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※20/2/2 誤字脱字修正
※22/9/27 誤字脱字修正
当たり前の話だが、魔石なんてのを俺は見たことが無い。
アリアから説明はされているが、それも見れば分かると言う、簡潔にして随分な言葉しかない。
だが今。俺はアリアの言葉の意味を理解した。
洞窟の奥。
急に開けた広大なスペース。
穴に落ちた時と同じような、正方形の部屋。
今入ってきた入口以外にはどこにも行きようのない行き止まり。
そして部屋の中心には黒い靄。
その中心で青色の菱形の石が鳴動している。
ドクンドクン。ドクンドクン。
まるで鼓動のように、一定のリズムで震えている。
「これって……」
「ああ、多分、そうだ」
光の導は靄に飲み込まれている。
つまりはアリアに会うためには、この靄の中を進めという事だ。
だがその前に。俺もミリアも、初めて見る光景に目を奪われていた。
■ 妹が大切で何が悪い ■
「これって、魔石……? ほ、本、本……あ、ダメ、落としたんだ……えと、えっと……」
「落ち着け」
がしっ。わしゃわしゃ。ぐっ。
慌て始めたミリアの頭を掴んで、無理矢理押さえつける。押さえつけて、掻き回し、また押さえつける。
「落ち着いたか?」
「は、はい……」
「良し」
逸る気持ちは分かる。だがその前に、確認は必要だ。
「ミリア。お前はアレが何か分かるか?」
「は、はい! い、いえ……多分、ですが……」
「そうか。……俺も、多分だ」
見れば見る程奇妙と言うしかない。
黒い靄の中心に浮かぶ石。菱形の形をした青色のソレには、全くの傷や凹凸が見えない。現代技術の最高峰を集結させても、同等のものを作るのは難しいだろう。とても自然に出来たものとは思えないが、ここはゲームの世界だ。そんなこともあろうさ。
黒い靄は、帯電をしているかのように、稲光の様な線が現れては消えてを繰り返している。どういう仕組みかは分からないが、そもそも分かった仕組みの方が少ないのだ。早々に理解への努力は諦める。
あれが魔石。
今回のクエストの達成目的。
人間側の世界と魔物側の世界を繋ぐ摩訶不思議な存在。
そして。シグレの話が正しければ、俺たちが帰るための命綱のようなもの。
魔石が順応すれば通れるはずだが……
「痛っ!」
順応前に入ることは出来ないのか。そう思い靄の中に左手を入れるが、突き刺すような痛みにすぐ手を抜き出す。だが抜いた手に黒い靄がまとわりついて、痛みを発している。手を振ってみるが取れやしない。
「チィィッ!」
流石に不用意過ぎたか。と、後悔するには遅すぎる。突き刺すような痛みが、やがて火傷の様なジュクジュクとした痛みに変わる。
――――酸!?
溶かされた経験など無いが、直感的にそう判断する。
咄嗟に右籠手を当て、弾き飛ばす様に薙ぐ。
目論見通りに靄が取れ、少し離れた場所へ飛んでいく。
地面に落ちた靄は、溶かすような音と共に煙を出し始めた。
「し、瘴気!?」
「瘴気? これが?」
瘴気。病原体の温床。だが俺の知識にある瘴気とは、大きく意味が異なっている。触れただけで溶かされかねないほどの代物では無いはずだ。
痛みに耐えつつ、左手を動かす。親指から順々に、最後は全体を。痛みはあるが、動かせないほどじゃない。
「……これはキツイな」
片手だけでこれだ。靄の中にいる間、全身をこの瘴気に侵され続けることになると考えると、長時間を耐えることは出来ない。どれくらいの長さがあるかもわからないのだ。先ほどのような軽率な行動はとれない。
だがだからと言って、ここで魔石の順応を待ってもいられない。人間側からの魔石の破壊、魔物の襲撃、ダンジョンの崩落……せっかく辿り着いたゴールを目の前で失うことになるかもしれないのだ。他の脱出方法を知らない今、それは避けないとマズい。
「す、すいません。手を貸してもらっても、い、いいですか?」
手を貸す?
どうしたもんかと考えていたら、意外なことにミリアから提案を受ける。
彼女にはこの状況を打開する案があるのだろうか?
とりあえず話を促す。
「じ、呪術って呪いなので、瘴気との親和性が高いんです。だから、えっと、私の術に、あの瘴気を食べさせていけば……どこかで、瘴気に耐えるだけの成長が出来る、と思います」
「この瘴気を吸い切れるかもしれない、ってことか」
「い、いいえ……す、吸い切る事は難しいと思います。ただ、その……瘴気で大きくすれば、影鬼に瘴気耐性がつきますので、中に入って移動すれば、瘴気から身を護れます」
影鬼にの中に入り、瘴気の中を移動する。成程、それは良い考えだ。仮にミリアの思い描いている通りに行くなら、わざわざ順応を待たなくていい。このまま手を拱いているよりは、ずっと可能性のある話だ。
問題があるとすれば、
「で、手を貸すって?」
大きくする。それだけならミリア一人でも時間を掛ければできるだろう。
だが俺に手を借りようとしているのだから、その他の理由があるのだ。
「えっと、影鬼は呪いの集合体です。ですから、その……中に入るには、血肉を混ぜて、入る人との親和性を高めないといけません」
要はミリアだけでなく、俺の血も必要だと。
そう言っているわけだ。
「どれだけあればいい?」
「その、2人が入れるだけの大きさになるまで、し、瘴気と血を混ぜないといけません。そこまでの大きさにした事は……えーと、その……無いので……」
つまりは分からない、と。まぁ、そう簡単に上手くいく話なんて、ある訳が無いという事だ。
「とりあえず、術を行使しよう。いけるか?」
「は、はい!」
強い返事。ミリアは手を翳して、あの小さな影鬼を呼び出した。ちょこんと。僅かに影が盛り上がる。
……これは骨が折れるな。この小ささから、俺たち2人を運べるくらいの大きさにするのは、容易な話じゃ無い。薄く延ばすにしても、どれだけの血が必要となるのか。人が失える血の量が何リットルかは忘れたが、瘴気と混ぜ合わすにしても、1日や2日で回復できる量の血で足りるとは思えない。
とは言え、他に手が無いのも事実だ。
ナイフで掌を切り、影鬼に与える。
血を失い過ぎない様、少しずつ。
他に手がないかは、継続して考えるとして――――
「あらあら。そんなことせぇへんでもええのになぁ」
■
銀色の鈍い閃き。
一拍を置いて赤が咲く。
肩口から離れる腕。
何が起きたか分からないと言う顔。
重心を失った身体。
その身体を受け止めて、振り下ろされた刃を籠手で受ける。
「あ、あ、あああああああああああああああああっ!!!」
「テメェ……っ!」
揺れる袖。
薄桃色の着物。
日本刀。
透き通るような白い肌。
あどけなさが残る可愛らしい顔立ちと、それに相反するような不気味な眼差し。
「先刻ぶりやなぁ」
ニンマリ。あの薄気味の悪い笑み。
見間違うはずもない。
シグレ。
あの女が、何故、此処に?
……いや、違う。
問うべきは、それじゃない。
「っ、随分やないか」
「ミリアっ! 無事か!」
……無事なわけがあるか。
シグレを殴るようにして押し退け、俺自身も後退する。後退しながら、抱きかかえたミリアに声を掛ける。
ミリアからの返答は無い。小柄な体躯とは思えぬ暴れ方。迸る絶叫。荒い息づかい。本人も急な状況にパニックになっているのだろう。俺の声は届かず、ただ暴れるばかり。
キッ、と。シグレを睨みつければ、返ってくるのはあの不気味な笑み。
「安心せぇ。まだ死んではおらんやろ」
「そう言う問題じゃねぇ……っ!」
此処でこの狂人に会う辺り、俺の運の無さも極まれりという奴か。よりにもよって今なんて、本当に最悪のタイミングだ。
ミリアの血は止まらない。抑えている先から零れていく。早く止血しなければ、彼女は死ぬ。だが薬草や丸薬と言った回復薬は俺は持っていない。
「クソッ!」
右手の籠手を外し、ミリアの傷に当てる。竜の体毛を組み込んでいるので、防御機能だけでなく、自己回復能力の向上にも使えるはずだ。傷に当て、ズレない様に、無理矢理に押さえつける。
「お優しいなぁ……そんなの必要あらへんのに」
「……おい」
「腕の一つ。それだけやろ?」
「……イカれてんのか、テメェ」
腕の一つ。そんな言葉で済む怪我じゃない。
だがミリアのことなど気にする様子もなく、シグレは斬り離したミリアの右腕を拾い上げた。そして滴る血を舐め、あろうことか顔を顰める。
「まっず。酷い味やな。ま、所詮は通行料や」
そう言ってシグレは脇差を抜き取ると、何かを斬る様に空中に滑らせた。
ドサッ。ドサッ。ドサッ。ドサッ。
何も無いはずの空中から、人体が落ちてくる。
数は4。
そのいずれもが事切れて、力なく伏している。
「そない無駄な事してへんで、手ぇ貸してくれへんか?」
「あぁ?」
「これをあの中に入れるだけや」
これ。そう言って指し示した死体。
あの中。そう言って指し示した靄と魔石。
つまり、この死体を靄に入れろ、と?
「魔石の自然な順応なんて待ってられへんやろ? さっさと順応させるには、やっぱり餌が一番や」
「餌?」
「食べなきゃ死ぬのは誰でも同じやろ」
言葉が足らなすぎるが、察するに魔石の順応を早めるために、死体を靄に入れろという事か。
魔石が死体を喰らうなど信じられないが……
「これと、この腕。充分な量や」
「……その為にミリアの腕を斬ったのか」
「保険や。この4体で充分やと思うけど、念の為に、やな」
念の為。それだけの理由でミリアは右腕を斬り飛ばされた。……いや、本当は命まで奪うつもりだったのだろう。返す刀を籠手で防いでいなければ、ミリアはあの瞬間に死んでいた。
価値観の相違。そんな簡単な言葉では埋められない、絶対的な理解の隔たり。
間違いなく、コイツは異常者だ。
「信じられるか」
ミリアを庇う様に、前に出る。
疲労困憊? 体力がギリギリ? そんなの知った事か。
このキチガイ女の言う事に従うつもりは無い。聞くつもりも無い。例え言っている事が真実であってもだ。
「信じる信じないの話やない。……そう言うても、無駄のようやな」
面倒くさそうな口ぶり。だがそれとは裏腹の、喜色に染まった眼。
抜かれた刀。自然な構え。切っ先が俺に向けられる。
「ほな、やろか」
■
開戦の合図。そんなものは無い。
シグレが言葉を発し終わる前に俺は踏み込んだ。踏み込んで、懐に入る。
シグレとの実力差は充分に理解している。加えてコンディションは最悪。さらには重傷のミリアと、俺には不利な要素ばかりが揃っている。そんな状態でシグレの出方を待っていられるわけがない。
「逸り過ぎや」
最短最速のジャブは、簡単に弾かれる。完璧なタイミング、完璧な勢いの殺し方。慌てず、引いて、連打するが……いずれも同様に弾かれる。
一度見ただけで、対処は簡単に出来るとでも?
……舐めやがって。
「フッ!」
短く鋭く息を吐き出し、止める。刀を振るわせる暇なんて与えてはならない。
ジャブがダメなら腹部へのブロー。水月に捻じり込む様に、そして持ち上げる様に。だが捻じ込む前に、拳に合わせてシグレは後方へ飛んだ。
逃がさない。
距離を詰め直し、もう一度。
「ええなぁ……ええやないか!」
ジャブ。
ブロー。
アッパー。
フック。
エルボー。
ロー。
ミドル。
ハイ。
ニー。
正面。上下。左右。拳も、肘も、膝も、足も。全てを使う。高等な技は必要ない。大振りも必要ない。基本に忠実に。只管効率的に。避けられ、防がれ、いなされ、流され。それでもシグレに暇を与えることなく、攻勢に転じさせず、コイツが斃れるまで――――動き続けろ!
「やるやないか! もっと……もっと魅せぇ! もっとや!」
望まなくたって、幾らだってやってやる。
抉る様に、捻じ込む様に。女だからと言って手加減などしない。目の前にいるのは敵だ。常識の通じない敵だ。今ここで斃さなければ――――いや、殺さなければ、後で必ず立ち塞がれるだろう。俺の持っている全てを出し尽くしても、此処でコイツを……絶対に、殺すッ!
「もっとや!!!」
振るえ。振るい続けろ。何度でも、幾らでも。肺が痛もうとも、四肢が重くとも、千切れそうでも、眼が霞もうとも。攻撃の手を少しでも緩めれば、簡単に状況はひっくり返される。
シグレはただ避けるだけなく、日本刀を使って器用に俺の攻撃を捌き続ける。
……実力差なんてわかっていたこと。今更の話。
それでも、
「あ、ああ、あ……」
退けない理由が、ある!
「魅せぇや! もっと、もっと……アンタの全てを!!!」
「ほざけ!」
刈るように。首を狙って、回し蹴る。後ろ回し蹴り。大振りな技で、予備動作も独特。だけれども当たれば意識なんか簡単に飛ばせる。ましてや初見。惑うだろう。
回転する視界の中で、シグレは屈んだ。屈んで避ける事を選択した。
惑いも無い即断。俺の右足は宙を斬る。
咄嗟に、その顎に向けて、支点の左足で蹴り上げる。
「あはぁっ!」
その体勢のまま、シグレはスウェーで避ける。
そして嬉しそうに。それは嬉しそうにシグレは嗤った。こちとら基礎も常識も無視して動いたせいで、痛みが最高潮だって言うのに、コイツは避けて防いで、尚も嬉しそうに笑っている。
「……クソがぁっ!」
完全に体勢は崩れた。が、止まる訳には行かない。
咄嗟に掌を地に付ける。付けて、逆立ちの恰好で追撃を行う。
確かカポエラ、だったか。
昔テレビで見たそれを、見様見真似で攻撃に組み込む。朧気な記憶の中の光景。だが不思議なことに、イメージしている通りに身体は動いてくれた。疲労困憊故に余計な力が入らないのか。或いは、別の何かか。……いや、もう理由なんか何でもいい。それは今考える内容じゃない。
「あははははっ!!!」
踵落とし、前蹴り、回し蹴り。不規則な技の選択。型にはめるな。気取られるな。予測をさせるな。何かをされる前に先手を取れ。
だが癪な事に。シグレは俺の先を行く。俺の動きに合わせる様に、カウンターで刀を振るってきた。
「っ!」
ならば先に武器破壊を。日本刀は耐久性は良くないと聞く。破壊できれば、相手の戦力も大きく削ぐことが出来る。叩き折る様に、拳を合わせる。
しかし。
壊すことは叶わない。受けるのではなく流される。見惚れるような体重移動。最小限で最高効率の動かし方。そしてそのまま回転し、手刀が後頭部に向けて振るわれる。
「へぇ……」
左の手で、シグレの手を掴む。初見じゃ防げなかっただろうが、過去にジムでベトナム出身の選手と軽くスパーリングをした時に、同様の攻撃を喰らった事があった。あの時は肘打ちだったか。当然反則技で、戯れ程度の攻撃。本試合で使えるはずも無く……体重移動の参考くらいにしかならないと思ったが、意外なところで役に立った。
流された右手は、シグレの左手首を掴んでいる。折るくらいに、強く。
これで互いに膠着状態。
「先刻とは大違いやないか」
「うるせぇ」
膠着状態になったところで、何が有利に働くわけでもない。寧ろ時間が掛かれば掛かる程、俺は不利になる。
現に。俺が掴んだ手に力が上手く入らない。大勢の問題もあるが、それ以上に蓄積した疲労が大きい。
あと何分だ? 俺が動けるのは、あと何分だ?
……いや、違う。
後は考えるな。
今はただ。
コイツを殺す事だけを、それだけを――――っ!
「か、『影鬼』……」
■
小さな声。
かき消えそうで、すぐに空気中に溶けるような、脆弱な音。
ありえない。
だが声の方に視線を向ければ。
確かに、そこには、
「ミリ、ア?」
ミリアがいる。
間違いない。
片腕を失った彼女が。
両の足で立って、いる。
……いや、それだけじゃない。
「お前、それ……」
ミリアの後ろには、巨人が立っていた。
そう。巨人。
ミリアの3倍はあるような、巨人。
影鬼?
だが、何故?
何故あんな巨大に?
「見誤ったなぁ……そないキメとるとはなぁ。アンタも罪な男や」
「あぁ?」
「命をくべとる。久しぶりに見たなぁ。黒翼以来か」
命をくべる。良い響きではない。
だが。言わんとする事は理解した。理解してしまった。
『私は自身の影に血を吸い込ませて、人型を作っていました』
ミリアはそう言っていた。呪術と血の因子は強い。だから血を吸わせることで、影鬼を強化しているとも。
ならば。血でそうなら、肉はどうなのか。
そして自身の命だったら。
「『影鬼』……私の全てを……あげるから……」
「ミリアっ! 止めろっ!」
それは、一体、
「アイツを……」
「止めろ! 言うなっ!」
どれほどの術の強化になるというのか。
「アイツを、殺して」
「あはぁ♡」
「あンの、馬鹿ッ――――ガッ」
ミリアは宣言をし終わると崩れ落ちた。力なく地面に倒れ伏し、ピクリとも動かない。
それを見て、一瞬力が緩んでしまう。当然シグレがそんな隙を見逃す筈も無く、手を振り解かれる。掴み直す――よりも早く、シグレは日本刀を構えて、影鬼へ突撃した。
「チィッ!」
一歩遅れる。だが、その一歩が致命的だ。シグレはすでに影鬼に斬りかかっていた。影鬼の腕が吹き飛んでいる。
呪い返し。
真っ先に脳裏を過ったのは、その言葉。
足を止めて、まずはミリアへと向かう。
「おいっ、目を開けろっ!」
抱えて声をかける。だがミリアの眼は開かない。反応もしない。今にも止まりそうなくらいに脆弱な呼吸音のみ。
呪術のイロハなど知る由も無いが、己の命まで懸けているのだ。どんな結果に至ろうとも、無事には済まないだろう。加えて、もしも負ければ、呪い返しのダメージが加算されるのだ。この体調にその悪条件が重なれば、まず間違いなくミリアは二度と目を開くことは無いだろう。
となれば、次にやるべきは……
「ダ……メ」
「……ミリア?」
「行かな……い……で」
寝かせようとしたところで、ミリアが俺の腕を弱々しく掴む。
意識を取り戻したのか。上げかけた腰を止める。だが彼女の身を思えば、此処で止まってはならない。今すぐにでも、それこそ影鬼が斃される前に、シグレを殺さなければならないのだ。
「悪い。だけど――――」
「ダ……メ……。ま……きこ……ん……じゃ……う」
まきこんじゃう……捲き込んじゃう? 何に?
「……っ、ぁ」
苦しそうにミリアは身体を震わせた。言葉を発せずに口を開閉する。喋る事すら辛いのだろう。
なのに。まだ俺に何かを伝えようとしている。力を振り絞って、他の無いよりも優先して、伝えようとしている。
「そ……ば、に……」
「何を……?」
「……ぁ……ぅ」
薄く。ミリアは眼を開けた。酷く澄んだ眼だった。嫌な想像を掻き立てる眼だった。
そして口角を上へ曲げた。微笑み。やり切ったとでも言いたげな、悔いの見られない笑みだった。
「……ばく、はつ」
※名前だけ設定して、多分もう出てこないキャラ
『黒翼』
・ビーストテイマー。相棒は大鷲。
シグレに殺されました。
二つ名の由来は、戦闘時は魔法で強化した大鷲と融合し、黒色の翼を生やすことから。




