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毎日更新できる方を尊敬しています。
ホントに難しい、、
※19/1/27 誤字脱字修正
※20/1/20 誤字脱字修正
PM9:00。
カルベの街で評判の宿屋。
共同の風呂にて汚れを落とし、部屋に戻る。
そして部屋の中心に位置するベッドに倒れ込んだ。
今日は随分と濃い1日だった。
振り返り、改めてそう思う。
「……何て1日だよ」
全く別の世界。
バレットドラゴンの強襲。
死別した同期。
骸骨共の襲撃。
アリアとの出会い。
思えば、殆どがただただ幸運に助けられた1日だった。
「……無事だろうな、一佳」
一佳は俺と違ってゲームに明るい。だからスタート地点で躓く様な事は無いと思う。
だが世界が世界である。現代日本とは勝手が全く違うのだ。前向きに物事を捉えるには不安要素が邪魔をする。
……せめて無事かどうかだけでも分かれば――――
「……そうだ、スキル」
……すっかり忘れてたが、俺のスキルの中には『探し人』がある。効果は探しものが見つかりやすくなるとの事。レベルが上がればより詳細に探せるようになる、らしい。だが今に至るまで、このスキルを使う機会は無かった。
早速ステータス画面を開き、スキルの項目へ移る。
そして『探し人』の項目をタップし、
「……そう言えば、どうやって使うんだ?」
タップしても何も変わらない。念じればいいかと思ったが、念じても良く分からない。
『死線』とか『直感』とかは戦闘時に自動で発動するスキルのようだが、『探し人』の発動条件は何か他にあるのだろうか?
だが幾らタップしても他に情報らしい情報は出てこない。長押ししても、スライドしても、見た事のある説明しか出てこない。繰り返す様に同じ文面しか出てこない。
・『探し人』:固有スキル。探しているモノが発見しやすくなる。レベルが上がれば、より詳細に探せるようになる。
最初に見た時から、何も変わりはしない。
「……どうすればいいんだ?」
■ 妹が大切で何が悪い ■
「スキルについてはこのスキル辞典をご確認ください。つい三か月前に出た最新版です。現時点で確認できるスキルはこれに載っています」
「すみません、助かります」
ギルドにて。受付の方からスキル辞典を借りる。どうやらこれを見れば、現在発見されているスキルは確認できるらしい。
PM9:30。時間帯は遅いが、今俺はギルドに来ている。スキルについて教えてもらう為だった。
ギルドは24時間営業。それは数時間前に説明を受けた時に聞いた話だ。ギルドは冒険者のサポートも職務に含む為、夜間でも閉めるわけにはいかないそうだ。
そして冒険者のサポートも職務なら、スキルについて何かしら知っているかもしれない。
スキルの事はアリアに訊いても良かったが、ここまでずっと世話になっているのだ。それなのにまた自分の都合で時間を使ってもらうのは憚れた。
「『探し人』、『探し人』……あったあった」
備え付けの椅子に座ってページをめくる。サ行を探していくと、存外早くに求めていた項目は見つかった。
『探し人』
スキル区分:常時発動型
レアリティ:A
スキル内容:物、場所、など当人が探しているものを見つけやすくなる。初期状態では恩恵が低いが、レベルの上昇と共に精度が増し、大凡の場所を認識できるようになる。常時発動型で強く集中する程詳細な情報を得られるようになる。精度は物>場所>人の順。但しレアリティによって効果が上下することはないため、当人が目にしたものであるならばAランク以上の宝玉でも対象として発動できる。一度出会ったことがあるならば、モンスターや魔物にも有効。
効果は当人によりけりで、声が聞こえたり、引っ張られるような感覚を得たり、光の道が見える等の報告がある。
当人が探している物にしか反応はせず、誰かの依頼で探す場合は効果が減少する。
「……これだけか」
予想以上に書いてある内容は少なかった。タップして確認できる内容よりは多いが、それでも想定していたよりも少ないと言わざるを得ない。
でもとりあえずは、これが常時発動型で集中して念じる事で詳細な情報を得る事が出来る、と言うのが分かっただけでも良しとするべきだろうか。
試しに目を瞑り、宿屋を思い浮かべる。外見的な特徴を強く意識して脳裏に思い浮かべると、僅かに視界の端が明るくなった気がした。目を瞑ったまま顔を動かし、光が正面に来たところで目を開く。……俺の感覚が間違っていなければ、確かにその方角は宿屋がある方向だ。
なら、一佳はどうか。
目を瞑り、一佳を強く思い浮かべる。歯を食いしばり、丹田に力を込めて、手を組み合わせて祈る様にして思い浮かべる。
……だが何一つとして変化は現れなかった。
「……そう上手くはいかないか」
人への効果が最も低いと辞典にも書いてあった。ならばこれはもう少しレベルを上げなければ望む結果は得られないという事だろう。試しにアリアの事も念じてみたが、スキルは作動しなかった。
レベルを上げるには何度も使えばいい、とは冒頭に書いてあった内容だ。ならばこの『探し人』のスキルも、何度も強く念じればレベルが上がるはず。……むしろそうでなくては困る。
「いやー、ようやく戻ってこれた。やっぱり生まれた国が一番だ」
考え事をしていた俺の意識を、やたらと野太い声が切り裂いた。
声の方へ視線を向けると、全身を鎧で固めた騎士風の一団が入ってきたところだ。
「四か月くらいか、ここまで」
「長い旅路だったな。無事に俺たち3人とも帰ってこれたのはフェルム様のご加護のおかげだ」
「確かに。何度死を覚悟したか分からねーや」
別に聞き耳を立てているわけではないが、すぐ近くな上に声も大きいので、話している内容は良く聞こえる。どうやら相当難度が高く、そして長期のクエストを完了して戻ってきたらしい。
馴染みの店で一杯やりたい。好物を食べたい。熱い風呂に入りたい。自宅で寝たい。身を休めたい。彼女に会いたい。家族に会いたい。土産話を聞かせたい。
まるで長期出張から戻ってきた企業戦士である。職種は異なれど、人が仕事の果てに想う事は皆同じらしい。
「土産話と言えば……イーリス聖教国のギルド受付の人、美人だったなぁ」
「あそこの国は美人というか美男美女が多いんだよなぁ、神に仕える国だからかねぇ」
「神の前には貴賤無し、だっけか。信心深いことは良い事なんだろうけど、俺には合わない国だな。なんか窮屈だ」
「それは俺も思った。美徳なんだろうけどなぁ……」
「はっはっは、俺たちじゃ合わねーよ。俗物も良いところだからな!」
イーリス聖教国。神に仕える国。信心深い。
話を聞く限りでは、どうやらこの世界にも宗教の様なのが、そしてその総本山と言える国があるらしい。
「それにしても……イーリス聖教国の聖女様は神々しかったなぁ」
「普通は公の場に出ないのに、普通に街を歩いているからな。驚いちまったぜ」
「そうそう。護衛も2人しかいないし、見てるこっちが心配に思ったくらいだ」
「優しい人だったよな。俺たちみたいな余所者にも祈ってくれるんだから」
「ああ、確かに。あれはビビった。惚れそうになったくらいだ」
「よし、カレンちゃんに言いつけてやる」
「おい止めろ」
きっと幼馴染か、友人同士か、そう言う関係で作ったパーティーなのだろう。揶揄う様な口調に不快さは見えない。気心の知れた者同士のじゃれ合いだ。
知りたい情報は得たし、3人が報酬を受け取って受付が空いたら、辞典を返して宿に戻ろうか。
そんな事を考えながら辞典を閉じ、
「ああ、でも……本当に可愛かったなぁ……イチカ様」
その言葉に、
「黒髪のポニーテール。透き通った肌。朗らかな笑顔。ああ、もう、惚れる。絶対惚れる」
その名前に、
「聖女として歴代でも類を見ない才能の持ち主らしいな。噂じゃ街一つ飲み込むような瘴気すら払ったしい」
その会話に、
「怪我人や病人の治療で毎日街を歩いて回るんだろ。どんだけ心が清らかなんだよ」
その内容に、
「ああ、また会いたいなぁ……イチカ様……おわっ!?」
俺は、
「すまない。その話、詳しく聞かせてもらっていいか?」
3人組の内、近くにいた1人の肩を掴み、そう訊ねた。
■
イーリス聖教国と言うのは、フェルム王国から西の方角にある小さな国である。
その昔は魔の者によって呪われた死者の土地だったが、イーリスと言う名の聖女がその身を犠牲に魔を祓い、人が住める土地へと浄化した。以降は聖女のその功績を讃える為に、信心深い者が多く訪れる様になり――――やがて聖女の名を冠した国が興された。
それがイーリス聖教国の始まりである。
国としては非常に小さいが、その影響力の大きさから七つの大国の一つとして数えられている。他の国々にもイーリス教の信者がおり、フェルム王国が精霊使いの聖地ならば、イーリス聖教国は神に仕える者の聖地である。
そのイーリス聖教国に。
1人の聖女が現れた。
その聖女は自ら聖女を名乗ったわけでは無い。
だが分け隔てなく人を救い、魔を祓い、献身的に働くその姿は、誰しもが彼女に聖女の幻想を重ねた。助けられた人は勿論、その状況を見ていた人も、その噂を聞き付けた人も、熱心な信者も、そうでない信者も、僧侶も、シスターも、修道士も、司祭も、大司祭も――――そして、教皇ですらも。
彼女に――――イチカと名乗る少女に、イーリスの姿を重ねた。
そして今。
新しい聖女が誕生した。
聖女の名はイチカ。
彼女は今、人を救い、魔を祓い、聖女としてその責務を全うしていると言う。
「イーリス聖教国の聖女の話なら聞いた事がある。その3人組の話は正しいだろう」
3人組から丁寧に状況の説明をしてもらった俺は、とりあえず宿に戻ってアリアに話をした。事の真偽性を確かめる為だった。
アリアは日課の筋トレをしていたらしいが、快く出迎えてくれた。
「それで、翌日にもイーリス聖教国に行きたい、と」
「ああ。場所もギルドで聞いてきた。ここからは大分離れているから、とりあえずは明日の朝に国境沿いの街に向けて出る馬車に乗ろうと考えている」
イーリス聖教国はここから国を二つほど経由しないと辿り着けない場所に位置している。飛行機や自動車なんて便利なものは無いので、歩くか馬車で乗り継ぐしか行く方法は無い。
そして国境沿いまでの馬車代は8,000G。今日の余りのお金で充分賄える金額だ。
「色々と案内してくれたのにすまない。朝一で俺は出る」
「謝る事は無い。手がかりが見つかったのは喜ばしい事だ。……だが、聖女、か」
アリアは考え込むように目を伏せた。
そして疑問を口にする。
「本当に、聖女は君の妹なのか?」
「多分、だな。確証は無い」
3人組から特徴聞いたが、そこに一佳と断定できる要素は無い。聖女として名が知られるようになったタイミングと名前。それだけだ。
故に。アリアの疑問は尤もである。
「……手がかりがないよりはマシ、というところか」
「ああ」
「……止めても聞かなそうだな」
「ああ」
重々しい息をアリアは吐いた。俺の無鉄砲さに呆れているのは明白だった。彼女なりに心配をしてくれているのだろう。
……だが。少しでも可能性があるのなら俺はソレに賭ける。元々0だったのが、少しでも目が出たのだ。違ったら違ったで、また考えればいい。
「……明日の朝一、と言ったな」
「ああ」
「準備は?」
「出来ている」
元々が身一つである。準備するような荷は無い。
決意は固い、か。そう呟いてアリアは息を吐き出した。
「君が決めた事だ。それに異を唱えるつもりは無い。……まぁ、仕方あるまい」
「ここまで助けてくれてありがとう。本当に助かった」
「今生の別れみたいなことを言うな。私も行くぞ」
「は?」
今度は俺が驚く番だった。
予想外の言葉に時が止まる。
恐らく今の俺は、相当間抜けな顔をしているに違いない。
「行っただろう。君の妹を探す手伝いをしたい、と」
「あ、ああ。だけど、そこまで手伝ってもらうのは……」
「今更の話だ。君を手伝うと決めた。それを翻すつもりは無い」
無論、君が嫌だと言えば別だがな。そう言ってアリアは笑った。己の決断を悔いる事の無い、見惚れる様な清々しい笑顔だった。
「私は用意があるから、今日の話はこれまでだ。また明日話そう」
「あ、ああ」
「じゃあお休み。キョウヘイ」
そう言われて部屋を追い出される。
助かる事には助かる。常識知らずの俺が一人で行動するよりも、アリアが居た方がきっと事は上手く運ぶだろう。
だが。そこまでしてもらうのは正直気が引ける。あまりにも彼女は親切過ぎる。
「……デカい借りだな」
思う事は諸々ある。
だけどその全てを言葉にはせずに飲み込む。
いつかどこかで。彼女の親切な行為に報いよう。
いつかどこかで。彼女にこの借りを返そう。
ただそれだけを。心の中で誓った。
多分本文中での描写が絶望的な設定:スキルレアリティ
スキルのレアリティ。
ランクはSからEまで。
希少性と区分と能力で大まかにランク付けされる。
尚SクラスはAクラスに収まらないスキルを総称しているので、実際の用途としての利便性はピンキリである。
スキル辞典は半年ごとに改定されて発行される。




