出すことは無かった。

 当然だろう。だってまさか、俺が影鬼を使えるとは考えもしなかったのだから。


 で、だ。


 じゃあ影鬼に飲み込まれる事で。今回のシグレの炎の渦を回避できるかと言うと、それは恐らく無理な話だ。

 何故ならば。影鬼はダメージを受ければ霧散する。

 俺の一撃で消し飛んだように、シグレに斬り刻まれたように。

 今回も、炎の渦によるダメージに耐え切れなければ霧散するだろう。

 その霧散の際に、俺たちも一緒に霧散するのか、それとも炎の渦の中に吐き出されるのか。

 いずれにせよ、待っているのは死だけだろう。

 影鬼に飲み込まれて、それで身を護ろうとするのならば、だ。


 では。此処からは今まさに思いついたばかりの仮説になるが。

 影鬼と共に、影の中に退避したらどうなる?

 影の中に隠れたら、あの炎の渦は回避できるのではないか?


 勿論今言ったように、これは練習も何もしていない完全な思い付きだ。

 だから。今の俺の行動は、まさかの一発勝負。練習も何も無しの、もっと言えば出来るかどうかの理論を構築しているわけでもない、思い付きを本番にぶつけるという愚行。

 だが例え愚行でも。実行しなければ炎に飲み込まれて死ぬだけだ。


「キョウヘイ、これは」

「悪いな、俺も説明できるほど理解しちゃいない」


 結論から言えば。どうやら回避には成功したらしい。

 真っ暗な世界の中。一寸先も見えない暗闇で。

 俺は抱きしめたアリアだけを感じている。彼女が生きている事を感じている。


「多分、回避できた」

「……そう、だな。全く、何時の間にこんな術を」

「今しがただ。完全な思い付きだよ」


 平時の俺ならば、絶対に取るはずの無い行動。理論の構築、安全性の証明、問題なく実行できるような練習。それらを一切介さずに、思い付きだけで実行するなんて……本当に、薄氷を履むが如しってやつだ。


『やり過ごせました!』

「よし、アリア」

「ああ、行こう」


 余計な言葉張らない。ミリアの判断に、覚悟を乗せる。アリアも同様に、乗せてくれる。

 ならば、あとは。

 アイツをぶちのめす。

 それだけだ。




「はっ、やっぱりなぁ!」


 影鬼から身を放出させる。

 恐らくは床の影に同化していたのだろう。

 位置が多少変わったが、それでも射程範囲内にシグレは居る。

 ……分かっていたと言いたげな、興奮を隠さない笑みを浮かべて。


「避けるわなぁ! アンタならそうやと信じてたで!」

「良いから……っ」

「死んどけっ!」


 別々の方向から、俺たちはシグレに襲い掛かる。

 二対一は卑怯、なんて。そんな言葉は言っていられない。

 確実に潰す。それだけだ。


「キヒッ、ヒヒッ、そう来なくちゃなぁ!」


 嬉しそうにシグレが嗤う。何度も見た笑顔。可憐で、可愛らしく、そして何よりも悍ましい笑顔。人に向けるには適さない、異常者の笑顔。

 その顔面に、躊躇い無く右拳を放つ。

 鼻が潰れようが、眼球が飛ぼうが、口が裂けようが。

 どうなっても構わないと言う、殺意だけを乗せた一撃。


「キヒッ」


 そこに、カウンターを乗せられる。俺の一撃が届くよりも先に、刀が俺の顔面を突き刺す方が早い。刹那の差だが、このままでは先に命を散らすのは俺の方だ。

 そう、このままなら。


『影鬼っ!』

「っ、チィ!」


 刹那の差。その僅かも無い間に。

 ミリアが先に術を完成させる。軌道を完全に読んだかのように、俺の視界を遮らず、しかしシグレの一撃は防ぐような、ピンポイントでの出現。


『術の解釈は無限ですっ!』


 ミリアの言葉は分からない。彼女が何を意味し、何の確証を以って術を行使したかは分からない。

 分からないが、ミリアを信じる。ミリアを信じて、俺は行動を止めない。シグレの顔面を躊躇い無く――――殴り抜くっ!


「――――づっ」


 今度は首を捻っていなすのではなく、バックステップ+スウェーでダメージを抑えられる。当たらなかったわけじゃないが、鼻先をかすめられた程度。殆ど無傷だ。


「逃がすかっ」


 追撃はアリア。先回りするかのように、逃げた先でアリアが大剣を振り下ろす。当たれば真っ二つだろう。……当たれば。


「……せめて万全の状態で来てくれへんか」


 くるりと。バックステップの勢いだけでバク転。そして脇差を大剣の腹に、正確にぶち込む。


「ガラクタで仕留めようなんて、甘く見られたもんやな」


 ありえない、何てことは無い。それはこの世界に来て嫌という程味わっている事。目の当たりにしている事。

 とはいえ、だ。

 竜種の最高硬度の剣を、脇差で貫く(・・・・・)、なんて。

 そんなの予想できるはずもなく。


「想像が足りひん」


 意外さに驚き、一瞬の迷いが生じたアリア。その隙をシグレが逃す筈も無く、ぶっ刺した脇差を支点代わりに、軽やかな体重移動でアリアに蹴りを喰らわした。


「っ――――ふんっ!」


 だがアリアもアリアで負けちゃいない。蹴られた不十分な体勢ながら、シグレの爪先を掴む。掴んだ面積は小さいが、同じく体勢が崩れたままのシグレを、そのまま地面に叩きつけるかのように振り下ろし、


「おっと」


 しかし、するりと。アリアの拘束から抜け出すと、シグレは軽やかに、俺たちから少し離れた場所に着地する。互いに次の一手を狙うには、僅かに距離がある距離。最短距離を最速で駆けても、迎撃はギリギリ間に合うであろう絶妙な距離だ。


「いやぁ、流石に2人はキツイなぁ」

「……ふんっ」


 どの口がキツイとほざくか。そんな飄々と相手取っていて、相変わらずの涼しげな表情で、そんな事を言われてまともに受け取るやつがどこに居るかって話だ。

 しかし何と言うか……これは誤算だ。シグレ1人に未だに2対1でいい勝負を演じられている程度じゃ、最終審判でイーリス側に勝てる望みは、非常に薄いと言わざるを得ない。何せ最低でも、イーリス側はコイツ程度の人選を行うであろうからだ。


「嫌になるよ」

「まったくだな」


 アリアも同じ考えらしい。いつもの不敵で勝気な顔も、今ばかりはうんざりだと言いたげに歪められている。

 単純な事実として。前回のイーリス聖教国では、俺とアリアとネムとミリアの4人で、どうにかシグレを追い詰めた。

 4人がかりで、漸く。

 しかも誰もが重傷を負い、疲労困憊という始末。

 さらには一佳曰く、イーリス聖教国の面々を殺しまわってから、アレは俺たちと戦っているのだ。

 その事実と実力差に、溜息が零れ出そうだ。











「アンタらの狙いはライオットの武器やろ」


 ぽんぽんぽん。汚れを落とす様に、シグレは脇差を叩きながら、無駄口を挟んでくる。次の手で迷っているところへ、絶妙なタイミングで言葉を差し込んでくる。


「……ご名答だよ」


 答えるか、否か。一瞬悩みはしたが、黙っていても意味は無い。アリアとアイコンタクトで意思の疎通を図り、俺から回答する。


「見ての通り、アリアの武器は状態がよろしく無くてな。いい武器を貰いに来た」


 正確には盗みに、だが。まぁそこはもうどうでもいい。手に入れると言う目的は変わらないのだから。


「せやろなぁ。このタイミングでわざわざ此処に来るなら、そうやろと思っとった」


 タイミング、ねぇ。主語は省かれているが、きっと最終審判の事だろう。これは高確率でイーリスから話が来たに違いない。


「テメェは何で此処に?」

「ん? んー、そうやなぁ……此処に来れば、面白そうなん見れるかと思てなぁ」

「なんだそりゃ。そんな理由でここの人たちを殺しまわったのか」

「それは単なる結果や。逃げるだけなら放っておいたんやけどなぁ。まぁ逃げたところで、負ければ全部終わりやけどねぇ」


 負ければ全部終わり、か。


「……イーリスから、話は言っているってことか」

「イーリス? あぁ、せやな、あれもイーリスか」

「?」

「……こっちの話や。答えはYes。話は来とるで」


 そう言って。シグレはつまらなそうに鼻を鳴らした。……意外な、仕草だった。


「胡散臭いヤツやったわ。言っている事は本当やろけどな」

「胡散臭いってのは同意するよ。アレが本当に初代聖女かと疑わしいくらいだ」


 同意を示す。別にコイツと会話をしたい訳じゃないが、なにか有益な情報を手に入れられそうだと。そう思ったからだ。

 それに……シュヴァルグランが見せてきた記憶の中では、シグレにそっくりの奴がいた。それに宮下の言っていた、妖刀のくだり。

 多分だが、シグレはもしかしたら……


「初代聖女は、あんなんなのか?」

「さぁ? ま、私が知っとるやつは違うけどなぁ」


 そりゃあまた……判断に困る返答だ。だが昔馴染みの様な一言は、シグレが聖女と何かしらの関係を持っていた事を示しているようにも聞こえる。


「アンタらのところにも来たんか?」

「あぁ」

「ふぅん。やっぱりなぁ、話がおかしいわぁ」

「?」

「アレはなぁ、アンタらと戦う場を設けてやるって言うてたんや」


 ああ、そういうことか。シグレの言葉の前提には、イーリスからこの世界の為に戦う様に連絡が来たか、と言った具合の一文があるのだろう。だから俺の返答に疑問を持つわけだ。


「何から何まで気に喰わん相手や」


 訝しむ、どころではない。嫌悪。隠す事の無い敵意。今まで見せていた喜悦や不満とはまったく別種の感情。


「戦いは与えられるもんやない。双方が同意したら、その場で始まるもんや。そうは思わんか?」

「アレが気に喰わないことは同意するが、それ以外は同意しかねる」

「イケず、やなぁ」

「黙れ、テメェと相対していたら命が幾つあっても足らないんだよ」


 それこそ、今こうして命があるのが、奇跡的な具合に。

 今までの事を思い出し、かつて負った傷が幻痛を訴え始める。……本当に、疫病神もいいところだよ。


「……長話、し過ぎたみたいやな」


 忌々しそうに。シグレは渋面を作った。そして俺たちから視線を切ると、そのまま開け放たれたドアの先へと向ける。


「っ!?」


 反応は、多分同時。

 俺もアリアもミリアも。

 シグレから僅かに遅れる形で、ドアの外から漂う嫌な威圧感に、反射的に反応を示す。

 ……嫌な、なんて。そんな簡易的な表現じゃないな。まとわりつく様な、肌の上をゆったりと這いずり回る様な、そんな気持ちの悪さを覚える、威圧感。それはまるで、あのダンジョンで襲撃を受けた、呪いの集合体のようで。だけど比較にならないぐらい禍々しくて。


「……飲まれたか。残念や」


 一方で。シグレは相手の正体に心当たりがあるらしい。だが言葉とは裏腹に、そこに込められているのは明らかな失望だった。


「……知ってんのか?」

「せや」


 深くは言うつもりは無いらしい。ただの頷きだけで、俺の疑問は流される。


「面白い拾いものやったけどなぁ」

「拾いもの?」

「……まぁ、待ちぃや」


 シグレは再びつまらなそうに言葉を吐き出した。

 ドアの向こう。何も見えない漆黒。そこに誰が居ると――――いや、待て。漆黒?


「……何だ、あれは」


 アリアが零した言葉には、小さくない震えが込められている。そりゃそうだ。今は未だ日中。ドアの外が光も差し込まない漆黒に支配されるなど、あり得ない。

 黒で塗りつぶしたその先に、いったい何が佇んでいるのか。分からないことが、余計に嫌な想像を掻き立てて、




「やぁ、シグレ」




 声がした。

 俺たちの後ろ(・・)から、声がした。




「何年ぶりかい?」

「知らんわ。一々数えてられへんわ」




 シグレは振り向かない。何の驚きも見せず、今までと変わらぬ態度のまま、俺たちの後ろにいる人物と会話をする。




「つれないなぁ。せっかくの再会だってのに」

「言うたやろ。力のままに振る舞う奴は嫌いやない。けど、力に振り回される奴はつまらん、って」




 既知の仲、ということか。だがシグレの声は冷め切っている。それこそ、気に喰わないやつと喋るかのような、不機嫌さを隠そうともしない口調。




「狂人程度が、今更何の用や」

「別に。ただ、せっかく身体が手に入ったんだ。やっぱりかつての仲間に挨拶はしないとね」

「要らんわ、気色悪い」




 そこで初めて。シグレは振り返った、忌々し気に顔を歪め、つまらなそうに鼻を鳴らしながら。

 その動きに連動するように、俺たちも後ろを振り向く。

 ――――男の子だ。

 まず、そう思った。

 ネムより少し大きい程度の身長。体格は黒いローブを纏っているせいで分かり辛いが、筋骨隆々と言った感じではない。多分小柄で、相応の肉付きなのだろう。


「ええ具合のガキを拾ったと思ったんやが、こうも簡単に飲まれる様やと、その甲斐も無いわなぁ」


 そう言って。

 シグレは刀を抜いた。

 抜いて、真っすぐに今現れた人物へ向ける。


「キョウヘイ。一旦お預けや。先に、コイツを始末するさかい」

「出来るかな、君に。全盛期とは遠いだろうに」

「そらお互い様やろ。御託はええねん」


 盛大な溜息。それから、シグレは何の気負いも無く一歩踏み出す。アレに向かって踏み出す……いや、近づく。一切の笑みの無い、本当につまらなそうな表情で。


「じゃあ、やろうか。シグレ」

「今度こそ殺したるわ、ライオット」


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