◇贈り物
自分とも、母親とも違う声だった。
高いようで、低いようなよく分からないが、綺麗な声。
そんな声が聞こえた瞬間、時が止まったように母が動かなくなった。
辺りが色褪せて見える。
『目を閉じろ』
そう言われて、自分で閉じようとしたわけでもないのに勝手に瞼が落ちていった。
そこに居たのは、もう一人の自分だった。否、紅い獣だった。いや、やはりもう一人の自分なのか?
やはり、形もはっきりとせず、ぼやける。どちらが本当の姿なんだろう?
『お前はここで死にたかったのか?あの母親に自分を殺させてよかったのか?』
そうだ。もうすぐ終わるんだ、自分の人生は。終わらせるべきなんだ。
─── 本当に?
ふと、そんなふうに思った。いや、思ってしまった。
一度、あふれた疑問は核心に触れて。
・・・そして、確信となる。
「い・・・やだ。俺は、・・・生きたい。母さんに俺を殺させたくない。」
『お前の人生はここで終わっていいのか?お前の母親に終わらせられるのか?』
「ちがう!俺の人生は、俺のものだ!!」
そいつが、ふっと笑った。綺麗でみんなが幸せになれそうな微笑み。
『そうだ。その意気だ。お前は、お前だけのものなのだから。・・・これから、よろしくな。』
「え・・・?」
そして、世界は動き出すのだ。
この後、俺は母親からどうにか逃げ出して1人で暮らすようになったのだ。
レイに助けてもらいながら。
そのときに、『レイ』と名づけたのだ。
レイには、レッドアイのレイといったが、それは嘘だった。
この国で、「レイ」というのは、幸せの花の名前だった。可愛らしいオレンジの花。
似ても似つかないけど、俺にとっての幸せの元となっていたからだった。
そう、確か動き出したはずだったのだが・・・。
にっと笑った紅いあいつ。
『お前はお前のもの。だから、この先もそれを忘れるな。お前は、他人に流されすぎる。』
レイ?
『これからは、お前が道を作るんだ。・・・・・俺とあいつらが迷惑をかけるが、がんばれよ。お前は、選ばれた人間なのだから。』
『さぁ、試練はこれからなんだ。これは、オレからの贈り物だ。これから、必要になる記憶だ。だいぶ、遅れたが、名をもらったお礼だ。』
まるで、花の名前だと知っているような口ぶりではないか。
まるで、すべてが分かっているような口ぶりではないか?
俺は、やはり、振り回されるばかりじゃないか。
そんな自分に嘲笑する。
そんな自分をみて、微笑むあいつ。
『さぁ、行け!!我、神の名の元において幸運を祈る!』
はい。
これから、試練になっちゃいました><
まだ、もうちょっとシリアス続くかも・・・?
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