プロローグ2
世界観のイメージはドラ〇エとかモン〇ンとかH〇Hとかそういった類を混ぜ合わせた感じです。
つまり節操無し。
※20/1/20 誤字脱字修正
※20/2/12 誤字脱字修正
朝陽が少しずつ昇って来る。
陽の光にさらされた世界は、一層今までとは違う場所に俺がいることを強調した。
俺が今までいた人工物ばかりの世界とは全く似つかない。
暫く呆然としていたけど、漸く一つの事を俺は理解した。
どうやら陽菜ちゃんから聞いた噂は本当の事だったようだ。
ゲームの世界に入り込むなんて妄言としか思えなかったけど、今俺の前の現実はそんな考えをひっくり返すに足る光景だ。
そして、
「……本当に、一佳はいるのか?」
希望が見えた。今まで全く見えなかった足取りが、この世界でなら掴むことが出来るかもしれない。今まで何も進展しなかった状況が動くかもしれない。
まだそうと決まった訳じゃないけれど。
そんな希望を抱くには充分だった。
「うおおおお、マジだ、すげぇ! ははっ、やべぇ!」
そしてそんな俺の思考を遮る様に。
後方から男の声が聞こえた。
……ああ、そういえば。俺以外にも4人ここに倒れている輩が居た。
今の声から察するに、自分と同じくゲーム内に入ってきた人物が目を覚ましたのだろう。
発言内容からは困惑よりも期待と希望が満ち溢れているのが聞いていてわかった。
そして同時に思う。
きっと仲良くは出来ない。
根拠も何もないけど、そう思った。
■ 妹が大切で何が悪い ■
「俺はシュウ! クラスは魔法剣士だ、皆よろしく!」
「私はマナミです。クラスは精霊使いです。宜しくお願いします!」
「チカです。クラスは同じく精霊使いです。宜しくお願い致します」
「……リオン。闇魔法使い。よろしく」
「キョウヘイです。クラスは武闘家。よろしく」
全員が目覚めるのを待って自己紹介に入る。黒髪の短髪で、快活そうな男がシュウ。全身を真っ白なローブ姿で統一したショートヘアの子がマナミ。眼鏡を着用し髪形がポニーテールなのがチカ。マナミとは正反対に全身を真っ黒にして顔も隠しているのがリオン。……中々に個性的な面子である。そして外見年齢を信じるならば皆年下だろうか……カスタマイズしている可能性があるので素直に受け取ることは出来ないが。
「皆もあれかな、あの噂を試した人たちってこと?」
「そうですね。まさか本当にゲームの世界に入れるとは思いませんでしたが」
「正直未だ興奮しています」
シュウの言葉にチカとマナミが同意を示す。三人はおそらくこの世界を楽しみたくて来たのだろう。言葉の端々に含まれた感情からもそれは分かった。
「しかし奇遇だよね、殆どみんな魔法系の職業なんて」
「そうですね……そう言えば、何でキョウヘイさんは武闘家を?」
「キックボクシングをやっていたからね。魔法は使い方がイメージできなかったから慣れている方のクラスにしたんだ」
「キックボクシング? すごい!」
「え、選手って事?」
「趣味だよ趣味」
それも今じゃ週末に一回行くだけ。運動不足解消のトレーニング……と言うよりも言葉通り趣味である。
「へー、でもせっかくなんだから魔法系のクラスにすればよかったのに」
「イメージできなたかったらな。それに魔法系のクラスは種類が多すぎたから」
「あー、確かに……」
魔法系だけはやたらとクラスが多かった。それは皆も同じ感想だったらしい。
「私は精霊とお話ししたいから精霊使いにしたんだよね。チカさんは?」
「私は……特に無かったかな。何となくこのクラスにしたって感じ」
「シュウさんは?」
「魔法剣士が好きなクラスだからこれで即決」
「リオンさんは……って、アレ?」
マナミが疑問の声を上げる。そして可愛らしく首を傾げた。彼女と同じ方向に視線を向ければ、空中に指を向けて忙しなく動かしてるリオンの姿があった。
「何をしているの?」
「……スキルの確認」
スキル。言われて思い出す。そう言えば始まる前に設定をしたことを。
「スキルを見たいと念じれば出てくるよ」
一切此方には目を合わせずにリオンは言った。どうやら皆失念していたらしく、慌てて確認に入る。言われたとおりに念じてみると、目前にパソコンのウィンドウのように透明な画面が表示された。……今更ながらに完全なファンタジーである。
名前、年齢、クラス、状態……そして、スキル。名前がカタカナで表示されたり、何故か年齢が17になっているのは仕様なのだろうか。昨夜は現実と同じにした記憶があるのだが。
……まぁ、今は良い。まずはスキルの確認だ。
スキルの項目をスマホを操作するようにタップする。すると画面が切り替わり、所持しているスキルがズラッと表示された。
そう、ズラッと。
『探し人』、『不眠不休』、『金運』、『直感』、『死線』、『剛拳』、『加護』、『祝福』、『異常耐性』、『魔法耐性』。
上三つは自分で設定したものだが、下の七つは覚えのないものだ。しかも死線やら剛拳やら効果が良く分からないものまである。
「お」
死線の項目をタップすると、その詳細な説明が出てきた。そこら辺は親切設計のようだ。
説明によると死線は怪我を負ったり状態異常になった際に発動するスキルで、効果はステータスの向上。怪我の度合いに比例して効果も変わる。武闘家のクラススキルであり、武闘家にはこれが標準スキルとして付与されるとの事。……要は怪我や状態異常で強くなるらしい。
他も同じようにタップして確認していく。
『探し人』:固有スキル。探しているモノが発見しやすくなる。レベルが上がれば、より詳細に探せるようになる。
『不眠不休』:固有スキル。寝なくても休まなくても疲労しにくくなる。
『金運』:固有スキル。金回りが良くなる。
『直感』:クラススキル。戦闘時に最適な立ち回りが出来るようになる。
『死線』:クラススキル。怪我、状態異常時にステータスが向上する。度合いに比例して向上する。
『剛拳』:クラススキル。稀に相手の防御を無視してダメージを与える事が出来る。
『加護』:特殊スキル。神による加護。全体的な運勢が向上する。また戦闘時にステータス、スキルレベルが向上する。
『祝福』:特殊スキル。神による祝福。ステータス、スキル、成長率に補正が掛かる。また経験値を多く取得できる。
『異常耐性』:通常スキル。状態異常攻撃を稀に無効化する。レベルが上がれば効果も上がる。
『魔法耐性』:通常スキル。魔法によるダメージを1割軽減する。レベルが上がれば効果も上がる。
「……成程」
一通り見て、読んで、理解して。
まず俺が思ったのは、どうやら戦闘行為をしなければならない、という事だった。一佳を探し出すためには、自身を強くしなければならないらしい。まるで某育成冒険ゲームである。
ただ幸いにも、祝福のスキルのおかげで成長率や経験値に補正が掛かる。これは大きな利点だ。探し人のスキルが向上すれば、それだけ一佳を探す時間を短縮できるというものだ。
スキル設定時はそこまで考えずに設定していたが、どうもいい具合にシステムが余りのスキルを割り振ってくれたらしい。
「……どう?」
「ん? 何が?」
「スキル」
「……可もなく不可もなく、って感じだな」
驚きは飲み込めた、と思う。
いつの間にかに傍にリオンが居た。全く気配を感じさせずに接近してくる辺りそう言うスキルなのだろうか。それとも闇魔法使いとはそう言うものなのだろうか。
ゆったりとした真っ黒なローブ。フードで顔は隠れている。小柄だが妙な威圧感を感じる。
……何にせよ。初対面の相手に対して申し訳ないが、不気味な印象が拭えない。
「それは幸運だね……なら、早く逃げた方が良い」
「……どういうことだ」
「……すぐに分かるよ」
「は?」
リオンは背を向けると、真っすぐに外壁に向かって走った。そしてスピードを緩めることなく――――そのまま跳ぶ。
「な、」
「え、何、どういう事!?」
人は飛べない。それは自然の理だ。だからリオンの身体は、すぐに重力に捉われて下へと落ちる。
慌てて俺はリオンの下へと駆け寄ろうと走った。無駄だと分かっていてもそうせざるを得なかった。それは条件反射のような行動だった。
――――その行動が、結果的に俺を救った。
走って、僅かに五歩。
いきなり地面が揺れ、後方から風圧が俺を襲った。そして咆哮。鼓膜が破れるかと思うような咆哮。
耐えきれずに倒れ込んだ俺の頭上をデカい塊が飛んだ。
反射的に視線を向けた先には――――ドラゴン。
某人気狩猟ゲームに出てくるようなドラゴンが2匹。
「はぁ!?」
……言ってしまえば、俺はこの時までこの状況を正しく理解できていなかったんだと思う。
俺の目的は一佳を探すことで、この世界を冒険する事ではない。
だから世界観とか情勢とか能力とか。そう言ったものに興味は殆ど無くて。
要は。目の前の化け物が蔓延るような世界なんてのは想像もしていなかったのだ。妹を見つけて無事に帰れるものだと思い込んでいたのだ。
だが違う。
それは違う。
否応なしに気づかされる。
「うわああぁぁああああああああ!!!」
叫び声。シュウだ。それだけは分かった。だが何処にいるのかまでは分からなかった。
何故なら、
「うおおお!?」
立ち上がった拍子に足元が崩れた。古城の造りでは2匹のドラゴンの衝撃には耐えきれなかったらしい。或いは俺のいた場所が特別脆かったのか。
何であれ。
一瞬の浮遊感。感知できたのはそれだけ。何が何だか分からないまま、次に感じたのは衝撃。
その衝撃に。俺は呆気なく意識を手放した。
そして次に目覚めた時には、全てが終わった後だった。
■
繰り返そう。
俺はこの世界を良く分かっていなかった。
ゲームの世界を軽んじていたと言い換えてもいい。
無条件に自分が無事であること。それを当たり前だと思い込んでいた。
……だけどそれは皆も同じだったに違いない。
「……チカ」
酷い状態だ。俺はそう思った。
チカは背中を切り裂かれていた。おそらくはあのドラゴンのかぎ爪によるものだろう。肉が裂け、中の臓器が零れるほどに――それは協力で凄惨な一撃だった。命を失っているのは確認するまでもなく分かった。
「……マナミ」
酷い状態だ。俺はそう思った。
マナミは上半身が無くなっていた。おそらくは喰われたのだろうか。赤黒く染まった白いローブに包まれた下半身が、彼女がこの世界に残した自身の痕跡だった。
「……シュウ」
目も当てられない。俺はそう思った。
シュウは顔の半分しか残っていなかった。後は何も残っていなかった。或いはそこらに飛び散っている肉片が彼のモノだったかもしれないが、その判別をする事は俺には出来ない。
「……何だよ、これ」
おそらく皆同じことを今際の際に思っただろう。寧ろ世界に希望を抱いていた分、俺よりもその想いは強かったのではないか。
出会って、多分30分程度。ただのそれだけの間に、全ては覆されたと言っていい。
「……クソッ」
漸く理解する。この世界はゲームの世界を再現しているのだ。ゲームの世界に入り込んだ結果がどうなるかを忠実に再現しているのだ。
帰ってきた人物がいない? 違う、帰って来る前に死んで終わっただけだ。
文字通りのゲームオーバー。来世でお会いしましょう。
……そう言う事なのだ。
「……無事でいろよ」
だがこんなところで躓くつもりは一切ない。挫けるつもりも、立ち止まるつもりもない。
一佳を見つけ出し、現実に帰る。これを達成するまでは、死ぬわけにはいかない。
……だから、
「悪いな、皆……」
黙祷をささげる。本当なら墓を作ってあげるべきかもしれないが、そこまでの余裕は今の俺には無い。痛む体を引きずり、この場を後にする。
……陳腐な表現かもしれないが。
きっと今のこの瞬間は。
永遠に忘れることは無いだろう。
それは今後ずっと生きて、生きて、そして死ぬまで。
忘れることなく鮮明に思い出せることが出来るだろう。
それは予感ではなく確信だった。
おまけ
主人公のステータス。
名前:キョウヘイ・タチバナ
年齢:17(現実世界では25)
種族:人間
性別:男
スキル:『探し人』『不眠不休』『金運』『直感』『死線』『剛拳』『加護』『祝福』『異常耐性』『魔法耐性』
目的:妹の一佳を探して一緒に現実世界へと帰る。




