表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【短編小説】SuperDetathRoad、フュリオサ号

掲載日:2025/12/14

 確かに俺は調子にのっていた。

 つくりは細いが瞬発力のある2ストロークのバイクなら数秒くらい平気だと。

 前を走るクルマを左折車線から追いぬいてもとの車線に戻る、それだけで済むはずだった。

 しかし俺を待っていたのはガード下で旗をふり回す新人の警察官だった。

 からわらに中堅らしき警察官が見守るように立っている。いわゆるトレーニングデイ、というやつだろう。これではなにを言っても見逃してもらえそうにない。

 俺は素直に反則切符を切られた。

 それでも駐車違反よりマシだ。


 牛どん屋で粗悪なタンパク質と炭水化物をうすいお茶で飲み込んでいる最中に切られた。

 俺はずっと窓のそとにおいてある単車をにらむように食っていた。

 いつ緑のおじさんが来ても飛び出していけるように構えていた。

 だが最後の数秒、みそ汁を飲むために目を放した瞬間だった。

 俺の行動を見ながら違反を切ってたんじゃないかと思うくらいだった。

 高級焼肉店の弁当みないな値段を払う羽目になったが、実際に俺が食ったのは数百円の牛丼だった。

 ふざけた話だ。


 そもそも道路交通法なんてのは形骸化しているじゃないかと思う。

 あんなのは事故った場合の有利不利をきめる程度の目安でしかない。

 みろ、誰も法定速度なんて守っちゃいない。

 渋滞の先頭にいるのは教習車か散歩してるババァと言うのが相場だったはずだ。

 いや、近ごろは営業車もドラレコの台頭で制限速度で走るのが義務づけられているらしい。

 哀れな話だ。

 俺の2ストロークバイクはその隙間を駆け抜けていく。

 アクセルをひねると細いトラスフレームが唸り声とともに一瞬で速度を上げる。

 韋駄天。

 イングヴェイ。

 そうさ、俺は音速のクソ野郎だ。



 そうやって走り回っていた。

 俺は調子に乗っていた。

 俺のバイクは鉄の馬だ。ガソリンを撒き散らす黒い筋斗雲だ。アスファルトの上を転がる黒鉄の稲妻だ。

 お前らが乗っている愚鈍な鉄の河馬とは違う。

 そして車はお前の部屋だ。

 

 お前のその部屋は移動式であり、お前はその移動式の部屋の列にいるのだから、その部屋はほかの部屋と歩調をあわせるべきだろう。

 そこをお前はひねもすのたりと部屋を動かし、あまつさえ異常に速くブレーキを踏む。 

 全体最適の見地から見ればいまの黄色信号は止まるべきタイミングじゃあなかったし、止まるにしてはあまりにもブレーキングポイントが手前すぎる。

 俺はお前が行くと信じてアクセルを開きかけていたのだ。



 仕方がない、と俺は鉄の馬を左によせて停止線の先に頭を出す。

 違反だって?

 ああ、知っているよ。

 俺が羨ましいならお前も2ストロークのバイクに乗ればいい。

 そして青信号と同時に──正確には赤信号から青信号になる3秒くらい前に飛び出せばいい。

 3秒後には時速100㎞の世界だ。

 警告灯が点いて死に近づいたことを教えてくれる。



 加速。

 素晴らしい力だ。

 チョークを引いたままのエンジンは社外製のチャンバーを通して純正マフラーから白煙を撒き散らす。

 リッター18㎞の馬。

 数年後にはこんな骨董品に乗る行為そのものが犯罪になるかも知れない。

 実際の馬は良いのに鉄だと駄目になる。不自由な世の中になったものだ。

 そうは思わないか?

 思わないのなら、バイクに乗らないのなら、お前の部屋を適正なタイミングで動かさないのなら、勝手にしやがれ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ