福音を受けし者
週1くらいで更新出来たらと思いまする。
「私は主より祝福を受けた! 主は私にこう仰られた! 世界を手に入れろと!」
宗教団体マクベスの創者であるアルファニール・マルコは両手を高らかと挙げ、集まる信者たちに言い放った。
世界の終焉から5年、人々の神への信仰心は最高潮を迎えていた。
「汝らを救うためには神への金が必要だ! そう金だ! 」
すでにこの世界は暴力と権力でしか生き抜くことが出来ないが、未だに金の信者はいる。
金などいくらあってもケツを拭く紙にもならない世の中なのだから。
しかし酔狂した信者は自分が救われるならば、物、金、自分の家族すら捧げだす。
「お、俺は1万ベルカ出す!」
1人の若者の一声で、信者たちは狂ったように我も我もと神への提案をする。
「マルコ様! 私は娘を差し出しますので、どうか私の娘を買って下さい!」
「私は金塊を!!」
「マルコ様! どうか私たちをお救い下さい!」
マルコは頭の上で手を組み、祈りを捧げだした。
「あー……主よ、ご覧下さい。 アナタの可愛い子羊たちがこんなにも心を傷めながらも、ご慈悲を求めておられます。どうか今一度私に主のお言葉を……… 」
涙を流しながら祈りを捧げるマルコを見た信者たちも、皆涙を流しながら祈りだす。
「……そ、そんな。 そんな馬鹿な…… 」
マルコは愕然とした表情で呟いた。
「神はお前たちを裁かなければならないと仰っている…… まだ足りぬ、まだ足りぬと!!」
信者たちのどよめきが瞬く間に教会を埋め尽くす。
「扉を開けよ! 主の審判の時だ!」
マルコが叫ぶと、教会の扉がゆっくりと音を立てて開きだした。
「マルコ様っ! お止め下さい! 今の時間は神たちの時間です! 扉を開けたら私たちは!!」
終焉を迎えた世界は日没と共に神が現れる。
その時間に人間が神の目に付くようなことになれば、神から裁かれる。そして日の出と共に神は消える。
「す、少しでも時間を稼ぐんだ! 俺は裁かれたくない!」
1人の若い信者が開きかけた扉を閉めようとした瞬間、扉の向こうにいる何かと目が合った。
「あ……」
その男の最後の言葉だった。
扉の隙間から黒い影が男に襲いかかり、上半身を食いちぎったのだ。
信者たちは目の前の光景に思考が一瞬止まるが、誰かの叫び声で皆我にかえる。
そこからは悲惨な光景だ。
逃げ惑う信者たちは片っ端から、切り裂き、食いちぎられ、引き裂かれていく。
無力な存在に対する絶対な強者。
これがマルコの言うところの神の裁きだ。
「ハハハハ! お前たちの信仰心足りないから裁きを受けるのだよ! クハ!」
マルコは天を仰ぎながら、歓喜の歌を歌う。
すでに半数以上の信者が内蔵をぶちまけ、煌びやかに装飾された教会を真っ赤に染めていた。
「ママ…… 私たちも神さまに裁かれるの……? いやだよ、ママ…… 私はまだ死にたくないよ! ママ!! 」
幼き少女は、母親だったであろう肉塊にすがりつきながら身を隠す。
だが、神の目に捉えられない性はない。
神の歩が少女に向って行く。
「い、いやだ…… 来ないでよ…… 来ないで! 私に近づかないで! いやだっ! 誰か助けて……助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けてっ……………………神さま」
『大丈夫、神様はここに居るから』
教会の天井を破り降りてきたのは、霞の無い銀色の髪を、まるで天使の羽のように広げ、透き通るような白い肌にコバルトブルーの瞳をした女の子だった。
少女はその姿を目の前にして、本当に神が舞い降りたと思った。
少女は天使のような女の子を見て自然と言葉が溢る。
「……綺麗」
神が、神様が本当に私たちの前に姿を現したならこれが本当の姿であろうと。
神と名乗る黒い影は一体何なのか、私たちが信じてきた、信仰してきた、崇めてきた、崇拝してきた、全てだった神の姿がこんなのだなんて信じられない。
少女はこの時、心から神への信仰心を捨てた。
捨てざるを得なかった。
この天使を目の前にしては。
「お願い、助けて……天使さま……」
少女は願った。祈ったのではなく願った。
そして、その願いは届く。
「汝は今救われた。神への信仰心を捨てたから」
天使のような女の子は少女にそう言い、自分の身の丈ほどもあるショットガンを構え、神へと向けた。
「我は福音を受けし者、銀弾の福音を受けし者、名はマリア」
マリアは撃鉄を下ろし、狙いを定めた。
「懺悔しな、クソ野郎が」
一声言い放ち、トリガーを引く。