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maximum online  作者: ノイサジイマ
第一章 maximum online
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1

「・・・ずき君?一喜君?」

耳元で優しい声が俺の名前を呼んでいる。

俺はゆっくりと目を開け、身体を起こす。

もう夏休みなので、真夏と言ってもいいほどの気温のせいか、今見ていた子供の頃の夢のせいか、背中に汗をぐっしょりかいていた。

汗のしみこんだシャツをずっと着てるのは気持ち悪いし、ついでだから風呂に入ろうかなと思いつつ今、俺を起こした本人に顔を向ける。

「んで、何で野口がこんな所にいるんだよ。こ、こ、こ、ここは、女子がきたらダメなんだぞ。」

少しつまったが、そんなことは気にしない。

何せここは児童福祉施設で、俺と同じような障害の子もたくさんいる。それに、俺の目の前にいる女の子、野口愛花は父親が野口の生まれる前に事故で死に、母親も野口が7歳のころにがんで死亡している。また、野口は生まれた頃から吃音だ。

「何でって・・・忘れた?今日から夏休みで、マキシマムオンラインのオープンβで会場に行くって言ったじゃん。もしかして忘れた?」

少し頬を膨らませ、怒ってるを表現しながら言った。

「ははは。そ、そんなことあるわけないだろう。」

すっかり忘れていた。確か・・・持ち物は、服が2日分だけでよかった気がする。これなら準備するのは簡単だろう。

「そう。それならいいけど。先生の車で、会場まで行くから後10分後に出発するってさ。遅れないでね。」と言うと、野口は小走りで部屋を出て行った。

俺は、ベッドを降り寝巻きを脱ぐ。後十分しかないから風呂に入るのは無理だろう。そう思い、着替えるだけにして、エナメルバッグに2日分の服を入れ児童福祉施設の駐車場に向かった。

駐車場には、野口と車に乗った先生が待っていた。



これから向かう場所は、マキシマムオンラインのオープンβの会場であるラクス社が経営するホテルだ。そこで、三週間寝泊りしVRMMORPGマキシマムオンラインのオープンβを楽しむのだ。

VRMMORPGというのは、仮想大規模多人数型オンラインローリングプレイゲームの略らしい。

VR技術は、人の脳波にあわせて仮想空間内の仮の自分を動かす技術だ。2063年アメリカで軍事訓練のため開発された。2065年、日本でVR技術を応用しVRMMOを作り上げたが1機1機の値段が高くなるため一般発売は、断念された。2068年、VRMMO機を小型化、安価にすることに成功。世界中にVRMMO機が広がった。2071年、ラクス社がVRMMORPGの新作、マキシマムオンラインのオープンβの開催が発表された。そのオープンβに野口が申し込んだら見事当たったのだ。

マキシマムオンラインのオープンβの定員は、100名50組なのだから、当選した野口は非常に幸運だったのだろう。

オープンβの申し込み方法はハガキなのだが、野口はハガキを何枚出したのかを聞いても、話をそらされるだけだった。

だが、児童福祉施設ではこんな噂が流れていた。

郵便局から、野口愛花様宛にハガキ500枚と書かれたダンボールが送られてきたとか、なんとか・・・



車から降りた俺たちは、ホテルに入った。

受付カウンターまで荷物を引きずっていき、カウンターの向こう側にいる黒髪のロングヘアーの美人女性に話しかけた。

「あ、あの、すいません。マキシマムオンラインのオープンβの・・・・・・・」

ここまでは話せたが、やっぱり知らない人と話すほどつまりやすい。声が出ないまま口をパクパクさていると、向こうから話してくれた。

「マキシマムオンラインのオープンβの方ですね。」

「名札がここにありますから、自分のやつを取ってください。名札の裏にカードキーも入ってますのでなくさないで下さいね。」と、右側に並べられている名札をさしながら言った。

俺は、自分の名札とその横にあった野口の名札を取り野口に名札を渡す。

ありがとうと、小さな声で礼を言うと野口は名札を受け取った。

「あれ?」と、名札の裏からカードキーを取ろうと名札の裏に手を入れた野口が小さな声を上げた。

「どうした?」と聞くと。

「カードキーが無い」と野口は困った声で言った。

そのやり取りを見ていた、カウンターの女性は当たり前のように、

「1組に、一部屋ですよ?」と言った。

「「えっ?」」 

「あれ?君たち兄妹じゃないの?」少し面白がって言ったのが声で分かる。

「ち、ち、ち、違います。私と一喜君は・・・・・・えと、と、友達です。」野口が珍しく大きな声言った。

そういえば、俺たちはどういう関係なんだろう?幼馴染と言うわけではないし、友達というには仲が良すぎる気がする。まぁ、別にどうでもいいだろうと思い考えるのをやめる。

「部屋は、1組に一部屋で変えられませんので、我慢をしてください。

あ、あと、変な気は起こさないでくださいね。特にえ~西村様。」口調は丁寧だが笑いを抑えているのが口調から分かる。

「ははは。もちろんそんなことはしませんよ。」と言って、まだ顔を赤くして何かぶつぶつつぶやいてる野口を引きずってエレベータに乗る。

カードキーに書いてある部屋番号は、405号室なので4階のボタンを押す。

チンッという、オーブントースターの終わりの合図のような音がして、エレベーターの扉が開いた。

403、404と部屋がと続き、405号室が見つかった。

カードキーで、ロックを外すと部屋の中に入る。

中は意外と広く、右側にベッドが2つ並んでいて、左側にはテーブルがあり、奥には扉がついていた。

扉の向こう側は、洗面台とトイレと風呂があった。

そこまで確認したとき、ドアがノックされた。

はーい、と言ってドアを開けるとそこには野口がいた。

野口によれば、2人で同じ部屋を使うことについて色々悩んでいたら、ドアが閉まってしまい。オートロックだったため、ノックしてあけてもらった。と言うことだった。

野口が部屋に入ったことを確認して、ドアを閉めるとベッドに横になろうとした。

その時、ベッドの上にダンボールが一つずつ置いてあるのが目に入った。

ダンボールをあけてみると、バイクに乗るときにつけるみたいな、顔全体をすっぽり覆うヘルメットみたいなものが入っていた。

「野口、野口。これが、VR機ってやつなのか?」

聞いておいてなんだが、野口もVR機を直接見るのは初めてに違いない。

「うん。そうだよ。先日発売された新型だよ。それにその色は非売品だからレアなんだよ。」と、説明するのが楽しいかのように、勢いよく言った。

うん。なんていうか、野口の意外な一面を見れた気がする。

まぁ、100名の中に当選するぐらいハガキを送ったのだから、それぐらいは知っているよな、と納得しながら、VR機をかぶってみる。

目を開けるとそこは・・・真っ暗だった。

おっと、そうか、コンセントつないでなかったな。

VR機を外すと、俺は野口に、これからなにするの?と聞いた。

しおりによると、明日の朝からオープンβが始まるという。

ご飯は、セルフサービスで何時にログアウトしても食べれるようになっているらしい。

興味ないふりをしていたが、実はすごくマキシマムオンラインが楽しみなのだ。

どんなゲームなのかな?・・・そんなことを考えながら俺は、ご飯も食べずに眠りについた。

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