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4.消灯


 夜の九時には消灯となる病棟の中は、けっして静かではない。唯一灯りの点った廊下を通じて、各部屋の声が聞こえてくるからだ。

 それは痛がる声だったり、泣き声だったり、呻き声だったりする。


 窓の外から近付いてくる救急車の音が聞こえる夜もあるが、その点に関しては今夜は静かだ。いや、サイレンだけだが。



 先日、別の部屋へ女の人が運ばれて来たらしいが、宏尚の居る部屋は相変わらず彼ひとりだった。


 いい加減、話し相手がいないのは、めげてきた。あの煩く感じた今西が懐かしく感じるのだから相当だ。



 今、何時だろう。

 宏尚は枕元に手を伸ばして、インターフォンの大きなボタンを押した。即座に応答があった。


「はい! どうしましたか?」


 声の感じから、美鈴だった。今夜は当番だったのか。


「すみません、トイレ、お願いします」


「はい!」



 もうかなり回復してきて、一人で出来る自信はあるのだが、勝手をやると看護師に怒られる。特に苑香に怒られたら、結構なダメージでしょげてしまうのだ。


 夏の夜は、汗になって出ていくのがほとんどだから、トイレに行く回数はそんなに多くはないが……。



 ナースセンターから廊下をやって来る足音がして、やがてドアがノックされた。


「今夜も蒸すわね」

 と言いながら美鈴が入って来た。血圧計を持っている。

「あとで計らせてくださいね」


「先でいいですよ」


「我慢できるの?」


「いえ、我慢っていうか……」


「そう? じゃ先に」



 美鈴はベッドの脇に屈み、宏尚の腕の汗をタオルで拭った。着ているTシャツもすでに、びっしょりだった。


「冷房、もう少し下げられないんですか?」


「寝られない?」


 宏尚はうなずきながら、血圧計が締め付ける作動音を聞いた。


「ごめんなさい」

 返ってくる答えは分かっていた。「この階で管理しているんじゃないのよ。我慢してね」と、済まなそうだった。



 宏尚は着ているものが汗臭いことの言い訳に、話を向けたに過ぎない。実際、患者なんて夜寝られなければ、昼寝ていれば良いのだから。


「はい、終わり」と美鈴。


 先ほどのタオルで、宏尚の額の汗を拭き始めた。


「あ、すみません」


「着替えたほうがいいわ。今日買ったパンツは?」


「テレビの横です」



 美鈴は、宏尚のTシャツを脱がせた。そして体の汗を拭く。袋からパンツを一枚取り出した。


 宏尚の腰の後ろに手を入れると、汗でびしょ濡れのパンツを脱がせた。太腿を拭きながら、

「随分直ってきたわね。肌の色がいいわ。あんなに変色していたのに」



 宏尚は頭だけ起こしながら脚を見た。脚の色より、股間から突き立ったものの方が気になった。どんどんむくむくと起き上がり、かたく大きくなっていく。



 美鈴はそのまわりの汗を拭いていた。宏尚がベッドの上に置かれた新しいパンツに目をやったときだった、美鈴の手が◎ニ◎を横に押さえた。

 彼が驚いて見ると、タオルを持った手が股間に入り込んだ。



「う!」

 思わず宏尚の口から声が漏れた。



 いつもどおり素知らぬ顔でいると思った彼女の視線が、宏尚に注がれていたことに彼は気付く。あとで思い返してみたとき、ほんの数秒のことが、この時は一分にも思えた。



 目が離せないでいると、突然ベッドが揺れた。ベッドの上に美鈴が膝を立てて上がっていた。

 薄い夏物の制服。そのスカートの裾をたくし上げて、真っ白いパンティに指をかける。



 そして下げた。

 宏尚はその様子を、まるで蝋人形にでもなったように固まりながら見ていた。

 美鈴が◎ニ◎の首を握った。



「ううっ」と、堪えた宏尚。

 自分の腰を跨いだ美鈴が、◎ニ◎を体内に包み込むところを見ていた。

「み、美鈴さん……」



 自分より二つ年上の女が、なにを考えているのか知りようもない。

 それよりも美鈴のほうが相手の目をずっと見ていて、彼女のほうが彼の気持ちを──いや感情を探っているように思えた。



 美鈴はスカートの裾を、ぐいっと引っ張って股間を隠した。そして腰を動かした。

 細い二の腕の脇を締め、宏尚の腹に両手を添えるようにして身をよじっている。



 女の前髪がたれて、彼の胸をくすぐっていた。美鈴は前屈みになって、宏尚の両脇に手をついた。

「あっあっ」と、か細くて可愛い声が漏れて、必死に腰を上下させた。



 もう、限界。宏尚は突き上げそうな声を殺して、仰け反った。

 その途端、美鈴は大きく腰を浮かせて◎ニ◎を解放した。



 宏尚の胸の上に突っ伏した美鈴。

 スカートの後ろが捲れ上がって、薄暗がりの月明かりに浮き出た白い尻がなまめかしかった。



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