◇男と卵
家に着いた。 家といっても必要最低限のものと数多くの本しか置いていない。
ガチャガチャ、と鍵を開け、ドアを開ける。 俺の後ろには、ロイ。
「・・・おい、何でいる?」
苛立ちを抑えず、低い声音で言う。
「あぁ~・・・。 怒んなって! すまなかったっ!!」
パンっと目の前で手を合わせ、拝むようなしぐさをする。
まぁ、これで許すとは俺も甘い。 といっても、いろいろと手伝ってはもらうが。
「そういう意味じゃない。 なぜ、俺の家に来たのかという意味だ。」
「それはウソだろ! 絶対怒っていたぞ。 ま、いいか・・・。 まぁ、ちょっとね。 だが、お前の家って意外とでかいんだな! ちょっと、意外だぜ。 金持ちなのな。」
そういえば、家に来たのは初めてだったか・・・。 だが、ロイの方が金持ちだろうな。 服は、庶民のものと変わらないが、生地が高級品だ。
「おれは、金持ちじゃない。 早く中に入るぞ。 お前も手伝え。」
「へぇ、入れてくれるんだな。 で、何を?」
だって、入れないと言ってもお前は勝手に入ってくるだろう。 とは、言わない。
「昼飯の手伝いだ。 俺を巻き込んだ罰だな。」
「は!? まだ、怒ってンの!?」
「嫌そうな顔だな。 それで、帳消しにしてやるといっているんだ。」
「ハァ・・・。 お前って意外とケチ」
「なんか言ったか?」
「いいえ・・・。」
途中で話をさえぎってやる。
入り口で話していたので、歩を進めて中央のテーブルへ荷物を置こうとしたが・・・。
「 ? 」
・・・大きな卵。 普通の卵の何個分だ?と思わず考えてしまった。
「ん? どうしたんだ?? ・・・卵。」
ロイも卵を見つけたのか、ボソッとつぶやいた。
「・・・やはりな・・・」
「ん? 何か言ったか?」
今度は、怒りを込めて言ったのではなく、単に小さすぎて聞こえなかったのだ。
「いや? なんでもない。 だが、でかいな。」
「・・・。 どうでもいいな。 とっとと、昼飯を作るぞ。」
別にこんなものに興味などない。 今は、昼飯が優先だ。
「は!? 興味ないわけ!? ダレのものとか、何の卵とか!?」
・・・なんの卵か・・・。 ふと、思った。
「・・・。 この卵、食えるのか?」
「・・・!? くっ」
ロイは、呆然とした顔をした。
「くっ?」
「食うんじゃねーーーーーッッ!!!!!!!! アホかッッーーーー!!!!!」
誤字訂正しました。