過去に掴まれる者
────いつからだろうか、他人に感情を向ける事をやめたのは。
幼い頃に見た両親の喧嘩、小中と続いたいじめ、友達と思っていた奴からの裏切り、自分を好きと言ってくれた人を一方的に突き放した記憶。
どれをとっても理由には十分だろう。
常に暗く徹底的に人を避けてしまうのはいつもの事。
何を目的に生きているのかも分からない位には諦めきっている。
こんな状況を変えられる事なんて、無いんだろう。
適当に起きて、適当に学校で授業受けて、適当に部屋で過ごす。
いつも通り、変わらない。
両親が蒸発して母方の祖父母に引き取られ、高校生になり1人で暮らしても、ずっと変わらない。
ただ自分が壊れてると思い続けるだけ。
生きている意味なんてきっと無い。
もう、終わりたいんだ。
そう思い屋上へ向かう。
家族も、友人も、恋人も、いらない。
自分といても何もしてあげられない。
だからもう、いいんだ。
───さよなら
「なあ」
…え?
「この人見た事ないか?」
は?
いやいや何言ってんだこいつ、目の前で飛び降りようとしてるのに?
「…あれもしかして死のうとしてる?」
気づいてなかったのかよ…
「だったらなんだよ、引き止めようってか?」
「いや別に、ただこの人に見覚えはないかと思って」
「…知らねぇよ」
「そうか、見かけたら教えてくれ」
ある訳ねえだろ、何言ってんだこいつ。
「…訳分からねぇ」
「え?」
「訳分からねぇって言ってんだよ馬鹿野郎!今お前の前にいる奴は今ここで死のうとしてんだよ!誰かを見かける?そんな事ある訳ねぇだろ!」
人探しなんぞ知った事じゃない。
「そうか」
どうせこいつも、信用ならない。
「じゃあ手伝ってくれ」
「…え?」
頭おかしいのか?その言葉が即座に浮かんだ。
「だから彼女を探すのを手伝ってくれと言っている」
「初対面の奴にそんな事言えるのイカれてるじゃねぇのお前…」
「別にどう思われようといいさ、大切な人を見つけられるなら」
…大切な人、ね。
「まあどこぞの馬鹿のせいで予定も狂ったし話くらい聞いてやるよ…」
「本当か!」
なんなんだこいつ…と思いながらその日は死ぬのをやめた。
ただこんな俺でも誰かの助けになれるのなら、少し位は協力してもいいのかな。
意味も、目的も、何も無い空っぽな自分が。
何があろうと変われる気なんてしなかったのに。
どうも皆様、お疲れ様ですLogです!
いやー前回別作投稿してから数ヶ月経ってました。
時の流れってのは早いもんですねぇ(すっとぼけ)
今作「空っぽの行先」は最近のリアル経験を元にしている部分がいくつかありまして色々あった結果ネタにしてる訳です(投稿間隔もそれが理由)
まあ次話上げるまでしばらくかかるかもですが気長にお待ちください。
ではでは〜!