プロローグ
プロローグ
「お母さん!お父さん!お母さん!お父さん!」
まだ7歳ぐらいの男の子は、消防士の隊員に燃え盛る家の中に入ろうとするのを
止められながら、家の中に残っている両親を呼び続けた。
家が全焼し火は止まった。男の子は警察に両親が死亡したことを伝えられ
家の外に集まっている野次馬にまぎれ、ただ、夕焼けに染まり始めた空を見上げているだけだった。
男の子には、親戚も無く警察に一時保護され児童福祉施設に預けられた。
7歳にして親を亡くし家も無く見知らぬ人たちが暮らす児童福祉施設に預けられた男の子の心の傷は、大きいものだった。
男の子は先生に、自己紹介をするようにといわれ、児童福祉施設に住んでいる子が
集まる教室の前に出て、自己紹介をしようとした。
男の子は、自分の名前は西村一喜です。と言おうとしたが口がパクパク開いたり閉じたりするが声は出なかった。やっとのことで、声を出せた。
「に、に、に、西村一喜です。よ、よ、よ、よ、よろしくお願いします」
周りにいる子供たちは、ただ緊張してそうなってるのかと思い、笑った。
男の子は、7歳で親も家もなくしたショックで吃音になってしまったのだ。