第1集
こんにちはこんばんわっ、やっと新作が書けました!
この話は…マジで私の全部の出したって感じの作品で、これを出すまでに没になった作品達もこの作品内で成仏させて、すごく長い構想になったので
まず第一集ということお願いします。
(この作品は過去作のネタも含んでいますが、
初見の方でも楽しめるように作ってあるのでご安心ください)
この世界には、『HILU』という存在がいた。
それは、言わば人々の不幸を自動的に引き受ける存在。
世界の幸福度を安定させる為だけに生を受けた。
そして、死んだとしてもまた、
同じHILUとして生まれる。
これは、そんな長い歴史が続いた近代に生きる、HILU達の物語だ。
【第0話 ×××-××××-××××】
「なんか今日…暑いっすねー」
「まぁもう七月も後半だしな」
緑の生い茂る石垣にもたれ、二人の男はは煙草をふかしていた。
すると、日陰になっていた草木から急に光が指す。
「眩しッ」
差し込んだ光が、一人の長髪の男の目に入る
「急に日が照ったな、ほらっこっち来いよ」
もう一人の男は、少しだけ横にずれて、光の当たらないところにスペースを空ける。
その時、持っていた煙草が手から滑り落ち、男のサンダルへ、指の隙間に落ちた。
「うわっあっつ!あちっ、あちっ、」
「先輩もついてないっすねぇ」
足をバタバタさせる男を横目に、長髪の男は空けてもらった日陰へ移動した。
「まぁ、しょうがないんすけどねぇー」
「クソっやっと取れた」
「ところで、ねぇ先輩」
「なんだよ」
「頭のそれ、取らないんですか?」
男の頭には、人の首ひとつ収まる程度の大きな被り物を被っていた。
人の両足、両腕、首を切り取った身体に、
胸から下腹部まで、皮膚をきれいに丸く剥いだようなデザインをしている。
大きく見える二つの肺が、目のように見える。
最低気温30℃超えで、好きで被りたいとは思えない気温の中、『先輩』と呼ばれる男は外そうとはしない。
「別にいいだろ」
「見てて暑苦しんですよ」
「我慢しろよ」
「.....っす」
「そういえばさ」
「はい?」
「『何か見つけて』は今日も仕事か?」
「あーそうですね、ミーちゃんは明日も連勤だそうです」
「頑張るなーアイツも」
「最近は何するにも金がいりますからねー」
「それ比べて俺らは暇か、仕事もねぇし」
「しゃーないっす、最近新しいHILUも増えましたし、“連合”も新入りに仕事をまわしてるんでしょうよ」
先輩はタバコを少しふかし、ハァーっと口から吐く。
「…そうか、昔は忙しかったのにな」
そういいまた新しいタバコに火をつけた。
「そうなんすか?」
長髪の男は、相槌のようにそう答え、
腰を少し下におろして、だらっとした姿勢に変わった。
「おう、そりゃな。
戦争とかで弾除けになるって、“労働戦”では1番前に立たされてたからな」
「へ〜そんな仕事あるんすね、
僕ももっと早く生まれてたらな」
「バカか、生きてて本当に良いことがないんだから、仕事ごときのために早く生まれるなんて、終わってるわ」
「……でも、今はそんな不幸って思えないですけどね、暇なだけで」
「そうかい……お前にとっちゃ神の呪いも、慣れればそんな事無い…って事かよ」
面白くなさそうに先輩はタバコを落とし、踏み潰した。
「……そういえば、先輩ってかれこれ何年生きてるんですか?」
「俺か?……分かんね、何回も死んでるし、
いちいち数えてたら耐えらんねぇよ」
「死んでもまた同じ……か〜」
「お前はまだ1回も死んでねぇからな、
この苦しみが分からないだろ」
「……そうっすね」
「まぁ、今の時代は良くなったよ
人が簡単に死なない良い時代だ」
「そうっ……すね」
そう呟いた途端、
目の前のアパートから鈍い音が響いた。
何かが上空から落ちてきた様だ。
“ドォンッ”
鈍い音
血飛沫が飛び、煙草の火が消える。
先輩は、
消えたそのシケモクを、目の前に投げ捨てた。
「汚ねぇ」
「あーゆー自殺は増えましたけどね」
「……」
「………本当に」
「…はい」
「暇…だな」
「はい」
「………」
「あ、そういえば先輩」
「なんだどうした?」
「ここの公園って、四葉のクローバーしか咲いてないらしいですよ」
「四葉のクローバーって、あの幸福になれるってやつ?」
「いや、見つけたら幸福って感じの雑草ですね」
「そうか、俺らが捜してみるのも面白いかもな」
「今日はどうせ暇ですし、やりますか」
先輩は腰を上げる。
「おーしっ、やるか」
二人は、石垣を登り柵を超え、
公園へと入っていった.....
.....4時間後
日も暮れて、空はすっかり薄い赤が広がっていた。
昼間の暑さを忘れたのか、肌に当たると心地の良い風が吹いている。
その風に揺られ、手に持ったレジ袋の中身が、コロコロと袋の中を動き回った。
「今日も疲れたなぁーマジで」
風に当てられ、コンクリートの上をふらふらと、“一人の女性”が歩いていた。
黒縁メガネに派手な金髪で、前髪をアホっぽい形に結んでいる、既に買った酒を何本か飲んでいるようだ。
「.....家.....まだいいや、公園で飲も」
そう言い、公園へと入っていく。
だが、そこには女性にとって見覚えのある人物が、土まみれで公園を徘徊していた
「……うげっ、あんた何してんの?」
「ん?あ、ミーちゃんじゃん」
「汚な.....というか土臭っ」
そう鼻を擦ると、また後ろから見覚えのある人物が歩いて来た。
「お前も酒臭いけどな」
「あ、“先輩”」
「仕事帰りか?」
「はい、ちょっと公園で飲もうと思って」
「丁度いい、俺らにも1缶ずつくれよ」
「えーもう残り2本しかないんですよ?」
「お前の明日の仕事変わってやるから」
「マジすか?」
「おう、暇だったしな」
そう言われ、『何か見つけて』という名の女性は、
少し嫌がりながらも、袋に手を突っ込んだ。
「それじゃあ、はい、全然譲ります」
二つ缶を受け取り、先輩はもう一つを長髪の男に渡した。
「ありがとよ、ほら、お前のだ」
「あ、ミーちゃんありがとうっ!」
そうお酒を渡され、二人の汚れた男はベンチに座り、酒を飲み始めた。
何か見つけても立ちながら、二人を
「そういえばさ、二人はそんなに汚れて何してたの?」
そう言われ、長髪の男がパッパッと手を払う仕草をした。
「あぁ、四葉のクローバーを探してたんだよ」
長髪の男は指に残った土を弄りながら、
地面を掘っていたであろう場所を見た。
「見つかった?」
先輩は首を振る。
「全然だな、そもそもクローバーがない」
「まぁ、仕方ないよ
逆にミーちゃんの方はさ、今日の仕事どうだった?」
「え、仕事?まぁまぁかな」
「ふーん」
みんな疲れているからか上手く会話も広がらず、
狭いベンチで、ぬるい風を浴びながら、三人は空を見る。
夏の夕暮れは濃い赤が目立つ為、水平線との境界線に落ちるたび、少し寂しく思える風景だった。
「………」
「……」
「………」
「あ、《人包》が浮いてる」
「捕まえるか?」
辺りはもう暗くなり、人包と呼ばれる小さな白い人型が、宙に浮き始めた。
蛍のように、仄かな光で公園照らしている。
「もう…すっかり夏だな」
「何回経っても慣れないっす、夏には」
長髪の男は手をぱたぱたとうちわの様な仕草をした。
「そうだね、年々暑くなってるし」
「うーん、…まぁ暑いが、俺は夏は好きだな」
「そうなんですか?」
以外そうに長髪の男は先輩を見た。
「あぁ…だってさ、空を見てみろよ」
先輩は、空を見上げる。
「夏はさ、夜じゃなく、日が暮れた時間からでも、
星が綺麗に見えるんだ、
つかめそうなくらいハッキリとな、
あんだけの沢山の星、
いつかは、あれのどこかに…
地球からはずっと遠いどこかの星に、
俺は逃げたい」
そう先輩が言うと、
長髪の男も手を伸ばした。
「いつか遠くに…行けたらいいですね」
《いつか遠くに》
作 ひつーち
【第1話 何か、信じるって事すら】
”カッカッ”
黒板には先生が、あまり綺麗とは言えない字で緑の空白を埋めてゆく。
それをボケーッと子供達は眺めている。
学んでようがなかろうが、先生はどうでもいいのか、大きい欠伸をして「メンドッ」っと小さく呟いていた。
「あーうん、これから夏休みが始まるからな、
えー注意しないといけない事を話していくぞ」
子供達は声を合わせて「「はーい」」と呟く。
「早寝早起きとかは聞き飽きてるだろう、これも口酸っぱく言われただろうが、まずは水分補給をしっかりすること、これが一番大事だからな。
お前らも子供だから外で遊ぶことが多いと思うが、太陽の光が強い日は外にあまり出ず、
家で宿題をやりなさい。
あとは、夏の中期には人包や『人柱』、『コールピクス』達が生え始める、あぶないから近づくなよー
あとは……あ、そうだ、不審者に気を付けることだな、ここ最近、変な被り物をした男がよく出没するらしいから、見かけても近ずくなよーっ」
「「はーい」」
「ヘっくしゅっ!」
「先輩、夏風邪っすかー?」
「いいや、多分違う」
「?」
「そんな事より、
ここで場所は合ってるのか?」
スマホを覗いて位置情報を見ると、
赤い矢印マークが目的地を示している。
「あーはい、ミーちゃんが言うには、この樹海の奥深くに、探してる“コールピクス”がいるそうです」
「…ったく、ビール1本で仕事何なんか引き受けやがって」
「先輩でしたよね引き受けたの」
真夏の午後二時、まだ明るいはずだが、二人のいる樹海は、暑さも忘れるくらいの冷たい影に覆われていた。
「うわっ」
「どうしました?」
先輩は重そうに片足を上げる、
足には泥が付着していた。
「地面がぬかるんでる、埋まらないよう気を付けろよ」
「あ、ほんとだ」
長髪の男もそこで、自分の足が泥に塗れている事に気づいた。
「…クソッ……不気味な場所だなっホント。
暗すぎて人包がもう浮いてやがる」
近くを飛ぶ人包をはたいて、まるで虫を避ける様に先輩は地面に落とす
「所々人柱もいますしね、あそこにもいる」
そう指さした方向には、巨大な顔が地面から生えていた。目の焦点は合っていなくて、鼻から血を出している。
「構うな、祟られるぞ」
「でも、アイツらを見ると、
本格的に夏だなーって」
「何がだよ、別に夏じゃなくても年中似た様なのがいるだろ」
「まぁ確かに……
あっ…ちなみに、僕らって普通の人間より、
アイツらとの方が近しい存在らしいですよ」
「……じゃあいっその事、人包とかになりたいわ、HILUよりマシ」
「それはそうっすねぇー」
そんな雑談を続けていると、先輩は思い出したかの様に別の話題を話し始めた。
「あ、そういえばさ、お前って自分の名前決まった?」
「そうですね、最近決めましたよ」
前からそんな話をしていたのか、長髪の男は肩にかけたボストンバッグから、くしゃくしゃの一枚の紙を取り出し先輩に手渡した。
先輩は紙を受け取ると、上の長い契約文を飛ばして、下の黒太文字の部分に目をやる。
「『どこか遠くに』か」
「安直ですけどね」
「…いや、全然…良いな」
「これからはそれでよろしくお願いします。
…というか、先輩は…呼び方“先輩”のままでいいんですか?何か…名前とか」
「今のところは…先輩…でいい」
先輩は少し言いにくいことでもあるのか、
あまり話したくなさそうだった。
それに対し、どこか遠くに はあまり気にしず、
また別の会話に戻った。
「そうっすか」
「……ていうか、結構歩いたけどまだ着かないの?」
2人は、かなりの距離を歩いているはずだが、スマホを見ても目的地にはまだ着きそうもない。そもそも位置情報が最初の位置から動いていない。
「電波がないっすから、もしかしたらもう着いてたりするかもしれません」
「マジか?何も見当たらないし、景色も変わらないから分からないな」
“ボトッ”
そう言った瞬間、何かが落ち、何かが飛び散る音が背後に響く。
「なんだ!?」
焦って振り向くと、そこには赤と黒と緑を混ぜたみたいなぐちゃぐちゃな物体が落ちていた。
「どっから落ちてきた?」
そう上をむくと、そこには人型ではあるが、
原型を留めていない何かが宙に浮いていた。
「あぁ、ただの腐った人間ですね、
ここら辺で首でも吊ったんでしょう」
「ホントだ、汚ぇ」
「ソーダネッ」
“ボトボトッ”
「うわっ降って来てる」
「最悪っすねマジで」
「キタネェーっ」
「ホントにな」
「…………」
「…………」
「コイツなんです?」
「知らねぇよ」
空から降る腐乱死体に気がいってる間、
いつの間にか背後には、見知らぬ何かがいた。
ミディアムボブの髪型に、おでこの上から頭のてっぺんまで切り取って、脳みそを丸出しにしている子供のような何かが、2人の後ろから死体を眺めている。
脳が出ている以外は、普通の子供にしか見えない。
「コイツが、探してる奴か?」
「多分……そうなんですかね?
分からないです、コールピクスではありそうですけど」
「おい、お前なのか?街で子供攫ってるコールピクスってのは」
遥かに背の低いそのコールピクスに対し、先輩は上から睨みつける。
すると、怖がってしまったのか、
両腕をあげて涙目で先輩を威嚇し始めた。
「ヤッー」
「ちょっと先輩っ」
「いやだって、コイツがさ」
「コールピクスは繊細な生き物なんすから、
あんまり刺激しちゃダメなんすよ」
「ヤッーヤッー」
コールピクスと思われるそいつは手を挙げて、
まるでレッサーパンダの威嚇のような姿で、
2人を牽制しようとしていた。
「拉致があかねぇ、どこか遠くに お前知識あるならやってみろよ」
「…んなむちゃな、まぁ先輩よりマシか(小声)」
「あ?」
「分かりました、わかりましたからっ、
やりますから」
先輩に半ば脅しの様な感じで圧をかけられ、
どこか遠くには、渋々コールピクスの元に向かう。
そして、コールピクスの目線に合わせてしゃがみ、ぎこちないニヤケ顔をした。
「大丈夫……だからねぇ〜」
笑顔に慣れてないのか、口を動かすのにも手間取っているようだった。
「…お前の方が怖いわ」
「……キモッ!」
「なんだとおいこのクソガキっ!」
どこか遠くに は腰に手を当てた。
“カチャッ”
「イヤッー!ヤー!」
逆上してコールピクスを撃ち殺そうとする どこか遠くに だったが、拳銃を構える手を先輩は押さえる。
「馬鹿っ落ち着けって、生け捕りしないとなんだからやめとけっ」
そう言われ どこか遠くに は二、三回深呼吸をした後、ゆっくりと銃をしまった。
「……ハァッ……すいません」
「コワイッコワイッ」
どこか遠くには落ち着いたが、コールピクスは完全に怖がってしまったようで、
両手で頭を抱えて二人を見ようともしない、
だがチラチラと見るので、目をつぶって、
瞑ってる間に二人が消えてないか、確かめているようだ。
「あーもう、コイツめんどくせぇな、
話も聞けねぇよ」
「先輩のせいで完全に警戒モードに入ってますねこれ」
「お前が銃向けたからだろ」
「モウ……ボクラヲ、イジメナイデッ!」
「……は?“ボクら”?」
「コイツ1匹だけじゃないんすかね?」
“ガサガサッガサガサッ”
その時、色々な方向から、
何か近寄ってきている音が響く。
「ミンナッミンナッキチャダメッ!」
「なんだ突然、急に焦り始めたな」
「クルナックルナッアブナイッテッ!」
“ガサッ”
「ピクスッ」
草むらから出てきたのは、
また見覚えのない謎の生き物だった。
小人の様な手のひらサイズで、
顔は髪の生えたただの人間だが、
首から下は手も足も皮膚も筋肉もない、
臓器だけが露見している。
おそらくではあるが、目の前のコールピクスの幼体……子供だろう
「ピクスッ」
「ピクスッピクスッ」
「ピクピクッ」
「ピーピー」
「凄い量の子供だな、繁殖しすぎだろ」
「この様子だと、コイツの子供っぽいっすね」
「……つまりこの量なら、コイツが犯人で正解かもな」
「…まぁ、そうっすね、野生でこんなに繁殖できるって事は、そうゆう事ですからね」
「話聞くまでもなかったな…」
「イヤーッヤメテヨーッ」
そうしてそのコールピクスを連れてゆこうとした時、地面にいる子供に二人は目が行った。
「ピクスッ!」
「…この子供らどうするよ、
また戻ってくるのもめんどくさいし、
ここで駆除するか」
そう言われ、どこか遠くに は引き攣った顔をしたを
「えぇ今っすかっ?………じゃあこれで」
“カチャッ“
「おい、別に銃なんかいらねぇだろ、こうやって」
先輩は足を上げた。
「ピクスッピクスッ……ピッ?」
“グチャッ!”
「踏み潰せば、弾を減らさずに済む」
「なるほど」
「アッ……アッ………アァ…ナンデッナンデッ!」
さっきまでアホ面で怯えてたコールピクスの顔色が変わり、現実が受け入れられないといった顔をしている。
「あ、やっぱ目の前でやるのは不味かったですかね」
「ピクスッ!!ピーピー!」
「別にいいだろ、コイツはさらった子供に種植えてんだ、人殺しに同情なんかしなくていい」
「ピーピーッ!ピクスッ!」
「まだコイツかは分からないっすけどね」
「ピクスッピクスッッ!!!」
「状況証拠が物語ってるからな、コイツじゃない事はないだろ」
「ピクスッピクスッ……ピク?」
“グチャッ“
「イヤッー!ヤメテッ!」
「ちょっと…可哀想ではありますね」
「気にすんなって」
“グチャッ“
「ヤメテッ!オネガイッ!」
「やっぱり、回収して別の時に減らした方がいいっすよ多分」
“グチャッ”
「アッ…アッ」
「先輩!」
少しどこか遠くに が声を上げると、
先輩は足を止めてゆっくり振り向いた。
「……なぁ、どこか遠くに」
「……なんですか」
「お前は、自分の生を恨まないのか?」
「……えっと」
「…俺はな、恨んでる、殺したいくらい神が憎い、生きていても不幸で、死んでも終わらない、こんな世界、生まれるだけ損だ」
「………」
「イヤダァーッヤメテーッ」
「早いうちに死んで、それで終われるなら、
俺はそれで良いと思う。だから…」
“ぐちゃっ”
「アッ……アァ……アァァァァァッッッァ”ァ
ヤメテックダサイッテイッテルノニィーッ!」
「お前も覚えとけ、死んで終われるだけの事が、どれだけ幸せか」
“グチャッ”
「ァァァァァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”」
「…あとはコイツだけだ、連れてくぞ」
「……………先輩」
「………?」
「先輩は……いや、何でもないです」
「………そうか、じゃあ、行くぞ」
二人は樹海の入り口へと戻った。
樹海に入る道の駐車場には、かなりの数の警察と『新HILU連合』の役員が居た。
おそらく2人の仕事を待っていたのだろう。
「あ、戻ってきましたよ」
そう部下が伝え、振り返る、
長く黒い髪を肩にかけ、片目に眼帯をしている彼女は、コールピクスを担いで帰ってきた2人のHILUを見て、大きく溜息をついた。
「おーっす、捕まえましたよ〜
人さらいのコールピクス」
「……なんでお前がここに居る?
この仕事は、“何か見つけて“に頼んだはずだが」
「あーえーと、何か見つけて が体調悪くて、代わりに来た感じですね」
「横に居るのは?」
「あ、コイツですか?
最近正式に連合のHILUになった、
“どこか遠くに”っす」
「……よろしくお願いします……」
「……まぁいい、それより、
そのコールピクスは犯人じゃないぞ」
「え?」
「え?」
「子供を攫っていたのは、人間の男だった。
今さっき出頭したと連絡があってな」
「……マジすか……?」
「だから、ソイツは森に返してやれ、
今は繁殖期だからな、子供もいるだろうし」
「…………」
「…………」
「……?何黙ってるんだ?」
「あ……そーですね、森に……返してきます」
「……スっ」
2人は女性に軽い会釈をすると、早足で樹海に入っていこうとした。
だが……
「……待て」
「……」
「お前、なんでそんなに足が血塗れなんだ?」
「……ナンデデショウネ」
「………さてはお前ら、コイツの仲間とか殺したんじゃないのか?」
「ギクッ」
「ハァ……図星か、
確かに減らすべきではあるが、
そんな事しても何にもならないってのに、お前もわかってるだろ…
しかもその様子じゃ、ソイツの目の前で殺したみたいだな」
連れてきたコールピクスは焦点があっておらず、
放心状態というのがしっくりくる状態だった。
「……はい、…先輩が」
どこか遠くにが先輩を指さした。
「あ、おいっ!」
「その状態になったらもう野生化は無理だな、
責任とってお前らがソイツの面倒見ろよ。
絶対に森に返すな」
「えっ、マジすか!?コイツ飼わないといけないんすか?」
先輩は流石に予想もしてなかったのか、
唖然とした顔でどうしよう、といった感じに困っている。
「僕もたまに様子見に行きますね」
「俺が飼うの確定なの?」
「……とにかく、やった事の責任は取ってもらう、今日はもう、ソイツ連れて帰れ」
「ですって先輩」
「……マジかよーっ」
【第二話 人とは違う】
「珍しいですよね、『サキさん』が現場に出向くの」
「………別に、今日は時間があったから」
錆びれたラウンジにて、先輩はあの樹海の駐車場にいた黒髪の女性と共に、バーカンに座っていた。
古臭いジャズが耳から耳へ通り、バーのマスターはそれに聞き入っているようだ。
「良い店だろ、此処は…
静かで……特に気に入ってるんだ」
「確かに洒落てますね」
「……なぁ、今は敬語は使うなよ、
歳は変わらないだろ」
「…そう…………だな……
それで、今日はどうしたんだ?話って」
「………前からずっと言っているが、
そろそろ、連合の派遣なんかじゃなくて、正式な役員になってみてもいいんじゃないか?
お前くらい長く生きてるHILUが、なんで下働きの連中とつるんで…
お前ならきっと…私より上の立場だって簡単に」
「…俺からの答えは変わらない、諦めな」
サキは、答えがわかっていたから、
少し微笑みを見せた。
「そう言うと思ってた」
「サキ…俺は…」
「もう行くよ、今日悪かったな」
「……」
「それじゃあな」
「………………なぁ」
「………………」
「『カナ』によろしく言っといてくれ」
「…分かったよ、お前も…諦めが悪いな」
「うるせぇ」
「っ、じゃあな」
“カラン”
扉が閉まると、店の中は先輩とマスターだけになった。
「お客さん、何か飲むかい?」
「………いいよ、悪酔いするだけだ」
【第3話 片道切符 】
「「ジャンケン…ポンッ!」」
「あー、また僕の負けか〜」
「はい、弾は込めてあるよ」
「サンキュー」
“カチャ”
「………ふぅ、いきます」
“カチッ”
「………あぁ、快感だわこれ」
「お前達…もっと緊張感持てよ」
火薬の匂いの残る焼け野原、大勢の焼死体に囲まれたその場所には、多くの兵隊がいる。
どこか遠くに、何か見つけて、先輩の三人は新HILU連合の仕事で、戦場に来ていたのだった。
「だって…暇なんですもん」
「だからって戦場でロシアンルーレットする奴がいるかよ」
「でもさ、でもさ、『戦争労働』なんて死ぬ事が仕事じゃんっ。
どうせ今回死ぬんだから、今のうちに死んどいた方がいいんじゃん」
「こんなところで無駄死にしてどうする」
「…それはそうですけど…」
「先輩、とにかくこれは気合を入れる為でもあるんです、ビビって行くより、死を恐れないって感じの方がかっこいいじゃないすか」
どこか遠くに は手に全くリボルバー をクルクル回しながら、それで自分を打つ仕草をした。
「そうかいそうかい、無駄だと思うがな、
ほら、そろそろあっち側がなんか落としてくるだろ、遊んでないで準備しとけ」
「もう出来てますよ」
「身体がめちゃくちゃ重いよ」
「みーちゃんには文字通り、
荷が重いらしいね」
「死ねよお前」
「今からそうするよ」
「ブラックジョークにもならないな」
三人の体には、これでもかというほどに爆弾が巻かれていた。
腹にダイナマイト、胴体に手榴弾、
膝に地雷、背中にロケットランチャーの球、
そして頭には、黒い布を被せられている。
「特攻兵さながらって感じですね」
「できるだけ敵殺して自爆しろって事だろ、
弾除けよりうんとマシだっ…と、お、こりゃ懐かしい物が…」
先輩は、地面に落ちていたアサルトライフルを拾った眺めた後、何も無いところに銃身を構えた。
「『アルキンソンM2』…目にするのは世界大戦以来だな」
「世界大戦?」
「あぁ、第二次世界大戦だ。
大戦でのHILUの扱いは酷かったぞ、一番前だから背中を打たれて、味方に殺させるなんて事もあった」
「へぇ〜、そんな事があったんだ…
というより先輩ってそんな昔から生きてるすね」
「いや、もっともっと前だぞ」
「時代的にはいつです?大正?まさか江戸とか?」
「…、いつか教えてやるよ」
「そんな隠すような事でもないのに…
でも、ずっと長く生きてるなら知りたいかも、
それじゃあ先輩、聞いちゃうんすけど、
ちょっとはなんか、良い時代とかありました?HILUにとってとか」
「…良い…時代…か」
何か見つけて に尋ねられ、
先輩はゆっくりと腰を上げた。
「先輩?」
「何か見つけて 、良い時代ってのはな…平和な時代の事を言う、ここは日本ではないからよく分からんが、平和の作り方っては万国共通のはずだ」
先輩は遠くを見つめた。
「…更地一つ作るだけでいい、
材料に…銃と爆薬がいるがな」
「皮肉な世界ですね」
どこか遠くに は呆れた様に言う。
「…もう行くぞ、とりあえず“あのガキ”連れてさっさと車に乗れ」
先輩はそう言うと、軍隊が用意したであろうジープの運転席に座った。
「先輩は口が悪いわ〜、
あんな小さな子に無理言うなっての」
「みーちゃん行ってよ、僕には無理そう、
子供は特に」
どこか遠くには、親指を立てて首を掻っ切る仕草をした。
「わかったよ、先行ってて」
“ガタガタガタガタ”
二人の目線の先には、目に見えて震えている、
小さな子供がいた。
小柄な体で灰色のボサボサの髪がよく目立っている。
「ねぇ、君大丈夫?」
何か見つけては、同じように身体中に爆弾を巻いた子供に近寄った。
子供は死ぬことが怖いのか、はたまたこの環境自体が怖いのか、ガタガタと震えているようだ。
「確か名前…『ただ君に幸あれ』だっけ…
私は“何か見つけて“って名前だよ、“みーちゃん”って呼んでね」
ガタガタ…
ただ君に幸あれ と言う名前の子供は、
何か見つけて をゆっくりと見る。
「…あの、…その…みーちゃん…さん、
あたし…怖い」
「……うん、怖いよねー、
まぁこれは慣れだよ慣れ、逐一辛くなっててもしんどいだけだし、経験を重ねて強くなろーって感じで…ほら、ね?」
「……分からない…なんでママは私を捨てたの?なんで毎日おじさんにイジメられるの?なんで…なんで知らない国で…爆発して、
死なないと行けないのっ…私…何にも悪いことしてないのに…」
「……………………それがHILUだよ」
「分からない…分からない…」
「ほら行くよ、そんな事…私達だって知らないし」
「…でも…」
「行くよ…」
「……」
「……」
「……ウッ…死に…死にたくないよぉ…」
ただ君に幸あれは涙を流し始めた、
そんな様子を見て、何か見つけては、
彼女に近づいた、そして…
「………」
何も…しなかった、
できなかったのかも…しれないが。
「おーい、お前ら早く来ーいっ!
もう敵軍動き出してるぞっー!」
「あ、やばい、……とにかく行かないと…
私のそばに居たら多分大丈夫だから、
ほらっ行くよっ」
「…………」
少し引きずるように、ただ君に幸あれを何か見つけては連れて行き、車へ押し込むとすぐにも車は動き出した、敵国の主要拠点に向かっているようだ。
「みーちゃん、この子説得できたの?」
「…まー分かんない、この子が死なないといけない理由、私は知らないもん」
「HILUだからでしょ」
どこか遠くには即答した。
「…………」
「そりゃそうだけどさ、もっと良い…
…いや、なんでもない」
「君はさ…ただ君に幸あれちゃん…だっけ?」
ただ君に幸あれは小さく頷く。
「長いから“サッちゃん”て呼ぶわ」
「…それで…お願いします」
「ありがと」
「私もそー呼ぶー」
「………あの…あなたはなんて名前なんですか?」
「僕?“どこか遠くに”って名前だよ、
ミーちゃんは“どこか君”って僕を呼んでるからそう呼んでもらってもいいし、好きに呼びなよ」
「どこかさん…ですか…
ん、あの…ずっと気になってるんですけど…
なんでみんな、こんな…文みたいな名前なんですか?
私…連合の人に急にこう名付けられて…」
「あーそういえば確かに、
あんまり気にしてなかったけどそうだね、
ミーちゃん知ってる?」
「アンタが知らなきゃ私が知るわけないじゃん」
「先輩は知ってますか?」
「え?なに?」
「だから僕らの名前が文みたいになっ…」
「悪い後にしてくれ!もう突っ込むっ!
お前ら覚悟決めろよぉー!!!」
「…はっ!?えっ!?」
“ドカーンッッッ!!!!!”
【第四話 知らない事でもね】
「どこか君……ねぇ、どこか君ってば、
起きてよ」
「………んっ、え、…なに?」
寂れた六畳間で、雑魚寝をしていたどこか遠くには、何か見つけて に強引に起こさせれ不機嫌ながらに起床した。
「あのさ、前に戦場行ったの覚えてる?」
「うん…それが何?」
「あの時小さい女の子いたじゃん?」
「……あぁっあれだろ、唯一生き残った子か、
足が吹っ飛んだんだっけ」
「そうその子」
「…だからその子がなんなの?」
「今日から私達の家に住むことになったよ」
「…は?」
「ここに、住むの」
「それは聞こえてるよ、聞こえた上で聞き返したの、意味わかんないから」
「いやーなんかあの子虐待されてるっぽくて、
人間の元に置くより、わたしたちといた方がまだ安全かなっ…て、連合の人が」
「……理由は別になんでもいいけどさ、
ここ何畳だと思ってんの?狭すぎるし、
第一さなんで同居人の僕に確認も取らないの?」
「私が大丈夫なんだから、
どこか君も大丈夫なはずじゃん」
「いやいや、流石にそこまで一心同体ってわけじゃないじゃんさ」
「とにかく、私が許可してるから、
アンタも許可って事で良いね?」
どこか遠くに はめんどくさそうに寝転がった。
「………勝手にしてくれ、僕は眠い」
そして、そんなやりとりをしていると、
玄関先で何か物音がした、何かを押すような音が聞こえてくる。
“カチッ………カチッ”
多分インターホンを押そうとしているのだろう。
「あ、来たんじゃない?出てあげなよ」
「オッケー」
のっそり立ち上がると何か見つけては、
扉へと向かってゆく。
“カチッカチッ”
「今出まーす」
“ガチャッ”
「あ、今月の家賃なんだけど、今っ…」
“ガチャ”
何か見つけてはすぐに扉を閉めた。
「あれ?違う人だった?」
「え?あ、うん、大家さんだった」
「そっか」
“カチッカチッ”
「……しつこいね」
「これ使いなよ」
「あ、ありがとう」
“カチッ”
「はーい今出まーす」
“ガチャ”
「あ、ちょっとなんで閉めるんっ…」
“カチャッバンッ!”
“ガチャ”
「帰った?」
「うん、土にね」
夏に入りたてのこの季節は、まだ涼しいと信じたくなる季節で、日の照る地面は、既に少しぼやけて見える。
頭を撃ち抜かれた大家の死体は、
流れた血がぬるくなり、黒がかった色に変わっていった。
「キャアアアアァァァ」
「な、なんで部屋の目の前に死体がいるんですかっ!?」
「まぁ気にしないで、色々あるのよ、
ほら、上がって」
ただ君に幸あれ はまだ家にも入っていないのに、
既に嫌そうな顔をしている。
「………。
お邪魔します」
「あ、サッちゃん来た?
というかさっきの叫び声、君のか、
不審者かと思った」
「玄関前に不審死の死体があるけどね」
「ほら荷物おきな、重かったでしょ」
「あ、ありがとう…ございます」
「あと…その生き物は何?」
ただ君に幸あれは胸に何かを抱えていた。
その生物は、人柱を小さくしたような、
生首だけがある謎の生き物を抱いていた。
「あ、この子は『ゆめち』です」
「ユメチッ」
「喋った…てか鳴き声…ピ○チュウみたいだね、けっこー可愛い…ペット?」
「生まれた時からずっと家にいる、
私の…家族です」
「…ヘェ〜そうなんだ、あ、家族といえばさ、
親は大丈夫?」
「親…おかーさんは勝手にしろって…」
「そっか、こんな歳で人間からHILUに変化するなんてさ、酷い現実だよね…
立ち話もなんだし、座りなよ」
「あ、はい」
何か見つけて はただ君に幸あれ をリビングのソファに座らせた。
「色々あって大変だったでしょ、
まぁ、ゆっくりしなよ、HILU同士仲良くしようよ」
ただ君に幸あれはなんだかムズムズした様子で、
床を見つめている。
「ん?どうしたの?トイレ」
「……あ、えっと、違くて…
その、私本当に何にも分からなくて…
前の時だって急に連れてかれて、
ずっと知りたかったんですけど、
その…HILUってなんなんです?」
「そんな事、僕たちだって知らないよ、
HILUはHILUだから、そーゆーもん」
何か見つけて達の会話が聞こえたのか、
寝室からどこか遠くへが返答した。
「あ、あの人もこの家住んでるんですか…?」
「え?あぁ、どこか君の事か、
私達は《運命共同体》だからね、
大体はずっといっしょにいるよ。
血の繋がらない双子みたいなもん」
そう話してると、やっと目が冴えたのか、
どこか遠くにもただ君に幸あれの所に寄ってきた。
「よーこそ、狭いとこだけど。
そいやミーちゃん、確かこの子の資料持ってたよね、ちょい見せて」
「資料? あ、そんなのもあったね、
えっとどこだっけ、あ、あそこだ、
台所のとこに置いてる」
「なんでそんなとこに置いてんの」
「…あの、私の資料ってなんですか?」
「あぁ、知らなかったのか、
あんまり気にしなくて良いよ、
健康診断みたいなものだから」
「そうなん…ですか」
「本当にキッチンにあるじゃんっ」
少し驚いた声を出し、どこか遠くへは一枚の紙を手に取った。
「あ、見つけた?
じゃあサッちゃんは私と荷物片付けようか」
「あ、はい」 「ユメチッ」
「ハハっゆめちも手伝ってくれるってさ」
床を元気に跳ねるゆめちに笑顔を見せながら、何か見つけては、どこか遠くへに視線を送る。
“早く別の場所にいって”とでも言いたそうな顔だ。
それを感じ取ったのか、黙ってどこか遠くへは寝室へと戻っていった。
「よーしじゃあ片付けるか、
まぁ、そんな荷物ないけど」
「あ、まずゆめちの家だけ作って良いですか、
一番重たくて大きいので」
「良いよーてか、ゆめちちゃんお家あるんだ」
「野放しにはしたくないですし、
この子にも寝床はあげたいから」
「優しいんだね、それじゃあ運ぼうか」
“ギュッ”
「うわおっっっも」
「あ、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫大丈夫、サッちゃんが運べるんなら私もいけるはず」
「あ、いや、私は運んでないですよ?」
「え?じゃあ誰が」
「連合(?)のお姉さんが車出してくれて、
それでみんな運んだんです」
「連合の人か、誰だろ」
「確か『カナ』って名前だったと思います、
すごく優しい人でした」
「ヘェ〜、知らない人だ」
そう喋りながらも、何か見つけてはゆめちの家を淡々と組み上げてゆく。
家と言っても、少し大きなケージなだけで、
そう難しいものではない。
「まぁまぁ大きいね、この扉閉めたら…
勝手に鍵閉まるのか、便利だねー」
「ユメチッ」
「ゆめちちゃんも喜んでるよ」
「ありがとうございます…」
「……ねぇサッちゃん、ずっと思ってたんだけど、何か…不安な事でもあるの?
あるなら言って、できる事なら手伝うよ」
家に入ってから…いや、出会ってからずっとそうかもしれないが、ただ君に幸あれの顔は浮かばず、言葉もか細い。
何か怖がっているのか、態度を見る限り、ただの人見知りには見えなかった。
「………別に…大丈夫です
ただ、疲れているだけで」
「…そうなの?
まぁ色々あったしね。
今日は休みなよー」
「…はい、そうします」
「……」
【第五話 HILU的な日々】
白いフルスモークのハイエースにて、
二人の女性が座っている。
一人は眼帯を付けた黒髪の女性“サキ”
もう一人は茶髪のロングの髪を持った、
舌のない女性だった。
「なぁ『カナ』 なんであの子供を、何か見つけて達に預けたんだ?」
「…だって可哀想だったもの、
あの子はHILUであってHILUじゃない、
ただの不幸なだけの人間よ。
だから不幸すぎて、神に目をつけられてしまった。
少しでも不幸を分散させれたら、あの子達も元気に生きれるでしょう?」
「……そうか…というか思ったんだが、
最近、随分HILUの数が増えたとおもわないか?」
「…日本で28体、他国と合わせても100近く増えてるらしいね」
「もう合計で、何万人もHILUは地球上にいる。死んでも生き返るせいで、一度増えれば二度と減らない…神は何を考えているんだ?」
「地球にはまだそんなに不幸があるのかしら。昔のロンドンに比べたら全然マシに思える」
「思い出したくないな…それは…
てか、昔で思い出したけど、
そういえば『ガブリエル』ってHILUじゃなかったっけ」
「そういえば、そのはずだね…」
「あいつは教会で生き返りもしず、
ずっと死体のままだったな、…分かんなくなってきた」
「わかんなくても…まぁ、希望は持たないでおこうよ、どうせ叶わない…私達は…HILUだから」
「そうだね…
まぁ、私はカナがHILUで良かったと思ってるよ」
「私も…サキがHILUで良かった」
「もしいつか…HILUじゃなく、人間としてどこか遠くへ行けたとしても…カナがいないと意味がない」
サキの硬い口調と表情が少し緩み、運転席のカナへと哀愁のある好意を見せた。
カナは目こそ合わせなかったが、
利き手をサキの膝に置いた。
「当たり前じゃない」
「ねぇ、久しぶりにさ…私の家来ない?」
「…いいよ」
「やった」
「この仕事が終わったらね」
「うぅ…さっさと終わらすか、
本当、神の後始末は…大変だな…」
【第6話 着火剤】
「先輩…これ本当に釣れるんすか?」
「黙ってろ、釣り堀なんだから釣れないこたぁないだろ」
どこか遠くにと先輩は、釣り堀に来ていた。
趣味というわけでもないが、何となくで来ただけだ。
「でもこれは…」
朝の釣り堀は、虫などの死骸はポツポツと浮いている事もあるが、それより目につくのは、水死体のように浮いている大量の人包の死体だった。
「まるで“ナントの溺死”だな
まぁ、他にも客いるし、数匹くらいなら釣れるはずさ」
「そうっすかね〜」
「ネェ〜コレドウツカウ?」
「あぁ、お前はやったことないもんな、
ちょっと貸してみろ」
「そいつ連れて来たんですね」
二人の横には、釣り竿を興味深く見るコールピクスがいた。
前回先輩が引き取ることになった奴だ。
「しょうがないだろ、家に一匹にさせるわけにいかないんだからさ」
「なんだかんだ育ててるんですね」
「サキ…さんがうるさいからな、
ほら、針に餌つけれたから…これを水の中に落とすんだ」
「ワカッタッ」
“ポチャンッ”
「僕らも始めますか」
「そうだな」
〜20分後〜
「…もうそろそろかかってもいいんじゃないか?」
「魚いますコレ?」
「……いるはずだ、だってアイツは釣れてるんだから」
「サカナー」
バケツの中で泳ぐ二匹の魚をコールピクスは楽しいそうに眺めてる。
「一匹くらいは釣りたいっすね」
〜40分後〜
「ネェーアキター」
「こっちもだよ」
「一匹も釣れんとか…
本当HILUって感じですね」
「多分HILU関係なしにここが悪い」
「帰ります?」
「いや、一匹、どっちかが釣ったらにしよう」
「今日は帰れるんだろうか…」
〜1時間後〜
「ヤッタッマタツカマエタッ!」
暇だとうるさいコールピクスに先輩は、
たまたま釣り堀に売ってた虫取り網を手渡されて、水に浮かぶ人包の死体を取っては喜んでる。
「汚いからあとで手洗えよ」
〜2時間後〜
「ねぇそうだろう〜♪諦めーてると僕らは〜♪」
「なーぜかぁ♪すーこし♪いーきやすくなるぅ♪」
「ねぇそうだろう〜♪この季節の中でかーけてもぉ♪ぼーくのぉ〜ラジカセ〜はな〜りやま〜なぁ〜い♪」
「デーン…デンデンデンデーン、ワンツースリーフォー♪ バースに乗り遅れて〜♪」
「なんでトッ○シークレットマンに変わるんだよ」
「僕はハイパーポップの方が好きです」
「…本当もうそろそろ飽きて来たな」
「帰りましょうよ、もう、
コールピクスももう暇すぎて寝てますし」
「…そうだな、行くか」
「飯でも食べて帰りましょ」
「魚取れなかったし、代わりに寿司でも行くか」
「いいっすねー寿っ…あ、先輩ッ
竿っ、糸引いてますよっ!」
「え?あ、マジじゃねーかっ!」
目を逸らしていたその時、
先輩の竿がギュッと引かれて、
水の上に大きな波紋が出来た。
その日初の引きだった為、先輩は少し慌てふためいたがすぐに冷静になり竿を握る。
「うっおっっも、これはでかいぞ、
どこか遠くに!タモ用意しろッ!」
「?…あ、タモか…分かりましたー」
どこか遠くには、近くに落ちてた誰のかも分からない汚いタモを持ってくると、先輩の竿の近くで待機した。
「マジで重いってか、これ竿が耐えれんかも、
水の中見えないかっ?」
「え〜濁りすぎて見えないっすよ…
ん?でもあれ、あ、見えるっていうか、
でっかい影がありますよ!」
「じゃああと少しだっ!
獲れそうだったら獲ってくれ!」
「…先輩?よく見たんですけど、
あれ魚ですか?形が違うような…」
「海の中ってのは8割近く解明されてないんだから、俺らの知らない魚だっているさっ!」
「ここは釣り堀っすよ、
まぁいいっすけど、多分でかい水草とかですよそれ」
「うおぉぉぉぉっっっ!!」
「…まぁいっか」
「もう…少しだっ!…ぐぐっ、いけ…るぞっ!
タモ入れろっ!水の中に!」
「あぁ…はい(タモって水に入れるもんだっけ?」
どこか遠くにが言われた通り、タモを水の中に入れると、先輩と格闘している魚らしきものが勢いよく入って来た。
「うわっ」
その重さでぼーっとしていたどこか遠くには引き摺り込まれそうになった。
「このっ…!」
だがなんとか体勢を直し、
逆にその何かを、思い切り引き上げる。
「はぁ…はぁ…やったか?」
すでに釣り竿を手放し、タモに夢中になっている先輩は、へたり込んでいるどこか遠くにを置いて、その陸に上がった何かに、近づいった。
「ちょっと…ひどいじゃないですかっ
僕に全部押し付けて…」
「あぁ、悪かったよ、
だが、それより見てみろ、
お前が獲った、あの獲物を」
「えぇ…?ただの魚かなんかじゃ…?」
どこか遠くには、掠れた目をタモの中に向けると、そこには魚とも水草とも見えないものがあった。
それはただの水死体にも見えた。
白い肌の人型だ。だが一つ違うのは頭の上には、何か、輪っかのようなものがある。
「気持ち悪っ!なんすかこれっ!」
「これは本当にすげぇ、『天使』だよ、
天使の死体だ…五体満足でまるまる残ってやがる。
「やっぱ…死体なんすね、そりゃ水面が動かないわけだ。
それで、“天使”っていうのは?」
「神の子供だよ、俺達みたいな出来損ないじゃない、跡取りのために作られた子供だ」
「はぁ…でもそれ、人包とかとあんまり変わんないじゃないですか?」
「馬鹿言えっ、コイツがあれば…」
「…なんか出来るんすか?」
「とにかくっ、さっさと持ち帰るぞ、
丁度クーラーボックス持ってたろ、
そんなかに詰めとけ」
「えぇ〜ちょっと…触りたくないんすけど…」
「あとで飯奢ってやるから」
「それなら…やるかぁ」
先輩はどこか遠くに死体を詰めさせ、
自分は誰かに電話を繋いでいた。
「あ…もしもし…」
何を喋っているかはどこか遠くにも聞こえていなかったが、先輩いつにも増して真剣そうだった。
「先輩詰めましたよ〜」
「はい、はい、分かりました…“カチッ”
あぁ、出来たか?じゃあ車に詰めるぞ」
「コールピクスが寝てますけど」
「Zzz…Zzz…」
「あぁっ?置いてけそんなやつ」
「そっすか」
【8話 考えられなかった】
「今日はビーフシチューを作りますっ!
サッちゃん達も手伝ってね」
「おっー!」
「ユメチッ!」
釣りに行かず、家に残った組は、その日の晩御飯を作ろうとしていた。
「でも、あの人達 魚が晩御飯って言ってなかったです?」
「アイツらはそう言ってたけど、
どーせ釣れないから、先に私の食べたいもの作るの」
「なるほど、頭いい」
「でもビーフシチューってどー作るんだろ」
「それを知らないのに好きだったの?」
「どこか君がよく作ってたからね、
私は料理しないの、だから分かんない」
「でも材料はあるんだよね?」
「あるよほら」
何か見つけてが冷蔵庫を開くと、中には、
三段あるうちの一番上の上段に大量の缶の酒、二段目にはバターとか牛乳とかが大量詰まっていて、三段目には誰かの死体がある。
サイドには調味料が一般家庭くらいに揃えてはあるため、料理は出来そうだ。
「肉と野菜は?」
「野菜室にどっちもあるよ、
材料も揃ってる事だし、作り始めよっか」
「やりましょー(肉は野菜室に入れちゃダメだろ)」
ある程度使えそうなものを冷蔵庫から引っ張り出し、二人と一匹はキッチンに立った。
「えーとまずは、野菜を切るのか、
包丁は危ないから私がやるねー、
サッちゃんはジャガイモの皮を剥いて下さいっ」
「はーい」
「あ、そうだ肉も焼かなきゃ、これは〜
ゆめちに頼もうかな、よろしくね」
「ユメチッ!?」
ゆめちは“手足が無いのにどうしろと?”と
言いたげな顔をしている。
「あっ!」
その時突然、ただ君に幸あれが声を上げた、
「痛っ……痛い、…うわぁァァっっ!」
「ありゃ〜大丈夫っ?」
ただ君に幸あれの指は、ピーラーでザックリと皮が剥かれていた。
「痛そっ」
「痛い痛い痛いっっ!!」
「まあこうゆう時は、下手に絆創膏やらない方がいいんだよね、ちょっと指出して」
泣きじゃくるただ君に幸あれに対し、
何か見つけてはその裂けた指をまな板に乗せさせた。
「私達はHILUなんだから、こうゆう時に有効活用しないとねっ!」
「あれ、えっちょっ!?」
“ダンッ“
“ポチャンッ“
「言っ!ァァァァっっッッッッ!?
私の……指がァァっ!?
なんで!?なんで切ったの!?」
「いやぁ、痛々しく残るより、
さっさと肉体を切り替えた方が良いかなって」
「酷すぎるっ!酷いよ本当!
みーちゃんさ!一回死んでから、死に対するスタンスが楽観的過ぎるよっ!
それにやるならさ、殺してよっ!」
「ごめんっごめんって、まぁ、後で殺すから許して」
「許すか馬鹿」
そんな喧嘩をしながらも、調理は順調に進んで行った。
「おぉ〜ゆめち頑張ったね〜」
「フーッフーッ」
ゆめちは威嚇をしている。
「あとは鍋にぶち込むだけだね」
「そうだね、ていうかさ、私の指知らない?」
「え?見てないけど」
「まぁ……いっか、どうせ生えるし」
「それじゃあ、火をかけて……」“ボッ“
「あとは待つだけ、お疲れ様〜」
「おつかれー」
「ユメチッ」
煮込む時間は四十分と、ビーフシチューのルーの箱に書かれていた為、タイマーをかけて、二人はリビングへと戻って行く、
隣通しソファに座り、ただ君に幸あれの膝の上には、ゆめちが乗っかってきた。
「サッちゃんも以外と不器用なんだね〜」
「HILUになったせいで運が悪くなったんだよ…」
「そっか……そうだよね〜
でも良かった、サッちゃんもここに慣れてくれて…まだここ来て一週間くらいじゃない?」
「みーちゃんとはずっといるしね、
どこか君はまだあんまり慣れてない…」
「あ〜難しいと思う、無愛想だし、子供嫌いだし、多分性格だけならモロDV男みたいな人だよ」
「えーやばっ……じゃあでもさ、みーちゃんはなんで一緒に暮らしてるの?
付き合ってる訳でもないはずだしさ」
「ん〜色々事情はあるけど、やっぱり“運命共同体“だからだね」
「それほんとに何?」
「これ説明難しいんだよね……えっと、HILUっていうのはね、色んな種類がいて、その中の一つ、宇宙の運命軸が全く同じHILU同士を、運命共同体っていうの」
「……むずかしい……」
「つまりは、どこか君が死ぬ時は私も死ぬし、
どこか君が生きてる限りは私は死なない、
そうゆう風に作られてるの。
だから何をしようとどこか君とは離れられないし、どこか君も私から離れられない」
「……HILUって、人の不幸を全て受ける存在だったよね?その存在っているのかな?」
「簡単な話だよ。
人はさ、人とは暮らせないんだ。
人はずっと一人、それが運命で、
それが都合よくて心地がいい。
だから人は生きていけるんだよ。
他人も親も恋人も入れない空間を誰しも持ってる、絶対領域がある。
でも、それをお互いで犯し続けてるんだから、不幸も不幸だよ、何かしなくてもずっと不幸なの」
「…………そうなんだ…酷いね……神様は」
「サッちゃんも人のこと言えないけどね」
「確かに…」
「あーマジで、いつかでいいから、
普通に生きたいな…無理だろうけど」
「……普通かー…それは……分かんないなあんまり、」
「人としても生きたくないの?」
「そう……だね、別に人間だって良いものじゃないし。多分世界のどこだって、今が幸福だって言える人はいないよ。
どうせなら死にたい」
「……私は生まれてからずっとHILUだから……
それが分かんないな……人になれた瞬間、それが幸福なんだって……それが欲しい……
死にはしたいけど……
あ、そう言えば、サッちゃん殺すの忘れてた」
「そうじゃんっ、私も忘れてた。
早く指治して」
「分かったえ〜と……じゃあこれでいっか」
「あ、それどこか君の銃だけど…良いの?」
「まぁ良いでしょ、一発くらい」
“カチャ”
「良いならいいけど……じゃあよろしく」
“バンッ!”
そう何か見つけてが引き金を引いた瞬間、
凄まじい血飛沫がそこら中に飛び散った。
ただ君に幸あれの頭をそのまま吹っ飛ばしたのだ。
「うわ、手が折れちゃった…威力強すぎ………
こんな危ないもん机に置かないで欲しいな」
“ブクブクブクブク”
“ピーッピーッ”
「あ、ヤバい鳴ってる」
〜数時間後〜
「うん……まぁ普通のビーフシチューだね」
「でもお肉めっちゃ美味しいよっ」
「ユメチッ」
「ゆめちって料理上手いんだね〜」
「私ビーフシチュー食べたこと無かったから、
……結構これ好きかも」
「本当?じゃあまたどこか君に作らせるか」
「みーちゃんも作ろ、また一緒にさ」
「良いよ〜全然、暇な時なら」
「うんっ」
“モグモグ”
「……?」
「あれ、サッちゃんどうしたの?」
「なんか……この肉変……」
「え、普通の牛肉のはずだけど……」
「固いっ、ごめんちょっと口から出していい?」
「良いよ出しな、ほら」
何か見つけてはティッシュを差し出した。
「ありがとうっ……オェ」
「大丈夫?」
「……うん多分…………って、
うわぁっっ!!指だ!これ指だよみーちゃん!」
「人間の?」
「そう、人差し指っ!」
「あぁ、多分それサッちゃんのだよ、
さっきのやつ」
「……ついてないなぁ、」
「やっぱり普通の人間の方が良いよ、
こうゆう事なんか起きないしさ」
「多分HILUでも起きないよめったに」
「それはそうかも」
【第九話 知らんぷり】
「無理だな、帰んな」
「そんな……天使を丸々一体持ってきたんだぞ!」
「だからなんだってんだ」
先輩とどこか遠くには、“ある場所”に来ていた。
赤黒く、臓器と筋肉がぐちゃぐちゃに固められたような地面、波打つように飛び散る人の死体、大腸のような雲から落ちる人の頭。
そんな場所で二人が話しているのは、
真っ赤な肉体に白い長髪、そして、とてつもなく長い角を持った、現世では見ることのない生き物だった。
「お前ももう諦めろよ、俺と契約するなんて、
今よりもっと酷い事になるだけだぜ?」
「『悪魔』がそんな事言うなよ……もっとこう……そそのかせよ」
「人はまだしも、HILUをそそのかしてもな…
それに、お前の望みはあれだ…
この『地獄』に住む事だろ?」
「え、そうなんすか先輩っ?
なんで地獄なんかに」
「お前は黙ってろ」
「いいや、そこのロン毛の言う通りだ、
地獄なんて、HILUの来る場所じゃない。
天使一体貰ったところで、換金して金にするくらいしかできねぇしな」
「じゃあどうすればいいんだよ、
前は神の肉体があればいいって言ってたろっ」
「そうだよ文字通り、神の首を持ってこい、
子供なんか要らねぇ、お前らを作った神を殺したら、考えない事もないって言ってるんだ」
「…………」
「まぁ、今日はもう帰れよ、俺に出来ることは今はない」
「……チッ分かったよ、その死体は金にでも何でもすればいい、どこか遠くに、帰るぞ」
「あ、はい」
そうして二人は悪魔から離れていった。
先輩は期待もあったからか、ものすごく落胆した表情で溜息をつき、下を向いていた。
ふたりが離れしばらくすると、もう一人の悪魔らしき男が、その天使の死体に近づいてきた。
「あ、天使じゃん、あいつら達が置いていったのか?」
「ん?あぁ、これをやるから、地獄に住まわせろって無茶言ってきたんだ」
「ここにか?変なやつもいるんだな…」
「もう“扉”閉じてくんねぇかな、
HILUが来るとろくな事がない」
「まぁいいじゃん、アイツらも大変なんだから」
「……とにかく、この死体どうしようか」
「売ろうよ」
「……そうすっかな、じゃあ、運ぶぞ」
そうして、悪魔二体も天使を運んでどこかへゆくのだった。
そして一方、地獄を出た二人は、道の悪い山道を、ガタガタと車で下っていた。
車は揺れ動いても、先輩が口を開くことは無く、長い間無言が続く。
そして、このシーンとした空気に耐えられなくなったのか、どこか遠くには居場所が悪そうに口を開いた。
「………………」
「先輩……大丈夫っすか……?」
「………………」
「……」
先輩が、少し前を向く。
そして、運転をしているどこか遠くにを見た。
「……さっき、地獄なんかにって……
お前言ってたよな」
「えっ、あ……そうですね……はい」
「俺にとっては……ここが地獄だ」
どこか遠くにはそう言われ、少し考えた末
また口を開く。
「……はい、でもだからってっ…」
「あそこはな、牢獄みたいなもんだ…」
「牢獄……?でも、先輩はなんの罪もないのに、そこに行きたいんですか?」
「よく考えてみろよ、牢屋に入るやつにはみんな懲役がある……つまりは終わりがあんだよ」
「……終わり?」
「そう終わり、全部から開放されるんだ。
この……クソみたいな世界から開放される」
あまり話に興味のなかったどこか遠くにだが、“解放”という言葉に食いついた。
「え、じゃあその…解放…されたら、HILUじゃなくなるんですか?」
そう聞かれるも、先輩は少し口籠った。
「……とにかく解放されんだよ、細かい事は分からない……あのクソ悪魔、何にも話さねぇからさ」
「じゃあ、分からないじゃないっすか
それは……僕らの希望になるようなことなんですか?」
先輩のあやふやな答えに、少しだけ空気がピリつくがどこか遠くにの問いに対して、先輩は、はっきりと答えた。
「希望…ね。
俺はしてるよ、だがな、お前がどうするかは知らねぇよ。
だがほら、地球は何億年後かに爆発して崩壊するらしいが、崩壊したあとも俺達は死ねないだろうしな。まだ終わりがあるものの方が……信じられないか?」
「……まぁ、確かに」
「……でも、神を殺すだの馬鹿な事言いやがってよ、神を殺せるなら……それで終わりじゃねぇか」
「じゃあ……どうするんすか?」
「……分かんねぇよ、でも、諦めはしない、
俺はいつか遠くへ行くんだ、HILUは通過点だ、もっと……見たこともない所へ俺は絶対に行ってやる」
「……僕も…出来るなら先輩へついてきます」
「……勝手にしな」
“ピーピローピーピーピーピロピーピロ”
その時、先輩の携帯電話がなった。
「あ、電話…はい、……あ、サキ…さんですか、なんの用です?…………あ…やらかした…
はい、はい、家の前…あぁ…わかりました、
すぐに行きます……」“ピー”
「……なんの電話でした?」
「……やらかしたわー、コールピクスおいってった事が連合の上のやつにバレた」
「うわぁ、それヤバくないすか」
「ヤバすぎる」
「じゃあ先輩んちに迎えばいいっすか」
「…そうしてくれ」
「うす」
「……あ、」
「ん?どうしました?」
「うん…うーん」
「?」
「やっぱやめよう」
「何をです?」
「どこか遠くに、言ったろ?寿司奢るって」
「え…えぇ、はい、奢ってくれるって言うから僕頑張りましたよ」
「あぁ、だから行こうか…寿司屋」
「先輩の家は?」
「飯の後でいい」
「やった、腹減ってたんでよかったです」
「うん、俺も腹減っちまった」
と、先輩は呟き…もう暗くなった空を、
また見上げた。
車は、どこか遠くにの空腹を追うように、
寿司屋へと向かってゆくのだった。
【第十話 こんな日が、ずっと続いて欲しい】
「今日は暇だねー、じゃない?みーちゃん」
「仕事がなきゃそーだね、こーやって公園でくつろげるし」
二人は隣になってベンチ座り、
遊具で遊ぶ、ただ君に幸あれとゆめちを眺めていた。
「少し…風が涼しい、もう夏も終わりそー」
「そういえば、お祭りとか行ってないし、
さっちゃん連れてまた行こうよ」
「先輩も誘うか」
「うん、良いね」
そんな雑談の中、何か見つけてが少し…哀愁を持った顔になり、俯く。
「……ねぇ、どこか君」
「どうしたの?」
「私さ…最近、おかしいんだ…何か」
「…いつもおかしいじゃん」
「真面目に聞いて」
「…ごめん」
「…その…今まで…なんか、
大きな流れの中にいたというか…その、
上手くいえないけど、私自身が感じてて、
みんな、どんなことがあっても仕方ないって思えたんだけど、だけど、
それが薄れてきたというか…」
「…うん」
「HILUはこうゆうもの…みたいな…」
「…あぁ、そうゆう…
……死ぬのが怖くなった?」
「違う…違うんだけど、
なんか、失いたくないって…」
「それは…死ぬのとは…違うの?」
「どちらかというと、死んでほしくない…
消えてほしくない」
「…僕とかに?」
「…まぁ」
「ちょっと…複雑」
「…私…なんか、麻痺してたのかな
それが治ったみたいな、
こーやーってさっちゃんとかが楽しいそうにしてると…愉快だし…終わらないでほしくなる…でも…楽しいことが起きた分、どうせ…
それを精算するみたいに酷い事も起こるし…」
「HILUだからね…」
「そうやって納得できない…私は…
終わらないで欲しい…って
こんな日が…ずっと」
「みーちゃん、ちょっと感傷的だね、
HILUなんだから…泣かないようにしないと、
…戻れなくなるよ」
「ごめん…」
「今が続けばいいじゃない、
現状が良くなることなんか…絶対ないから…
悪くなる一方…」
「…どこか君は良いよね…平気そうで
…運命共同体なんだから…少しは傷つけよ」
「…そうだよ運命共同体なんだから、
少しは僕みたいに落ち着けよ」
「酷いね」
「酷くて良いよ…」
「まぁ…でも、そうゆうところがどこか君の良いところなのかもね」
「あんまり褒めないでよ」
「まぁ…いいじゃん…」
「……うん」
夕暮れは少し冷たく、公園の知らない人間と
三人のHILUを冷やす。
まだ…星は見えそうにない。
〜いつか遠くに 第1集〜
第一集 どうでしたでしょうか?
エログロで始めないのは青いスカートを履いた猫以来でしたが、今回の作品はそんな表現をかなり少なめにしています。(まぁ、いつか我慢の限界がくるでしょうが)
この作品内に出てくるHILUの設定は、過去作『HILU』などから考えました。『HILU』自体のお話は、この作品に出てくるHILUのような設定はなかったのですが、この話自体、私を元に作っているため、
私が世界に対して、自分をどう思っているかを凝縮して作り上げたのがHILUです。
生き返る設定は、過去作『好きと伝えたくて』でサキとカナを出した事がきっかけで、元々はサキの子孫みたいな設定でしたが、この名前のキャラが作品に出るたびに、別に生きる度、酷い目にあう仕様が、完全に逃げ場がない可哀想な存在と強調できると考えました。
第2集もせいさくちゅうなので、お楽しみに〜




