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紅い瞳と竜  作者: みのり
第一章
6/28

◇王宮と男

はぁ、とため息をつく。


俺は、今王宮に向かっている途中だ。


あの時・・・


_______________________



「王宮まで来ていただきます。」


「なぜ? 俺は、行かないぞ?」


俺は、まったく行く気がなかった。 別に、卵なんてどうでもいいしな。

たとえ、王命令だろうといく気などない。


「王命令ですぞ。 来なければ、分かっていらっしゃるのか?」


「だから、行かないといっている。 その耳は飾りか?」


相手は、呆然としている。

まぁ、当たり前か。 今まで、王命令を断った者はいないだろうからな。


「・・・いえ、きて頂きます。」


その中で一番年老いていそうなヤツが騎士のようなヤツに目配せをした。

そいつが歩いてきて俺の腕を掴んだ。


・・・どうしようか。 ここで、騒ぎを起こすのも嫌だし、またフードが取れると厄介になるか・・・。

おとなしく行って、きっぱり断るとするか。


「分かった。 行ってやる。 とっとと、行くぞ。」


バッとうでを振り払った。

わざと偉そうにしてやったが、相手は何も言わなかった。いや、我慢しているのか? 俺が竜使い(ドラゴンマスター)かもしれないから。

俺は、卵を持って家を出た。


____________________________


そして、今に至る。


ただいま、城の内部。


「もうそろそろでございます。まず、王様方に会っていただきます。

顔見せと竜使いとしての契約などを行います。」


廊下をコツコツと音を響かせ渡っていく。


高そうな壁だな、とおもった。 彫刻や絵の描かれた壁は税金の無駄遣いだと思った。


そして、足を止めた。 視線の先には、大きな絵画だった。

・・・これをどこかで見たことがある気がする。


「おや、どうなされました? あぁ、これは初代王のころからある歴史ある絵画でございまして・・・」


勝手に説明をしてくれるが、やはりどうでもいいな。 まぁ、気のせいだろう。

また、音を響かせ歩を進める。 説明していたやつもあわててついてきた。


ここを右に曲がって、まっすぐ行くと広間だ。


・・・。


「 ? 」


なぜ、知っているのだ? おかしい。

・・・また、あいつ(・・・)の記憶か?  


「さぁ、つきました。 竜使いがお着きになりました。」


思考をさえぎる。 でかい扉が開いた。


そこには、たくさんの官吏やら騎士やらがいた。

真ん中には、この国の王と王女たち。

王が口を開いた。


「おお、これが今代の竜使いか! 顔を見せてはくれまいか。 ルシファー=ユーリ殿。」


ほぉ、『これ』呼ばわりの上に名前まで把握済みか。


「・・・そのことについて申し上げたいことがございます。」


おれは、手っ取り早く用事を済ませるために用件を出すことにした。丁寧な言葉遣いを心がける。


「・・・そのこと、とは?」


分かっているくせに分からないフリをする。


「わかっていらっしゃるのでしょう? 竜使いのことについてです。」


「なにか不都合でもおありか。」


「いえ。不都合はございません。 ですが、私は竜使いを辞退させていただきたいと思います。」


ざわ、とどよめきが広がった。 「おろかな」 「気が狂ったか」などの非難の声も聞こえてくる。

それはそうか。竜使いを断る者などそうはいないだろうからな。


「それは、なぜだ?」


「私がそのような大役はこなせません。」


「そのようなことはない。 竜が直々に選ぶのだから。古から続いているのだ。

それに、なれば不自由ない生活ができるのだぞ?」


不自由ない生活、ね・・・。俺にはそんな生活は来ないだろうな。 永遠に。


「いえ。その竜様もお間違えになったのでしょう。私のようなものは竜使いの資格などございません。」


また、王が口を開きかけたその時。



「そんなわけねえだろ。いい加減あきらめろ。」


広間に響いた声。 その声は・・・。


「・・・ロイ。」


「おいおい・・・。反応薄いなぁ。もっと驚け。」


「なぜ、ここにいる?」


ロイが答える前に。


「ロイ王子だ。」「ロイ殿下だ」「なぜここに?」とまたざわめく声。


王子? 王の息子・・・? ロイが?

じっとロイを見つめた。 確かに王と似ているような・・・。


「お父様、ただいま帰りました。」


ひざまずくロイ。


「おお、ご苦労であった。・・・ロイも言ってやってくれまいか。この新しい竜使いに。お前のほうがよく知っておろう?」


「ええ・・・。 ということだ。あきらめろ。」


何があきらめろだ。 というか、どういうことだ? なぜ、王が俺がロイと友人・・だということを知っている?


「おい、どういうことだ。説明しろ。」


俺の声には怒りもまざっている。 外野から「なんという口をきくのだ!!」とこえもするが無視だ。

ロイは、手をあげてその声を静止させた。


「・・・やっぱ、お前は聡いな。ごまかすのはムリだろうな。・・・俺は、竜使いの見極めに行っていたんだ。この卵の親竜に言われてな。

お前に近づいたのは、もともと、それが目的だった。」


まだ、ロイが話しているが聞こえない。




ドク、と心臓が高鳴った。 そうか、また。 また(・・)裏切られたのだ。 人に。 人間・・に。



なかから何かが湧き上がってくる感じがした。 それに伴う声。


(俺をだせ!お前の代わりに!早く代われ!!)


意識内でグイッと引っ張られる感覚。



「お前のこと、信じてたんだがな・・・。俺のこと、騙してたんだな・・・。」



俺の意識が消えた。

最後に見えたロイのあわてた顔だった。

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