プロローグ"どうにもこうにも俺がいないとダメらしい"
「おーい、5の2の南蛮上がったぞー」
「タルタル多目だよーしかもこれ何かべちゃべちゃしてない?」
「多目だろ?水で多目にしたわ!!」
「いやいや、それクレームの元だから!!」
「3の4のビール取ったの誰だよ!飲み過ぎで吐いてやがんぞ!!」
夜の9時、仕事も終わり家の仕事も終わり、自分でご飯も作るのも面倒だしとりあえず外食でもと思い行き着く先はファミレス。
種類も豊富であり安価で量も多く大学生や一人暮らしが多用する飯処。
そんなファミレスでは色んな客が集まる。
例えばパチンコで勝ったからご飯を奢るハメになった大学生。
「10万勝ったから何でも頼めよー」
例えば失恋したOL。
「うぅ、何よ私の何がいけなかったのよぉーーー」
例えば新入社員の愚痴を聞いてやる入社3年目の先輩社員。
「仕事に慣れ出すまでは時間かかるからな?だから辞めるのは考えなおせよ?」
そんな多種多様の客が集まるファミレスには社員が少ない。何故なら社員が辞める事が多いのも飲食業ではザラであるからである。
そんなファミレスでバイトで8年働きバイトの誰からも頼られる存在がいた。
「南蛮作り直して、大神さん悪いけど後10分お客様に待ってもらえるように言ってくれない?南蛮のオーダー一番先ね」
「飲み過ぎで吐いたの?嘔吐処理俺がするからその周りのテーブルのお客様を他のテーブルにご案内して!」
「お客様、食べれない量を注意されてもなんなので一度オーダーを通した後に再度オーダーを取ってもらってもいいですか?」
「…どうぞお冷です」
「オーダー繰り返させて頂きます。ステーキフライ定食と目玉ハンバーグ、Aセットでお間違いなかったしょうか?」
そう彼はこの店舗「ペコペコ」のバイトリーダーである。
フロアと呼ばれる作業を完璧にこなし、キッチンの料理の手順も完璧であり、このファミレスで働いている誰もが彼を知っているというバイトにして社員より店長より頼られる存在だ。
(ハァ、何で俺は就職できねーんだろう)
これはそんな彼の働くファミレスの物語。
美味しい物を提供すれば良いだけではないファミレスの物語である。